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●NEWデザインで精悍になったISの「後ろ半分」は、しっかりとセダンらしくある
2020年11月4日に大幅なマイナーチェンジを果たしたレクサスIS。先代と比較し、ワイドなボディと流麗なクーペシルエットでスポーツセダンとしての完成度がより高められています。
ボディ剛性の強化やハブボルト締結構造などの採用で、走行性能は劇的な進化を遂げましたが、セダンとして求められるリアシートの居住性はどう変わったのでしょうか。今回は、ISの後ろ半分にスポットを当てて、その進化を解説していきます。
●リアフェンダーからトランクへの美しいキャラクターライン
新型ISのデザインは、ボディサイズの拡幅と相まって車格が一つ上がったような堂々たる仕上がりとなっています。
先代と比べ、全長が30mm延伸されて4,710mmへ、全幅は30mm(片側15mm)拡幅されて1,840mmへ、全高は5mm高くなって1,435mmとなりました。グラマラスで低重心なフォルムは、まさにIS(インテリジェントスポーツ)の名を体現したものになっています。
特にリアフェンダーアーチからラゲージ周りの複雑で立体的な形状が美しく、ここには新しい工法が使われています。
リアフェンダーのキャラクターラインのために開発されたのが「突き上げ工法」です。さらにラゲージへ、向けて絞り込んだ立体形状と尖ったキャラクターラインは「寄絞り工法」を使い実現しています。
キャラクターライン形成の際に、これまでの1打1方向ではなく、1打2方向を可能にし、上部からは絞る、サイドからは寄せる成形によって、板金を伸ばす際、成形の自由度が飛躍的に高められました。ボディサイズが大きくなっても、従来モデルよりシャープで引き締まったシルエットに見える工夫が、ボディ後方部分に凝縮されています。
●リアシートの居住性は良くなったのか?
MC前後でボディサイズは大きく変化したものの、室内の大きさは大きく変わっていません。室内長1,945mm(MC前同サイズ)、室内幅1,500mm(MC前同サイズ)、室内高1160mm(MC前1,170mm)となります。
室内高が10mm下がったことで懸念されるのが、リアシートの頭上スペースです。さらに寄絞り工法などにより実現されたクーペシルエットにより、外観からはリアシートの頭上スペースが小さくなっているように見えます。
身長177㎝の筆者がMC前のリアシートに乗り込むと、頭上にはわずかにスペースが生まれます。室内高が10mm低くなった新型に乗り込むと、こちらも同程度のスペースが生まれました。クーペフォルムから想像すると、頭上のクリアランスは小さくなることを予想していましたが、MC前後で変化は感じませんでした。
実際に新型のリアシートに乗り込んでみると、数字上は小さくなった室内が幾分か広く感じます。リアガラスからの採光が増え、室内が明るく感じ、リアシートから前方への視界も確保されていることから、開放感が高く感じられるようになっています。
数字や見た目以上に、リアシートの居住性は高く、大人が座っても十分なスペースが確保されています。
●リアデザインの変化は、リアシートへのアクセスも優位にしている
リアシートへの乗り込みやすさは、リアドアの形状によって左右されます。開口部の広さはもちろんですが、リアタイヤの位置に立ってリアドアがスムーズに開閉できるかどうかを見ることで、ドアの開け閉めから乗車までの流れがストレスなく行えるのかを確認することができます。
ドアが大きく開口部が広いだけでは、乗り込む際の一連の動作で開けたドアが体に引っ掛かり、一度体を捻ってドアを避け乗り込む必要がでてくるので、スムーズな乗降とは言い難いです。流麗なクーペスタイルになればなるほどリアドアが長くなる傾向にあり、開閉時に体に当たってしまいます。
新型ISでリアタイヤの位置に立ち、リアドアを開閉してみると、体に引っかかることなくスムーズに開閉することができます。
MC前には若干体に触れての開閉になっていたため、MCで改善された点の一つになるでしょう。スポーティセダンとしてカッコいいボディデザインを行いながらも、スムーズに開閉できるドアサイズやディテールを守っていることには驚きました。
普段あまり気にしない点かもしれませんが、ドアを開ける際に体を入れ替えなければならないのは、小さなことながらもストレスになります。こういったスペックに現れない部分にまでしっかりと気を配れるのは、さすがレクサスというべき点でしょう。
クーペフォルムで完成度の高いエクステリアを実現し、走行性能も格段にレベルアップした新型ISのリアシートは、デザインによって犠牲になることなく、逆に居住性が高まっているように感じました。
数字だけでは表すことのできない進化が、ISのリア部分には多く組み込まれています。先代との違いを見た目では感じにくいリアシートですが、細部にわたる心づかいで、レクサスの奥ゆかしさを堪能できる空間となっています。
(文・写真:佐々木 亘)