スカイライン400R徹底試乗。電子制御ショックアブソーバーが楽しい!【新型車インプレッション1/3(概要編)】

■スカイライン400Rは日産に漂う、嫌な空気を一変させることができるか

スカイライン400Rがデビューしたのは2019年7月のこと。V37型スカイラインのエクステリアデザインに大きく手を加えたビッグマイナーチェンジに合わせ、408馬力を発生する3.0リッターターボエンジンのグレードが登場しました。

スカイライン400R
新色となるスレートグレーは、光の元で見ると青みがかったグレーに見えます。マッドなテイストは、昨今の欧州スポーツ系のカラーリングに近いです

北米INFINITIの「Q50」ですでに販売していた「RED SPORT 400」という最上級グレードを日本へ導入しただけなのですが、「408PSを後輪駆動で駆るスポーツセダン」という、なんとも心くすぐられる構成で日本市場でも大いに話題になっています。

今回、2020年10月の一部改良で、新たに2色のボディカラー「スレートグレー」と「ディープオーシャンブルー」を追加し、内装色にも新色の「グレー」と「ホワイト」を採用しました。ボディカラーの「スレートグレー」と内装色の「ホワイト」は「400R」専用色となります。

今回、新色のスカイライン400Rのステアリングを握ることができました。400Rは、日産の周りを漂う、嫌な空気を一変させることができるでしょうか。3記事にわたってレビューしていきます。

[index]
■1グレードのみ設定は是か非か?
■小回り性の悪さはスカイラインの課題
■プロパイロットは無し、E-PKBも無し、代わりに手に入れた電制ショックアブソーバー
■まとめ

●1グレードのみ設定は是か非か?

スカイライン400R
リアの丸目4灯テールランプや、19インチの大径タイヤホイール、少し持ち上げたトランクリッドなど、流麗で引き締まったリアデザインです

スカイライン400Rは、2WDの1グレードのみ。価格は税込562万5400円。通常のスカイラインの価格は、約435万円(V6ターボのGT 2WD)~約616万円(ハイブリッドのGT Type SP 2WD)であり、中間よりやや上に位置します。ハイブリッド車の価格の高さも手伝って、なんとなく、400Rがお買い得にも見えます。

400Rには4WDの設定がありません。北米INFINITIではQ60 RED SPORT400にもAWDモデルがあり、「400馬力強のAWDスポーツセダン」という、なんとも胸熱な仕様が存在します。北米価格は2WDが55,750ドル、AWDが57,750ドルなので、日本円にして約21万円の差額です。

そう考えると、400RはAWDモデル専用にしても良かったのではと考えられます。400Rのような趣味性の高いクルマならば、それくらいは出す顧客がいたでしょう。車両価格の高さを気にしたのか、日本仕様だと何かの制約があったのか、「400R」という大胆な名前を選んだにしては、惜しいところです。

●小回り性の悪さはスカイラインの課題

スカイライン400R
ボディサイズは4810×1820×1440 mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mm、車両重量1760kgです

ボディサイズは4810×1820×1440 mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mm、車両重量は1760kg。ちなみに、ハイブリッドは1840kg、306馬力のV6ツインターボは1710kgです。最小回転半径は5.6mであり、ボディの長さもあることから、狭い場所での取り回しは厳しめです。

スカイライン400R
ガンメタ塗装の19インチアルミホイール(8.5J)、タイヤは245/40RF19 94Wのダンロップ製SP SPORTMAXX 050 のランフラットタイヤを採用しています。なお前後同径かつ同幅となります。

DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)によって、低車速ではギア比がクイックになり、少ない操舵角でタイヤを回せますが、フル転舵付近であともうひと曲がりしてほしいと感じます。ちなみにハイブリッドの4WDの場合だと5.7mと、さらに大きめとなります。

参考ですが、現行型クラウンは全長2910mm、ホイールベース2920mm、最小回転半径は5.3mと明らかに小さめ。日本市場の狭い道や駐車場を考えたクルマの姿として、どちらが運転がしやすいか、一目瞭然です。

●プロパイロットは無し、E-PKBも無し、代わりに手に入れた電制ショックアブソーバー

スカイライン400R
ロングノーズがよく分かるサイドビュー。BMW3シリーズやメルセデスCクラスよりも後席は広いです。

おや!?と感じた点が2点ほどあります。

1点目は「プロパイロット」がないこと。プロパイロットと呼ぶシステムではなく、全方位運転支援技術として、アダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーンキープアシスト(LKA)、インテリジェントペダル(車間距離維持支援システム)、インテリジェントBSI(ブラインドスポットインジケーター)、インテリジェント FCW(前方衝突予測警報)などは備わります。

通常運転時の機能的には、ほぼプロパイロット1.0と同等であるので気にはなりませんが、商品訴求としてキャッチーな「プロパイロット」を使わないのは、やや疑問が残ります。

スカイライン400R
日産車で見慣れたプロパイロットのマークが、ステアリングホイールのスイッチにはありません。

そして2点目が、パーキングブレーキが足踏み式になる点です。昨今の最新モデルであれば、もはやE-PKBは標準装備に近く、同社のデイズやルークスにもあるのに…と、やや残念な気持ちにもなります。パーキングブレーキとしては、実用上、課題にはなりませんが、ACCによって前走車の後方で停止した際に、ブレーキホールドが5秒程度で解除されてしまいます。

現在の上級セダンであるならば、停止時にE-PKBシステムの採用を期待したいところです。

スカイライン400R
足踏み式パーキングブレーキは、実用上、課題にはなりませんが、ACC作動中に、前走車の手前で停止した際に、ブレーキホールドが5秒程度で解除されてしまいます。

ですが、400Rが代わりに手に入れた「武器」が、インテリジェントダイナミックサスペンション(電子制御ショックアブソーバー)です。これが実に面白い装備です。

DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)との組み合わせで、ステリアングの応答性と、エンジンのレスポンス、そこに、足回りの強さを同時に可変できるので、ドライブモードセレクトの価値が飛躍的に上がります。

たとえば、応答性を上げたことでその分増えるボディモーションをショックで減衰を増やして抑えるなど、ドライビングの楽しみが広がります。しかも、それぞれの効きをパーソナルカスタマイズもできるため、ドライビングを自ら「セッティング」できる要素がある。これが実に楽しめるのです。

なお、細かな走行性能については、別記事にてレビューしています。

●まとめ

贅沢を言うと、すべてを入れ込んでいただきたかったものですが、失った装備2つに対し、この1つの装備を得たことで、ドライビング好きにとっては十分に魅力をカバーできている、といえます。以降の記事では、クルマの使い勝手や、走りにフォーカスし、メリットデメリットを述べていきます。

(文:自動車ジャーナリスト・吉川 賢一/写真:エムスリープロダクション・鈴木 祐子)

<主要諸元>
スカイライン400R 2WD
■全長×全幅×全高:4810×1820×1440mm
■ホイールベース:2850mm
■車両重量:1760kg
■駆動方式:前輪駆動
■エンジン:VR30DDTT(DOHC・筒内直接燃料噴射V型6気筒)
■排気量:2.997L
■最高出力:298kW(405ps)/6400rpm
■最大トルク:475Nm(48.4kgf・m)/1600-5200rpm
■サスペンション:前/独立懸架ストラット式
後/独立懸架マルチリンク式
■タイヤ:前/ 245/40RF19
後/ 245/40RF19
■WLTCモード燃費:10.0km/L
■最小回転半径:5.6m
■燃料・タンク容量:無鉛プレミアムガソリン・80L

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
続きを見る
閉じる