■やはり気になるフリースタイルドアの使い勝手
すでに欧州で先行予約が開始されているマツダのMX-30。2020年秋に日本国内でも導入とすでにアナウンスされていますが、先だってプレス向けに実車の撮影が行われました。
CX-30とプラットフォームを共有するMX-30は同社初の量産EVとして「東京モーターショー2019」で大きな注目を集めていましたが、「オートモビルカウンシル2020」で2.0Lガソリンエンジンを積むマイルドハイブリッド「Mハイブリッド」が展示されました。
今回、プレス向けに撮影が許されたのも「Mハイブリッド」仕様。マツダの「MX」シリーズといえば、レーシングカーのMX-R01、MX-5ミアータ、MX-6などを思い浮かべる方も多そう。
同社の中でも挑戦的なモデルに付けられるイメージのあるMXで、MX-30もあのRX-8以来、フリースタイルドアを採用した同SUVは、単なる新世代商品群の第3弾という位置づけだけではなく、それ以上の意味や期待が込められています。
観音開きのフリースタイルドアだと小さな子どもを持つ筆者にとっては、乗降時に不便を感じてしまいそうという印象があります。
フリースタイルドアは、フロントドアを開けないとリヤドアが開けられないようになっています。逆に閉める際は、リヤドアを閉めてからでないとフロントドアは閉められない、つまりドアが閉まらない、ロックできない状態になります。
高速道路のサービスエリアなど、死角が多い駐車場では、小さな子どもが急に車外に飛び出したりしないように乗降に気を使うはずで、こうしたフリースタイルドアは2ドアのような乗降感覚もある一方で、こうした心配は無用です。
なお、MX-30は、フロントドアが82°、リヤドアが80°まで大きく開くのが特徴で、ピラーレスによりチャイルドシートの積載や子どもの乗せ降ろしが楽なのも特徴。前後ドアを開けた状態だと近づく車両や自転車から乗降スペースが守られるという利点もあります。
RX-8でも盛り込まれていたリヤドアの補強はMX-30でも健在で、さらに、閉める際に誤ってフロントドアから閉めても物理的にリヤドアが閉まらない構造になっています。
後席に乗り込む際は、手動のウォークイン機構が備わる助手席側からの方が便利です。「ユーティリティ・パッケージ」車の場合は、電動式になっていて、スイッチを押し続ける必要があります。
個人的には手動のウォークイン機構の方が後席の乗降性という点では、使い勝手がよく感じられます。
後席に収まると、前席座面下に足がすっぽりと入る足入れ性の良さが印象的で、身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後ろの席には、膝前にこぶしが縦に1つ、頭上には手の平3枚ほどの余裕が残ります。また、前後席共に包み込まれたような安心感があり、閉塞感もほとんど抱かせず、後席を荷物置き場専用にするのは惜しい印象。
ラゲッジスペースは機内持ち込みサイズのスーツケースが4つ収まる広さで、開口部下側(バンパー上部)と荷室床面との間が少し長く感じます。この部分に積載時に荷物をぶつけないように注意が必要かもしれません。後席を前倒しした際の段差も小さく、開口部自体も広いので、SUVらしい高い積載性を備えています。
マツダ初の女性主査である竹内都美子氏に伺うと、ターゲットユーザーの年齢層やファミリーユース、独身向けなどの属性はあまり気にしておらず、MX-30が提供する価値観に共鳴してもらえればと応えています。同SUVは、インテリア作り(素材の吟味)などから開発がスタートしたという、インテリアの心地良さ、さらにはサステイナブルなモデルを目指し、環境に配慮された素材が厳選されて使われています。
乗降性などの実用性ではCX-30があり、そちらを重視する層にはしっかりとニーズに応えています。
世界的なSUVブームの中、投入されるMX-30は、MXを名乗るに相応しいチャレンジングなモデルであり、自分らしさや個性を大切にする層の共感を呼びそうです。マイルドハイブリッド仕様に加えて、EVも控えている持続可能なモデルとして、マツダの提案が市場からどう受け入れられるか気になります。
(文/塚田勝弘 写真/井上 誠)