飲酒運転の危険性。酒気帯びと酒酔い運転の違い、自転車や原付での処罰、海外でも厳罰化

■飲酒運転の危険性と飲んだ翌朝の注意点とは?

「飲酒運転」は、捕まれば重い罰則が待っているだけでなく、場合によっては自分や他人の命に関わる
「飲酒運転」は、捕まれば重い罰則が待っているだけでなく、場合によっては自分や他人の命に関わる

年末年始はお酒を飲む機会も増えますが、こんな時こそ気をつけたいのが「飲酒運転」。捕まれば重い罰則が待っているだけでなく、場合によっては自分や他人の命に関わることになりかねません。

ここでは改めて「飲酒運転」にはどういう危険があり、どんなことを気をつけるべきかなどについて検証してみます。

●飲酒運転で捕まるとどうなるか?

飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類がある
飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類がある

まずは、飲酒運転で捕まると、どんな処罰などがあるのかをおさらいしましょう。

法律上、飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があります。

・酒気帯び運転
体内中のアルコール濃度が、法律の定める基準値を超えた状態で運転した場合をいいます。

一般的には吸気(吐き出した空気)1Lあたりのアルコール濃度を測定することが多く、警察に検問などで「飲酒検知器」を使って測定された経験を持つ人も多いでしょう。吸気1Lあたり0.15ミリグラム以上のアルコール濃度が出ると違反となります。

罰則は3年以下の懲役、または50万円以下の罰金を科せられます。

また、行政処分では、吸気1Lあたりのアルコール濃度0.15ミリ以上0.25ミリグラム未満で違反点数13点、前歴などがない場合で90日の免許停止(免許が取れない欠格期間はなし)です。

また、0.25ミリグラム以上の場合は、違反点数25点で即時免許取り消し(欠格期間2年※欠格期間とは、運転免許の取消処分を受けた者が運転免許を再度取得することができない期間)となります。

・酒酔い運転
お酒に酔って正常な動作や判断ができないおそれがある状態なのにクルマを運転した場合です。警察官は、ドライバーの言動や千鳥足になっていないかなど、様子や歩行能力、顔色、酒臭などで判断します。

この場合、注意したいのは体内のアルコール濃度に関係なく、「酒酔い」状態だと認められれば捕まる可能性があるということです。前述の「吸気1Lあたり0.15ミリグラム」未満のアルコール濃度であっても、お酒に弱い体質のために運転に支障をきたすような状態になっている場合は、酒酔い運転と判断されることがあります。

罰則は、酒気帯びよりも重く、5年以下の懲役または100万円以下の罰金。違反点数は35点で、即時免許取り消し(欠格期間3年)になります。

●自転車や原付バイクも違反の対象

自転車も飲酒運転の取り締まり対象だ
自転車も飲酒運転の取り締まり対象だ

飲酒運転は、車両であれば普通自動車はもちろん、大型トラックやバス、またバイクでも違反の対象となり、捕まれば同様の処罰を受けます。原付バイクや、最近増えてきた電動キックボードも当然ながら処罰対象となります。

また、よく「自転車なら大丈夫だろう」と思う人もいるようですが、道路交通法(以下、道交法)上は「軽車両」となり、飲酒運転も禁止されています。

ただし、自転車の場合、前述の酒気帯び運転については道交法で「軽車両を除く」という規定があるため処罰の対象になりません。ところが、酒酔い運転はちゃんと処罰の対象になり、酒気帯びよりもより重い処罰を受ける可能性があります。

実際、2018年に、福岡県で自転車で蛇行運転していた女性が酒酔い運転の疑いで逮捕されたというニュースが報道されたことがあります。この時、この女性は吸気検査で基準値の6倍ものアルコールが検出されたとか。自転車でも、歩行者と衝突し怪我をさせる事故なども増えていますから、「大丈夫だろう」は絶対禁物です。

●車内にビール缶を置いただけで捕まる国も

アメリカのカリフォルニア州では、車内にアルコールの空き缶があってもNG
アメリカのカリフォルニア州では、車内にアルコールの空き缶があってもNG

余談ですが、海外でも飲酒運転は多くの国や地域で厳罰化されています。

例えば、アメリカのカリフォルニア州。在サンフランシスコ日本国総領事館によると、飲酒や薬物を摂取した運転はDUI(Drive under the influence of alcohol and/or drugsの略)と呼ばれ、血中アルコール濃度が0.08%(1ミリリットルあたり0.8ミリグラム)以上は違反。1回目の検挙でも6ヵ月の免許停止、1000ドル(約14万円)以下の罰金または6ヵ月以下の禁固のほか、少なくとも3ヵ月間のDUIプログラム(飲酒・薬物に関する教育とカウンセリング)の受講などが義務付けられています

昔、筆者はカリフォルニア州内で、レンタカーを借りてドライブをしながら取材した経験がありますが、その時に現地の知人に驚くような注意を受けた記憶があります。

その日宿泊するモーテルで飲もうと、スーパーマーケットで缶ビールを購入した際のこと。スーパーの駐車場でその知人は「缶ビールは必ずトランクに入れておかないと、警察に捕まることがある」というのです。

なんでも、カリフォルニア州では、開封されたアルコールの容器を車内に置いているだけでも違反で検挙されるらしく、シートなど車内の外から見える場所に缶ビールを置いただけでも警察に疑われるのだとか。

同州では、ほかにも同乗者が車内で飲酒することも禁止しているなど、飲酒運転に対し、日本よりかなり厳しい取り締まりを行なっています。

●死亡事故が社会問題になり厳罰化が進む

飲酒運転による重大事故が厳罰化を進めた
飲酒運転による重大事故が厳罰化を進めた

話を日本に戻しましょう。飲酒運転は、2006年に福岡県で幼児3人が死亡する重大事故などが大きな社会問題となり、厳罰化が進んできました。

例えば、2007年の改正道交法では、酒気帯び運転が、1年以下の懲役から前述の通り「3年以下の懲役」に引き上げられたほか、違反ドライバーにお酒を提供した人に対しても懲役や罰金が科せられるなど、罰則を受ける人の範囲も広がりました。

また、同年には、刑法に「自動車運転過失致死傷罪」を追加。従来は、飲酒運転で死亡事故を起こしても業務上過失致死傷罪しか適用されず、最高刑でも懲役5年だったのに対し、懲役7年に引き上げられています。

さらに、2009年には、これも前述した酒気帯び運転の規定で、呼気1リットルあたりのアルコール濃度が0.25ミリグラム以上であれば免許取り消しになるなど、飲酒運転に対する罰則は年々強化されているのです。

●事故は減るが死亡率は高い

警察庁によると、2022年(令和4年)中の飲酒運転による交通事故件数は2,167件。前年(2021年)と比べて31件(-1.4%)少なくなっています。また、同年の死亡事故件数は120件で、こちらも前年比-32件(-21.1%)と、いずれも減少した結果となっています。

警察庁では、こうした傾向は近年続いており、特に2000年代に入って飲酒運転による交通事故は大幅に減少しているといいます。また、その理由を、同庁は前述の法的な厳罰化や飲酒運転根絶に対する社会気運の高まりによるものだとしています。

ただし、同じく警察庁のデータでは、2022年の飲酒有無別の死亡事故率では、飲酒運転の死亡事故率が飲酒なしの約7.1倍と高く、飲酒運転による交通事故は死亡事故につながる危険性が高いことも指摘しています。

●少量のアルコールでも運転に影響

飲酒有無別の死亡事故率では、飲酒運転の死亡事故率が飲酒なしの約7.1倍(出展:警察庁)
飲酒有無別の死亡事故率では、飲酒運転の死亡事故率が飲酒なしの約7.1倍(出展:警察庁)

さらに、同庁では、事故を起こしたドライバーが飲酒運転をした理由の多くに、「(飲酒した翌日が)出勤のため二日酔いで運転してしまった」、「時間経過により大丈夫だと思った」などを挙げています。

これらは、おそらく「夜遅くや朝まで飲んで、そのまま仕事でクルマを運転」したり、「(飲酒後に)少し眠ったから大丈夫」と思ったけれど、まだ体内にアルコールが残っていて事故を起こしたといったケースが考えられます。

警察庁の科学警察研究所交通安全研究室が行なった運転シュミレータを使った実験では、ワイン200ccという低濃度のアルコールでも、飲酒すると安全運転に必要な情報処理能力、注意力、判断力などに影響を及ぼすという結果が出ています。

また、お酒が弱い人だけでなく、お酒が強い人であったとしても、少量のアルコールが運転へ影響を及ぼすケースがあるといいます。

「出勤のため二日酔いで運転してしまった」のが運の尽きになることも
「出勤のため二日酔いで運転してしまった」のが運の尽きになることも

これらから考察すると、前述のような夜遅くや朝まで飲んだ場合や、ちょっと仮眠を取ったといった状況で、「自分はお酒に強いから大丈夫」などの過信は禁物ということです。

また、アルコール分解力は人により様々なので、夜お酒を飲んだ後に時間がかなり経ったからといって、大丈夫だとは限りません。ましてや、二日酔いの状態だったら、運転はやめておくのが賢明でしょう。

もし、お酒を飲んだ翌日に運転する予定がある人は、市販のアルコールチェッカー(アルコール検知器)で自分の体内アルコール濃度をチェックするのも一つの手です。アルコールチェッカーは、インターネット通販などなら3000円前後から購入できますから、大きな事故を起こすよりもかなり安い買い物です。

また、令和4年(2022年)より自動車を使用(乗車定員が11人以上の自動車1台以上、もしくはその他の自動車5台以上を保有する事業所)する事業所には「安全運転管理者による運転者の運転前後のアルコールチェック」が義務化されています。10月1日以降はアルコール検知器を使った確認が義務となっており、「アルコール検知器を常時有効に保持する」ことも求められています。

いずれにしろ、飲酒運転は自分はもちろん、家族や他人まで不幸にする危険性が高いもの。昔から「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」という言葉がありますが、それを忘れず、実践するのが一番なのです。

(文:平塚直樹※写真は全てイメージです)

※2020年9月26日の記事を2023年12月30日に追記・再編集しました。

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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