■進化したアイサイトとそれを支える基本性能&周辺性能
スバルは2020年1月に行われた技術ミーティングで「2030年までにスバル車に乗車中の死亡事故およびスバル車との衝突による歩行者や自転車などの事故をゼロにする」と宣言しました。そして、その実現に向かってさまざまなアプローチが行われています。
「ゼロ次安全」と言われる部分では、スバルグローバルプラットフォームの採用による基本走行性能の向上や、ステアリング連動ヘッドライト採用による夜間視界の確保など、事故に至らないための基本性能を向上しています。
また、初代レヴォーグで世界初の搭載となった後席シートベルトリマインダーの継続採用といった基本的な安全確保についても細かい配慮が行われています。そしてなによりも注目なのが、現在のスバルの価値をここまで築き上げたアイサイトの性能向上です。
新型レヴォーグにはアイサイトXが搭載されましたが、アイサイトXはGT-EX、GT-H EX、STIスポーツEXという末尾にEXが付くグレードに搭載され、GT、GT-H、STIスポーツには搭載されません。
こう書くとGT、GT-H、STIスポーツにはアイサイトが装着されないように思われがちですが、そうではありません。すべてのグレードにアイサイト、そしてアイサイトセイフティプラスが装備されるのです。
どちらかというとアイサイトXはハンズオフドライブなどをコアにしたイージードライブに注力したシステムで、渋滞時ハンズオフアシスト、渋滞時発進アシスト、アクティブレーンチェンジアシスト、カーブ前速度制御、料金所前速度制御、ドライバー異常時対応システムがその内容となります。
一方のアイサイトは前側方プリクラッシュブレーキ、緊急時プリクラッシュステアリング、後退時ブレーキアシスト、AT誤発進抑制制御などの機能で、アイサイト登場時に話題となった「ぶつからない」機能については全グレードに標準で搭載されます。さらに、後側方警戒支援システム、エマージェンシーレーンキープアシスト、アレイ式アダプティブドライビングビームといった機能を「アイサイトセイフティプラス」として標準装備しています。
袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された試乗イベントでは進化したアイサイトの機能について2つのデモンストレーションが行われました。最初に行われたのは「前側方警戒アシスト+対歩行者プリクラッシュブレーキ」です。
路地から道路に右折で進入する際、左方からクルマが接近するとに警報を発することと、右折した先に歩行者が道路を横断していて、それを発見してブレーキが掛かるという状況を再現しています。
新しいアイサイトは新型のステレオカメラを採用、さらにレーダーを追加することによって、作動領域が拡大されました。このため、右折するときの対向車両、右左折するときの横断歩行者、真横から来る出会い頭の自転車といった対象物を新型のステレオカメラで捕捉し、プリクラッシュブレーキを作動させます。またレーダーの追加によって真横から接近する車両の検知も可能となっています。
これらのセンサーで捕捉、検知したのちにプリクラッシュブレーキを働かせるわけですが、電動ブレーキブースターを採用することでブレーキ液圧の立ち上がりを早くして、ブレーキが素早く効くようにしています。
また、電動ブレーキブースターを採用したことで、ブレーキを効かせるタイミングをギリギリまで遅らせられるので、より判断を正確にすることができるようになったといいます。さらに停止車両に対するブレーキも対応速度が高くなったということで、60km/hでのデモンストレーションが行われましたが、余裕をもって停止する様子を見ることができました。
このように事故に至らないための技術に加えて、万が一事故が起きた際に被害を最小限にするための技術も進化しています。
まずスバルグローバルプラットフォームの採用によって、衝突時のエネルギー吸収を効率よくしています。メインフレームが従来よりも直線的な配置となったことで、前面衝突時のエネルギーは効率よく後方へと移動します。
また、新たに助手席のシートクッションエアバッグも採用。衝突時に太ももが持ち上げられることでシートベルトの拘束力を向上しています。
インプレッサから採用された歩行者エアバッグは改良が加えられ、衝撃吸収を行う範囲を拡大しています。
さらにEXグレードについてはエアバッグ展開に連動してヘルプネットのコールセンターに自動接続するスバルスターリンクを搭載。専用のDCM(車載通信機器)を搭載することで24時間365日の緊急通報を可能にしています。
(文:諸星陽一/動画・写真:井上 誠)