クラウン、スズライト 、スカイライン、コロナ、ダットサン…日本のモータリゼ-ションの幕開けと軽自動車の躍進【スズキ100年史・第11回・第3章 その1】

1960(昭和35)年頃から始まった高度成長期とともに乗用車の販売台数は飛躍的に伸び、軽自動車もモータリゼーションの加速に大きく貢献しました。

第3章では、モータリゼーションとともに成長した軽自動車とそれを牽引した鈴木自動車の躍進について紹介します。

鈴木自動車は、「スズライト」や「フロンテ」シリーズ以降も、軽4輪トラック「キャリイ」、4輪駆動車「ジムニー」、2シータークーペ「フロンテクーペ」など個性的なモデルを市場に投入ました。

庶民の足というだけでなく新しい軽自動車のスタイルを提案することによって、リーダーとして確固たる基盤を築き上げたのでした。

第3章 軽自動車・第1期黄金期(1960-1972年)と鈴木自動車

その1.モータリゼーションと軽自動車の躍進

●モータリゼーションの幕開け

自動車メーカーは、1955(昭和30)年に通産省が発表した「国民車構想」に刺激され、乗用車の開発に全力で取り組みました。その成果として、昭和30年以降に主要な自動車メーカーから乗用車、軽乗用車の新型モデルが続々と登場し、ついに日本のモータリゼーションが幕開けたのでした。

・1955(昭和30)年
1月 トヨペット・クラウン(トヨタ自動車)
10月 スズキ・スズライト
・1957(昭和32)年
4月 プリンス・スカイライン(富士精密(プリンス自動車の前身))
7月 トヨペット・コロナ(トヨタ自動車)
10月 ダットサン1000(日産自動車)
・1958(昭和33)年
3月 スバル360
・1959(昭和34)年
2月 プリンス・グロリア(富士精密)
8月 ダットサン・ブルーバード310(日産自動車)
・1960(昭和35)年
4月 セドリック(日産自動車)

高度成長によって個人所得が大きく増大する中で乗用車需要が拡大し、国内の自動車保有台数は1965(昭和40)年に630万台でしたが、たった2年の間に1,000万台を超えました。

1955 スズライトSS
1955 スズライトSS
1958 スバル360
1958 スバル360

●軽自動車への優遇措置と販売比率の推移

モータリゼーションの主役は小型乗用車でしたが、手頃に入手できる軽自動車も乗用車の普及に大きく貢献しました。軽自動車はただ単に価格が安いというだけでなく、この頃の軽自動車は小型車や普通車と比べて以下の4つの点で優遇されていました。

・取得条件が容易な軽免許(2輪免許)で乗れる

・車検が不要

・税金や保険が割安

・車庫証明が不要

また、1965(昭和40)年には軽自動車の速度規制が撤廃されて普通車や小型車と同等になり、軽自動車でも支障なくどこでも走行できるようになりました。

全乗用車における軽自動車の販売比率は、1960年代初めは20%前後でしたが、その後小型車の販売急増で一時的に落ち込んだ後、1970(昭和45)年には30.1%まで上昇しました。

乗用車の販売比率推移
乗用車の販売比率推移

●続々と新型モデルを投入した鈴木自動車

順調に販売台数を伸ばした軽自動車の転換期は、4ストロークエンジン搭載の「ホンダN360」が出現した1967(昭和42)年で、これを機に軽自動車にも熾烈な高出力競争が始まりました。

1967 ホンダN360
1967 ホンダN360

鈴木自動車は同年に「フロンテ360」、3年後の1970年には「ホンダN360」を上回るパワーの「フロンテ71」を発売して対抗しました。

1967 フロンテ LC10
1967 フロンテ LC10
1970 フロンテ71
1970 フロンテ71

その後も鈴木自動車は様々なスタイルの個性的なモデルを投入、軽自動車のリーダーとして確固たる基盤を築いたのでした。

代表的なモデルは、「スズライト」のトラック仕様として登場し、現在も進化し続ける、1961(昭和36)年の軽トラック「キャリイ」、軽の4輪駆動車という新ジャンルを開拓した1970年の「ジムニー」、1971(昭和46)年にデビューした軽自動車初の2シータークーペ「フロンテクーペ」(後に2+2モデル追加)などです。

(文:Mr.ソラン 写真:中野幸次、スズキ、ホンダ)

第12回に続く。


【関連記事】

第2章 軽自動車のパイオニアとして足跡

その1.国民車構想と軽自動車の規格【第7回・2020年8月7日公開】
その2.量産初の軽自動車「スズライト」【第8回・2020年8月8日公開】
その3.「スズライト」に続いた軽乗用車モデル【第9回・2020年8月9日公開】
その4.ライバルメーカーの動向【第10回・2020年8月10日公開】

 

 

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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