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■コロナショックで中古スポーツカー市場はどう動いた?
新型コロナウイルスの影響で国内景気は落ちるばかりです。その影響は当然のように中古車市場にも現れています。
一時的に軽自動車需要が増えましたが、これは買い替えのタイミングだったり通勤で公共交通機関を利用したくない人が出てきたためです。一般的な中古車を買い求める人は激減しました。
そうなると相場は下がるのが一般的です。もしかしたら相場を上げ続けた中古スポーツカーが安くなったのではないかと思う人もいることでしょう。そこで今回は中古スポーツカーに的を絞って現在の中古車相場を調べてみました。
●まったく売れなかった4月
過去に何度か中古スポーツカーバイヤーズガイドとして、中古車相場と購入時の注意点を紹介しました。ですが現在はコロナ禍の中ですから、中古車ショップ取材を控えなければなりません。そこで以前から筆者が懇意にしている、古いスポーツカーに強い中古車ショップに連絡をして、コロナ禍以降の動向を聞いてみました。
お話を聞いたのは、東京都大田区でストリートからサーキット走行までサポートしてくれるショップ「ウィナーグループ」さんです。
社長の小宮伸介さんは、国内のクラシックカーレースで表彰台の常連と言っていいほど、レースに打ち込んできた方です。当然スポーツカー好きなので、自然とショップで扱う車種もスポーツカーが多くなっています。
まずコロナショックの影響を聞くと、3月から動きが鈍くなり、4月は最悪な状況だったと言います。程度のよい、普通なら飛ぶように売れてしまうクルマを店頭に置いても、問い合わせすらないような日々が続いたそうです。
これにより中古車相場が落ち始めるのですが、5月のゴールデンウィークを境に状況が変わります。車種を問わず、中古車相場がジワジワと上がり始めたのです。前述した軽自動車需要を筆頭に、買い控えていた人たちが市場に戻ってきたのです。
ところが「販売したいけれど売るモノがない。買取に出向くこともできなかったので、在庫がなくなってしまいました」と、相場が上がった理由を教えてくれました。
現在の中古車相場はコロナ以前に戻ったとも言われています。その理由はと聞くと「輸出用では?」との回答です。どうやら日本から出て行った海外のバイヤーが戻ってきているようなのです。
●気になるスポーツカーの相場は?
相場が動いたと聞いて気になるのは中古スポーツカーたちの動向です。そこで過去に紹介した第二世代スカイラインGT-R、80スープラ、インプレッサWRX、RX-7、ランエボ、S2000、NSX、ロードスター、ビート、カプチーノ、シビックタイプRの相場を改めて調べてみることにしました。
まず気になるのは、中古スポーツカー相場を高騰させた張本人である第二世代スカイラインGT-Rです。さらなる高騰をしているのかと思いきや、これが至って平行線のままです。R32GT-RのVスペックⅡだと1000万円超えが当たり前でしたが、これが1000万円以内でも流通していたことが発見だったくらいです。
インプレッサWRX、ランエボのライバル対決も同じことでした。以前に紹介した時と同じ相場で推移しています。ロードスターやビートも同様で、初代NSXではタイプR系が2000万円台で数台見つかるほかは、やはり以前の相場と似た状況にあります。
●80スープラが1000万円を超えた!
相場を見ていて異変を感じたのは80スープラです。
以前はNAエンジンのSZ系なら100万円代後半で狙えました。ところが現在100万年台の売り物が減り、代わりに国内では初代になる70スープラが台頭してきたのです。以前調べた時はヒト桁あるかどうかという売り物が、今ではフタ桁にまで増えています。80人気に引きずられた可能性があります。
というのも、80スープラの極上車が以前は400万円台から狙えたのですが、今回調べたところ実に1000万円を超える売り物を発見してしまいました!
600万円から900万円という売り物がほかにも見つかることから、極上モノが相場を引き上げているようです。
●S2000も500万円超えが当たり前?
次に異変を感じたのがホンダS2000です。
昨年紹介した記事では極上車が400万円を超えたことに驚いたものでしたが、400万円台はもはや普通になってしまったのです。確かに今でも100万円台の売り物はありますが、それらは修復歴があったり走行距離が15万キロを超えているものばかり。
200万円を超えたくらいからマトモなモノが見つかるようになりますが、走行5万キロ以内で修復歴がないモノは300万円台後半です。その結果、一時は頂点相場だった400万円台が普通になってしまい、500万円600万円という売り物まで出てくるようになったのでしょう。今回見つかった最高値は900万円台でした!
●カプチーノは100万円台後半に推移
以前にカプチーノの中古車状況を紹介したのは、今年の4月のことです。コロナ禍による緊急事態宣言が出る前の取材でしたが、相場はどんどん動いているようです。
つい4カ月前の中古相場の平均が70万円台で最高値が150万円でした。今回調べても平均相場は70万円台で変わりないのですが、問題は新車価格を超えた個体が増えていることです。
前回調べた時の最高値150万円に対し、今回の最高値は5ナンバー登録した280万円台を除いても240万円台です。新車価格145.8万円(MT仕様)を超えているものがフタ桁も見つかりました。もはや100万円以内で狙うクルマではなくなったと考えるべきでしょう。
●ウィズ・コロナ時代における中古車の買い方
このように相場を上げた車種があれば、コロナ以前と相場が変わらない車種もあります。どうやらコロナによる影響は中古スポーツカーにとって最小限だったようです。
ですが、以前のように気軽に店頭へ出向き対面による買い方に抵抗がある人も多いことでしょう。そんな中で注目されているのが、インターネットによるオンライン商談です。自宅にいながら気になるクルマを店員と会話しながらチェックできるのですから、大いに活用したいところです。
ただ、スポーツカー専門店でオンライン商談を導入しているところは少数です。その点を前述のウィナーグループさんに聞いたところ「インターネット経由(中古車情報サイト)での問い合わせが増えています。そのまま現車を見ずに成約となる比率も同じように高くなっています」とのことです。
魅力ある情報発信がショップ側には欠かせないことになり、それを見極めるユーザー側の見識も問われることになりそうです。
【取材協力】
ウィナーグループ
東京都大田区萩中3-20-7
TEL.03-3742-3591
(写真・文/増田満)