■同じプラットフォームを使うRAV4と後席、荷室はどう異なる?
現在の新型車マーケットで話題を独占している感のある新型トヨタ・ハリアー。そのスタイリッシュなスタイリング、内外装のクオリティの高さなどから、自動車メディア以外からの注目度も高いようです。
エクステリアデザインでは「クーペキャビンとスポーツカー並のたくましいスタンス」を掲げていて、写真よりも実車で見る方がスマートな印象を受けます。特に欧州車で現在流行している横一文字のテールランプ、その上のハイマウントストップランプはリヤビューを印象づけています。
このようにクーペテイストが強調されると気になってくるのは、居住性や積載性などの使い勝手でしょう。ユーザーはクーペやスポーツカーを買うわけではないので、「多少狭くても」「荷物が積めなくても」と目をつぶるというわけにはいきません。
■RAV4の存在がハリアーらしさを際立たせた
デザインと実用性の両立について、新型ハリアーのMS製品企画 ZD主査の小島利章氏に伺うと、BMW X4、X6、メルセデス・ベンツGLCクーペなどがある中、「SUVを超えていこう」という考えに拠ったそう。
それでも日本人の嗜好に合うモデル(クーペSUV)を送り出すというディスカッションが繰り広げられたとしています。それは、RAV4という4WDを含めた機動力、高いユーティリティを特徴とするモデルがあったからこそ踏み切れたのでしょう。また、新型では「ハリアーネス」というキーワードは、曖昧なイメージもあるから今回は使わなかったそう。
デザイン性を追求しながらも、まず、安心・安全を担保し、次に使い勝手についていろいろな部署で議論を繰り広げたと明かしてくれました。
「デザインと実用性の両立、せめぎ合い」について分かりやすい例は、弟分(?)であるC-HRでは? と小島利章氏に話を振ると、やはり新型ハリアーの開発においてC-HRユーザーの声はかなり参考になったとしています。
「デザインと使い勝手が両立するギリギリのラインはどこだろうか?」「どこがベストか」と考えていく中で、C-HRユーザーの声が参考になり、この面では同社の人間工学の担当部署が活躍したそうです。
従来の開発では、競合するクルマを引き合いに出してベンチマークに設定し、どのクルマが1番かと判断しながらベストを出すという手法が採られてきました。
新型ハリアーでは、どの点で許容できるのかという見方で全体のバランスを決めてきたとしています。ただし、ベンチマークは設定しなかったものの、競合するクルマを横並びで見ながら視界なり積載量なりを決め、新型ハリアーのベストな解を導き出したそうです。
これらを意識して前席に座ると、オフロード系SUVにあるような「コマンドポジション」とは異なるものの、前方・左右の視界はまずまず良好。また、後席は「TNGA(GA-Kプラットフォーム)」を使うだけあって、クーペクロスオーバーとはいえ、足元、頭上共に十分な広さが確保されています。
同じプラットフォームを使うRAV4と比べると、頭上まわりを中心とした開放感では譲るものの、身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後方には十分といえる広さを確保。
逆にいうと、よりパーソナル感(包まれ感)が強いのが新型ハリアーで、RAV4は先述したように開放感で上を行きます。また、後方視界は、C-HRほど思い切ったものではなく、良好とまではいかないものの、まずまずといったところでしょう。
さらに、乗り心地や静粛性の高さという面でも後発のハリアーの方が上で、上質感という点で差別化が図られています。
また、ゴルフバッグが3セット積載できる新型ハリアーのラゲッジスペースは、通常時409L・最大時(後席前倒し時)1045L。BMW X4の525L〜1430L、メルセデス・ベンツGLCの500~1023Lと比べると、やや容量は小さめですが、日常ユースでは不足はないはず。開口部はスクエアで、地上からの開口高も抑えられています。
もし、ユーティリティ・積載性重視であれば、ゴルフバッグが4セット積載できるRAV4があり、542L〜1150L(デッキボード上段時)という荷室容量が控えています。
同じプラットフォームであることから何かと比較されそうなRAV4と新型ハリアー。デザインや走り、4WDの品揃えだけでなく、実用性、使い勝手の面でも巧みな作り分けがされているのが分かります。
(文/塚田勝弘 写真/井上 誠)
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