自動車の歴史概説:動力性能や快適性のたゆまぬ進化。環境規制との闘いも【自動車用語辞典:歴史編】

■大きな転換期となった1970年代の排ガス規制強化とオイルショック

●現在のメインテーマは、「電動化」「自動運転」「コネクテッド技術」

自動車は、人や物の移動手段として性能や安全性を保障しながら、便利さ、豪華さなども追求して進化してきた一方で、地球温暖化ガスCO2(燃費)や排ガスなどの厳しい環境問題についても対応してきました。

自動車の発明から今日までの約150年の歴史を振り返り、解説していきます。

●自動車の誕生から戦前

自動車の歴史は、1769年フランス人のニコラ・ジョゼフ・キュニョーが発明した蒸気自動車から始まりました。また、電気自動車の実用化はガソリン自動車より早く、1873年には英国で電動4輪トラックが登場しました。

1876年、ニコラウス・オットーが4サイクルのガソリンエンジンを開発し、これを機に1886年カール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーが同時期にガソリンエンジンの自動車を発明しました。

パテント・モトールヴァーゲン
1886年、カール・ベンツが発表したパテント・モトールヴァーゲン(写真:ダイムラー)

当初富裕層しか入手できなかった自動車を誰でも手に入れる存在にしたのは、1908年にT型フォードの大量生産に成功した「自動車の育ての親」ヘンリー・フォードです。

●戦後から1960年代

第二次世界大戦で自動車産業は一時的に停滞しましたが、復興とともに戦前の勢いを取り戻しました。戦後から1960年代にかけては、ユーザーはより速いクルマに憧れ、それに応える形で技術が進み高性能車やスポーツカーの名車が生まれました。

一方で、より実用的で多くの人の手に届くようなファミリカーも増え、日本のモータリゼーションが本格的に始まった時期でもあります。

トヨタ・初代クラウン
トヨタ・初代クラウン(写真:トヨタ自動車)

●1970年代

1970年代に入り、クルマは環境問題や省資源問題といった新しい課題に直面します。引き金となったのは、米国のマスキー法(大気汚染防止法)による排ガス規制とオイルショック(原油高騰)が引き起こした、燃費重視などの社会的、政治的な動きです。

贅沢品の象徴的な存在であったクルマが、社会的要求によって環境対応(排ガスや燃費)のための技術が重視され始めた時代でした。

ホンダ・シビック CVCC
ホンダ・シビック CVCC(写真:本田技研工業)

●1980年代

1980年代は規制対応に目途が立ち、再び走行性能を向上させた時期です。

また、高性能化とともに安全性も重視され始め、エアバッグやABS(アンチロック・ブレーキシステム)が徐々に普及し、操縦安定性の高いマルチリンク式サスペンションが登場したのも1980年代です。

1980年代後半は、日本では空前のバブル期となり、高級車やスポーツカー、ファミリカーなど多種多様なクルマが登場しました。

マツダ・5代目ファミリア
マツダ・5代目ファミリア(写真:マツダ)

●1990年代

1980年代後半に始まったバブル景気とともに、日本製のクルマは世界市場で大きく躍進しました。個性的なコンセプトや技術が生み出されましたが、後半は湾岸戦争やバブル崩壊などの影響でコストパフォーマンス(費用対効果)が重視されるようになりました。

1990年代は日本車が欧米車に追いつき、特に燃費の良いコンパクトカーづくりと低燃費エンジン技術においては、欧米に先行しました。

何と言っても1990年代最大のトピックスは、1997年のハイブリッド車トヨタ・プリウスの登場です。

トヨタ・初代プリウス
トヨタ・初代プリウス(写真:トヨタ自動車)

●2000年代

21世紀になると、石油枯渇や地球温暖化問題がクローズアップされ、クルマに対する環境対応への社会的要求が一層強まりました。

燃費向上と排ガス低減のため、ガソリン車に加えてディーゼル車や電動車など、さまざまなパワートレイン技術の競合が始まりました。

●2010年代

2010年代に入り、自動車メーカーは環境対応技術に加えて、自動運転技術やコネクテッド技術の開発に注力し始めました。環境対応技術については、既存エンジンの進化と電動技術、また自動運転技術についてはその前段階の運転支援技術がメインテーマです。

自動運転技術やコネクテッド技術の開発を進めるためには、従来の自動車技術だけでなく、広い分野の技術が必要です。多くの自動車メーカーは、IT企業や半導体企業、AI研究機関などと協業・競争しながら開発を推進しています。

日産・初代リーフ
日産・初代リーフ(写真:日産自動車)

 

自動車の歴史(1)
自動車の歴史(1)
自動車の歴史(2)
自動車の歴史(2)

自動車の誕生をガソリン車の発明とすれば、現在(2020年)まで約134年経過しています。自動車は、ユーザや環境対応のような社会の要求、場合によっては政治的な要求に応えながら進化を続けています。

本章では、自動車が誕生してから今日までの歴史について、年代ごとに詳細に紹介します。

(Mr.ソラン)

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この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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