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■HEV、PHEV、EVが続々登場、電動車に対抗して新機構のエンジンも登場
●電動化技術とともに安全技術が重視され、運転支援や自動運転の実用化が進行中
2010年代に入り、自動車メーカーは環境対応技術に加えて、自動運転技術とコネクテッド技術の開発に注力し始めました。そのため、自動車技術だけでなく、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)といった広い分野の技術が必要になりました。
自動運転とコネクテッドという新たな技術に挑戦した2010年代のクルマと自動車産業について、解説していきます。
●環境対応技術と運転支援技術
環境対応としては、既存の技術を進化させる新しいエンジン技術と、HEVやPHEV、EVの電動化技術の2つのアプローチがあります。
エンジンの進化とは、燃費改善のために熱効率を向上させることです。
熱効率向上のため、ミラーサイクルや大量EGR、リーンバーンなどさまざまな技術が採用されています。2018年に日産の可変圧縮比エンジンが、2019年にマツダのSPCCI(火花点火制御圧縮着火)エンジンの実用化が、最近の大きなトピックスです。
HEVについては、日本が先行して欧州が追従しています。欧州ではHEVより、むしろPHEVとEVを主体にした開発が進んでいます。
米国カリフォルニア州では、EVを一定台数以上販売しなければならない「ZEV(ゼロエミッション車)規制」が施行されたため、世界中のメーカーはEV推進に取り組んでいます。
●自動運転とコネクテッド技術
現在最も注目されているのは自動運転かもしれません。
ただし現時点では法整備や事故責任の所在など多くの解決すべき課題があり、自動運転への最終的な道筋はまだ見えていません。
2010年代は、自動運転の前段階の運転支援技術が安全のための大きな商品力となり、多くのクルマで採用されています。実用されている代表的な運転支援技術は、自動ブレーキや追従機能付きクルーズコントロール、車線維持支援、自動車線変更などです。
コネクテッド技術は、クルマに通信システムを搭載してネットワークとつなぐことによって、クルマにリアルタイムの情報を提供して安心や安全、利便性を向上させることを目的としています。
自動運転を実現する上でも、コネクテッド技術は不可欠です。
●代表的な外国のモデル
2010年代には、欧州でEV、PHEV、EVの電動車モデルが増えてきました。
BMWは、3、5、7シリーズにハイブリッドを設定し、メルセデス・ベンツもSクラス、Eクラスにハイブリッドをラインアップしました。アウディはA6とA8に加えて、SUVのQ5にハイブリッドを設定しました。
PHEVとして、ボルボ・XC60やBMW・X5 xDrive40e、Mini Countryman(日本名:クロスオーバー) PHEVなどが登場しました。
EVとして、ルノーZoe(ゾエ)やBMW・i3、VW・e-Golf、Tesla・Model S&Xなどが発売されました。
欧州は燃費の良いディーゼル車がシェアを伸ばしていましたが、2015年に発覚したVWの排ガス不正事件以降は、ディーゼル車に限らずエンジン車の開発は日本に比べて停滞しています。
●代表的な日本のモデル
2010年に発売されたEVの日産・リーフは、満充電で航続距離200km、その後改良して最新仕様では航続距離を400kmまで伸ばしました。
2013年の三菱・アウトランダーPHEVは状況に応じてEV走行、エンジン駆動でモーターアシスト、ハイブリッド走行、エンジンで発電して電池を充電などの運転モードを使い分けるユニークなPHEVです。続いてトヨタ・プリウスPHEVとホンダ・クラリティPHEVが登場しました。
2016年には、エンジンで発電してクルマの駆動はモーターのみのシリーズ・ハイブリッド方式を採用した日産ノートe-Powerが発売され、爆発的な人気を得ました。
2018年、可変圧縮比エンジンを搭載した日産インフィニティQX50(北米のみ)が発売、2019年末にSPCCI(火花点火制御圧縮着火)エンジンを搭載したマツダ・MAZDA3が発売され、大きな話題になりました。
2015年以降は、ほとんどのクルマで運転支援技術の自動緊急ブレーキ(AEB)や追従機能付クルーズコントロール(ACC)、車線維持支援(LKAS)が採用されています。また、一部のモデルでは、高速道路での自動車線変更支援(LCA)を実用化しています。
2010年代は、電動化技術に加えて自動運転技術、それらをサポートするコネクテッド技術などの開発のため、従来の自動車技術だけでなく、広い分野の技術が必要になってきました。
多くの自動車メーカーは、IT企業や半導体企業、AI研究機関などと協業/競争しながら開発を推進しています。
(Mr.ソラン)