目次
■世界最高速大会 ボンネビル スピードウィーク大特集
●雨さんもDaiちゃんも驚いた、そのスケールのデカさ!
1986年に行われた世界最高速大会・ボンネビルスピードトライアルに参戦する、アメリカ・レーシングビートRX-7を追って、初めてのボンネビル体験をしたOPTのDaiとRE雨宮の雨さんこと雨宮勇美さん。最後には天候悪化により期間短縮で終了してしまったこの年のボンネビルでしたが、自身の目で見たボンネビルはやっぱりスケールがデカかった!
そんな観戦記を雨さんとDaiが興奮気味に綴っています。ではさっそく見てみましょう!
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■でっかいアメリカには驚いた! でも、やるっきゃない by RE雨宮・雨宮勇美
●オレの見た、ボンネビル世界最高速大会
夢にまで見たUSAボンネ最高速トライアル。もう10年くらい前から最高速に興味のあったオレだ。今回、USAレーシングビート製RX-7が出場するという話を聞いて、Daiちゃんと一緒に見学することにした。
1986年8月16日、飛行機はロサンゼルス空港に到着。DaiちゃんがアメリカマツダからRX-7・13Bインジェクションの新車を借り受け、それに便乗させてもらっていざ、ボンネビルへ。
フリーウェイに乗る。なんと日本車の多いこと! SA・RX-7やフェアレディZがビンビンに走っている。右側通行というだけで日本の道路の景色と大して変わらないようだ。
Daiちゃんがほとんど運転し続けて、約10時間は走っただろうか、カリフォルニアの隣の州に行くだけなのに、なんて遠いんだろう。
道は日本と全く違う。どこも本当に直線が長く、最高速なんてすぐ出せるようだ。ノーマルRX-7じゃエンジンが吹け切ったままアクセルを踏みっぱなし。眠くなってしまう長さだ。10時間の走行でもハッてくるクルマは1台も無く、Daiちゃんの横でオレは寝てたくらい。
朝5時頃、ようやくボンネビルに到着。で、あまりの会場の大きさにビックリ。東京都がスッポリ収まるくらいの湖がすっかり干上がり、底の土、いや塩は日本のと同じで、やっぱりショッパかった。
●雨さんの参加者チェ~ック!
近くの街の小さな飛行場で、トライアル参加者の車検が始まった。
ほとんどのクルマのエンジンはアメリカンV8だ。キャブレーションもメカニカルインジェクションにプラス、スーパーチャージャーというところ。それに何台かはお馴染みのターボチャージャー付きで、こちらは少数派。
中でも1番たまげたのは、フェラーリGTOの新車にアメリカンV8を積んだヤツ。興奮しっぱなしで、エンジンや足まわりをカメラでバチバチ撮りまくった。日本車は…とみると、280Zのターボ付きやアメリカンV8スーパーチャージャー付きVG30Z。SA・RX-7は13Bシングルターボ、デフがフォード製の2.8。出来はイマイチ。
最後の1台がFC・RX-7ツインターボ。実物はメーカーワークス的な仕上がりを見せるレーシングビートのクルマだ。
●ロータリーの神様・雨さんに、レーシングビートRX-7はどう見えた?
オレはこのクルマを見たいがために日本からはるばるやってきたのだ。それこそ舐めるように観察をした。ハッキリ言って素晴らしい仕上がりで、これだけ良くできたクルマは会場にも2、3台しかなく、ただ真っ直ぐ走ることだけなのにいろんな工夫がなされている。
フロント、リヤのショックはレースカー用のコニのダブルアジャスタブル。ボディ下面に空気を入れないように最低地上高は5cmにまで下げてある。
エンジンのポートはブリッジで、1本もののアペックスシールを使い、圧縮比は7.5にしてある。アルミ製フライホイールにトリプルプレートクラッチを組み、キャブはGC用(?)のメカニカルインジェクションを使っている。マツダスポーツキットのデスビとNGKレーシングプラグは#11.5とくれば、誰でもすぐ分かると思う。
タービンは日立製で排気マニホールドはそれぞれ30から35cmくらいの長さがあり、エアチャンバーは手作りだ。マフラーは60φストレートで、フロントフェンダーの後部あたりから左右への振り分けとしてある。
1番関心のあったインタークーラーは水冷!で、強力なポンプを2基使い氷水を送って冷やしている。ソルトレイクの昼間温度は40度以上。空冷では冷やせないからということで、納得した。
以上の工夫に加えてスペアパーツとして、エンジン3基、ミッション1基、デフも1基運び込んできたという気合の入れ方はスゴイ!
●ボンネビルは遠いけど…挑戦したいね!
いよいよトライアルの開始。テストの距離が長いのでストレートマフラーを使っているのに、スタート地点にいるオレたちの耳には5速にシフトアップする頃には何の音も聞こえてこない。というわけで、実は少し退屈気味だった。谷田部の場合はコースが小さいしオーバルの中にいるので、音の感じが良くつかめるんだけど。
数回のトライアルが行われたわけだが、1回目はいきなりエンジンがブローして即、積み換え。でも、その後の走行では区間最高速が390km/hを超し、走り切ったあとでもそのエンジンは軽いリズムを奏でて安定していた。キマッタの一言。
この時あらためて、「オレもやるっきゃない」と思った。
ただ…ここボンネビルは日本からは確かに遠い。トライアルは1週間あるのだが、もしスコールや強風があると規則でいきなり中止になってしまう。これが怖い。だけどオハイオ州には谷田部に少し似たオーバルコースがある。そこのバンクは谷田部ほどにはきつくないので、結構アクセルを踏めるようだ。まずそこでシェイクダウンをしてみたい。
自分の目で確かめたこのトライアル、往復14マイルの全開、耐久性と極限的なパワーの完璧なバランス、RE雨宮でもテストを繰り返してその結果としての挑戦を果たしたいし、オレ自身でハンドルを握って日本人初の200マイルオーバードライバーにもなりたい(ネバダのホテルに写真が掲げられるのだ)。でも来年(1987年)、いや2~3年くらい先になってしまうかなぁ…実際に来るのは。だけど、絶対にトライアルに出場するぞ。期待しててくれ。
日本のチューニングショップの皆さん、どなたか一緒にボンネビルに挑戦しませんか?
■オレも200マイルドライバーになりたい! by Dai稲田
●陽気なアメリカンな楽しみ方、最高!
ボンネビルがこんなに面白いとは思わなかった。主催はSCTA(サザン・カルフォルニア・タイミング・アソシエーション)というとこだが、ただスピードに挑戦するだけ、といういかにもアメリカ的なところが良いし、なにしろ集まるクルマが面白い。
特に古いクルマを大切にする風土だけに、各クラスにビンテージクラスがあり、フツーのサーキットでは見られないクルマが多くて、ルンルンしちゃう。そして、いろんなチューニングがある。V8エンジンの素晴らしさに改めて感動するのも、ここだけかもしれない。
もちろん、レーシングビートのセブンは最高だった。こんな良くできたクルマなら、誰だって最高速に出たくなるだろう。オレも走りたくてウデがウズウズしていた。ま、来年(1987年)の東京オートサロンに持ってきて、みんなに実物を見せたいね。
日本の最高速はシビアでオドロオドロしているけど、ここは陽気で楽しさいっぱい。スピードだけを追求するロマンに満ちている。クルマの地上最後の楽園という言葉がピッタシだった。
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クルマの地上最後の楽園…かぁ。この数年後、TBO、アビィロード、RSヤマモト、セントラル、JUNオートメカニック、DANDY…などのそうそうたるチューナーたちが挑戦しにやってくるボンネビル世界最高速大会です。次回は1986年ボンネビルに挑戦した地元アメリカのヤンチャたちを紹介しましょう。
[OPTION 1986年11月号より]
(Play Back The OPTION by 永光 やすの)
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