■売り切れになるわけですよ。スゲぇいい
トヨタがRAV4のPHVモデルを発表しました。しかしあっという間に生産の限界を大きくオーバー。具体的にはバッテリーの調達が間に合わないとのことで、いったん受注をストップするという事態となりました。
RAV4は2リットルのピュアエンジン2WDと4WD、2.5リットルハイブリッドの2WDと4WDが販売されています。今回追加されたPHVは、2.5リットルのエンジンに前後モーターを組み合わせた4WD仕様です。なお、PHVには2WDモデルは用意されていません。
ひとつ復習しておきましょう。PHVというのは「プラグイン・ハイブリッド・ヴィークル」の略です。通常のハイブリッド(HV)は、ガソリンなどの燃料を給油してエンジンが発電したり、ブレーキのエネルギーを回収したりするだけですが、プラグイン・ハイブリッド(PHV)は充電器を使ってバッテリーに外部から充電できます。
RAV4 PHVに搭載される駆動用バッテリーは18.1kWhの総電力量を持ちます。初代リーフ(エンジンを積まないピュアEV)が24kWhでしたから、その75%分のバッテリーを積みながら、エンジンも搭載しているとなったら多くの人に受け入れられるのも納得できます。
24kWhのバッテリーを充電するのは100Vもしくは200Vの普通充電のみです。
急速充電を装備しなかったのは車両価格がアップすることだけでなく、急速充電器を使う人が増えるとEVのインフラに大きな負担を掛けることを懸念したからです。現在でもエンジンが搭載されているPHVが急速充電器を使っていることが問題となることはあるので、これはメーカーとしては賢明な判断と言えます。
バッテリー容量ゼロで充電した場合、200Vで5時間30分、100Vで27時間で満充電となります。満充電でEV走行できる距離はWLTCモードで95kmです。これだけの航続距離があれば、多くの人が充電した電力だけで通勤が可能なレベルです。
RAV4 PHVを走らせるとその感覚はEVそのものでした。ある程度バッテリーが充電された状態で走り出せたので、その感覚はより一層強いものとなりました。
停止状態からアクセルをグッと踏み込んでスタートすると、EV特有の非常に力強い発進加速を味わえます。もちろんエンジン回転が上がるとき特有のノイズや振動はありません。あくまで静かにあくまでスムーズに加速していきます。そのまま高速道路で巡航状態に入ってもバッテリーに電気が残っていればエンジンは始動せずに走り続けます。
ACCをオンにして第一走行車線を流して走行中、インターチェンジで左からクルマが合流してくるシーンに出くわしました。減速して前に入れるか? 加速してやり過ごすか? よくある場面ですが、今回は後続車がいたので加速してやり過ごしました。
これは高速道路での追い越し加速に当たるような加速ですが、アクセルをグッと踏み込んだときのモーターのトルク感、無駄なく伝わる駆動力……そしてそれらが起きていることがまったく異次元での出来事かのような静粛性は素晴らしい体験です。
平坦路や下り勾配では、EVモードのまま走り続けるRAV4 PHVですが、バッテリー容量が少なくなっている状態で上り勾配に差し掛かるとエンジンが始動します。
そもそも基本はハイブリッド車ですので、エンジンが始動してしまうのは事実です。EVとしてモーターだけで走れるシーンが多いだけに、「あー、エンジンが掛かってしまった」と思ってしまうかもしれません。だからといって不快な状況ではありません。エンジンが始動することは体感できますがトルク感の変化はなく、じつにスマートでシームレスなものです。
RAV4 PHVはRAV4のハイブリッドよりも車重が約200kg重くなります。その多くはバッテリーに起因します。通常、車重が増せば運動性能は落ちるものですが、増えた分のバッテリーが床下配置となるため重心がさがり、それによりハンドリングは向上方向に影響しています。
とくに高速コーナーではびしっと安定した走りとなり、気持ちのいいドライブを楽しめます。
トヨタというブランド、人気のSUV、そしてハイブリッドでありながらしっかり充電も出来ることで、ガソリンを使わずにある程度の距離が走れるとなれば、多くの人が殺到するのは必至。最大の失敗は供給体制を整えずに発売開始してしまったことでしょう。
(文/諸星陽一・写真/井上 誠)