■豪雨の後、LINEなどSNSでの素早く注意喚起を行ったが…
九州を中心とした豪雨禍真っ最中の2020年7月7日、ホンダはツイッターやフェイスブック、LINEなどSNSで一斉に「浸水や冠水したハイブリッド車や電気自動車は感電する可能性があり危険。すぐ車両から離れてください」と注意喚起を行った。この情報に接した人が、水没車に中に要救助者が居て助けようとした場合「ハイブリッド車だ! 感電するので近寄るな!」と忠告する可能性あります。
実際どうかといえば、ハイブリッド車が初めて市販された1997年以降、たくさんのハイブリッド車は洪水で水没し、津波でも流れされてきたものの、感電事故無し。電気自動車のリーフを含めた日本製電気自動車も感電事故(火災を含む)皆無。なぜかといえば、国交省が定めたガソリン車をはるかに凌ぐ厳格な安全規定に沿って作られているからに他ならない。
安全規定は驚くほど厳格。そもそも起動していない状態ではコンタクター(電磁接触器)をオフにすることで、走行用の高電圧バッテリーは完全に絶縁されている。加えて高電圧バッテリーは水没や衝突などで漏電しない構造になってます。衝撃試験を見ると、人間の生存空間無いほど損傷しない限りバッテリーケースが壊れることなど無い。水圧を掛けた冠水試験も行われている。
また、走行中に冠水したら、大きな電流流れた途端、コンタクターが稼働して高電圧系をシャットダウンする。12Vの制御バッテリーの異常や、エアバッグの稼働、大きな衝撃を受けた時にもコンタクターは稼働。といったような感電事故が起きない厳格な構造となっているから、今まで1件も発生していない。それならなぜホンダは感電に対し注意喚起したのだろう?
筆者がこのSNSに気付いた7月8日の夕方、ホンダに問い合わせてみると「少なくとも弊社のクルマに於ける感電事故は起きていません。すぐ事実関係を確認します」。どうやら開発部門へ問い合わせるなど社内的な調査を行ったようだ。7月9日になり「公式Webのマニュアルにそういった記述があったため改めて確認することなくSNSに流してしまったようです。訂正を出します」。
ということで、例えばツイッターなら7月9日の15時51分に「ハイブリッドカーや電気自動車などのバッテリーは、設計上様々な対策を施しており、冠水しても感電の危険はありません。 災害に遭ったクルマの対応についてはHonda販売店にご連絡をお願いします。 投稿内容によりご迷惑をおかけした事をお詫び申し上げます」という訂正をフェイスブックやLINEにも行った。
時系列的にその少し前の7月9日15時35分に今度はスバルがSNSを通じ「ハイブリッド車(e-BOXER)は感電の恐れがあるため手を触れず販売店に連絡を」。この件、スバル広報によれば「弊社のハイブリッドも感電事故を起こさないような構造になっています」。ただSNS担当の意地なのか7月11日の13時時点でそのまんま。この注意喚起をそのままシェアしている人も多い。早めの対応をすべきだ。
いずれにしろ水没しているハイブリッド車や電気自動車の中に人が残されていたら、普通のクルマと同じように助けて頂きたい。繰り返すが、過去に一度も感電事故は起きていません。また、水が引いた後、水没していたクルマは、ガソリン車やハイブリッド含め、始動や起動をしないこと。12V系のバッテリーがショートする可能性あります。販売店やJAFなどに連絡しましょう。
(国沢光宏)