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■EVの電力消費率(kW/km)は、モード運転中の1kmあたりの電力消費量
●EVの充電航続距離(km)は、1回の満充電後にWLTCモード運転で走行できる距離
EVは、燃料ではなく電池の電気エネルギーでモーター走行するため、排出ガスや燃料消費はありません。そのため、エンジン車で実施する燃費試験や排ガス試験の代わりに、電力量消費率(電費)を評価する試験を行います。
EVの評価項目である一充電あたりの航続距離試験法および電費試験法について、解説していきます。
●EVの基本構成
EVの構成はシンプルです。
二次電池とその充放電を制御するコントローラー、モーターとインバーター、車載充電器などで構成され、エンジン車で必要な変速機や吸排気系、多くの補機類などが不要です。
外部充電のための充電口は、2種類装備されています。家庭用の100V、または200V電源に接続する車載充電器用(2~3kW程度)と、充電スタンドの急速充電器用(数10kW)です。
車載電池としては、リチウムイオン電池が使われます。正負極で発生する酸化・還元反応で電力を発生させ、正負極間でリチウムイオンが行き来することによって、充電と放電を繰り返すことができます。
他の電池に比べて、エネルギー密度が高く、大きなパワーが得られる、寿命が長いなどのメリットがあります。しかし、EV用としてはまだ大量の電池セルが必要なため、重量が重く、コストが高いという課題があります。
●EVの電力量消費率の評価法
エンジン車の燃費・排ガス試験は、シャシーダイナモ(C/D)メーターのローラー上で実走行を模擬した世界基準のWLTC(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)モード運転で行われます。モード燃費は、モード運転中に燃料をどれだけ消費したか、L/kmで評価します。
EVの場合も、エンジン車と同様C/D上でWLTCモード運転によって評価します。ただし、エネルギー源が燃料でなく電池に蓄えた電力のため、1kmあたりの燃料量(L/km)でなく、1kmあたりどれだけの電力を消費したかの電力量消費率(kW/km)、電費で評価します。
電費が小さいということは、少ない電力量で走行できる、エネルギー効率が高いことを意味します。
以下に、一充電の航続距離と電力量消費率(電費)の試験方法について解説します。
●EVの一充電航続距離と電力量消費率の試験方法
試験の前にEVの駆動電池を満充電状態で、標準温度25℃において6時間以上ソーク(放置)します。その後、エンジン車と同様C/D上でWLTCモード運転を開始し、電池の電力が続く限りモード運転を繰り返します。
電池の電力量を使い果たし、試験サイクルに追従できなくなった時点で試験は打ち切りとなります。その時点のトータルの走行距離が、一充電の航続距離と定義されます。
ちなみにWLTCモード試験の所要時間は1477秒、走行距離は15.01kmです。あるEVの試験で、モード運転3サイクル終了時点で電池切れを起こしたとすると、このEVの航続距離は約45kmです。
走行終了後、電池を充電して満充電状態まで回復させて、これに要した交流充電電力量(E kWh)を計測します。
一充電の航続距離(D km)とそれに要した電力量(E kWh)から、以下の式で電力量消費率C(Wh/km)を算出できます。
C = E × 1000 / D
エンジン車の燃費(km/L)は1kmあたりの燃料消費量km/L、EVの電費(Wh/km)は1kmあたりの電気量で表されます。したがって、走行費用というユーザーの観点からは、変動する燃料代と電気代によってEVの優位性が変わります。
燃料価格が下がれば、EVのメリットは縮小するというわけです。
(Mr.ソラン)