マツダが創立100周年記念車を全車で展開。デザイナーが白と赤で表現したかったこだわりとは?

■モチーフはR360クーペに

mazda・メイン
R360クーペのイメージをもっとも強く引き継いだロードスター

今年2020年1月30日に創立100周年を迎えたマツダは、4月3日、フルラインナップによる「100周年特別記念車」を発表しました。

この発表に伴い、過日6月13日にオンラインによるプレゼンテーション(取材会)が開催されました。今回はデザインの側面がクローズアップされ、エクステリアデザイナーやCMFデザイナーが制作の過程を披露。ここではその内容を報告したいと思います。

すでに各媒体で紹介されている記念車ですが、今回は1960年に発売されたR360クーペをモチーフとしています。当初はコスモスポーツなど他の候補もあったそうですが、最新のコンセプトカーまで続く「クーペ」という車型がマツダの源泉とも言えることからR360クーペに決まったそうです。

mazda・インテリア
ロードスター以外はインテリアで2トーンを追求。シートには記念マークの刻印が施される

もちろんR360クーペが小杉二郎、小林平治といった創業期の名デザイナーの手による大胆でキャッチーな存在であること、そしてこのクルマが同社初の4輪乗用車であり、当時と現代をつなぐクルマとして最適であることも理由とされます。

このR360クーペに設定されていた赤のルーフ、シート、フロアの組み合わせが具体的なモチーフで、これを全車で再現することに。本作業に当たっては社内の倉庫から当時の資料を探し出し、そこに示された手描きのスケッチや色番号などの貴重な内容が参考とされました。

ボディ色については、当時の「アルペンホワイト」というアイボリーに近い白に対し、記念車では「パールホワイト」を採用。当時は技術的に「真っ白」の塗料を作るのが困難であり、恐らく小杉氏らがいま選ぶとすれば、この輝くような白のはずだと想像しながら決めたそうです。

mazda・ホイール
アルミホイールキャップには記念のシンボルマークが控えめに飾られる

■バーガンディの内装で2トーンを表現

一方、赤は「大人っぽさ」と「上質」を狙いに「バーガンディ」を選択。ロードスターの場合はルーフとボディの2トーンですが、そのほかの車種ではインテリア内で2トーンを実現するべく、車種によっては新規にパーツをおこすなどで室内色の組み合わせが図られました。

とくにフロアマットでバーガンディを表現するのは技術的にも非常に難しく、今回いちばんのこだわりとか。また、100周年のシンボルとして新たに制作したマークをシート表皮にエンボス加工したのも見どころ。このマークはアルミホイールのキャップにも採用されています。

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マツダ初の公式グッズ類。40台に及ぶモデルカーも社内デザイナーが制作

プレゼンテーションでは、同時に制作した「マツダコレクション」も披露されました。フォトブックやTシャツ、マグカップなど、同社初の公式グッズで、最大の話題は歴代マツダ車40車種のモデルカーの発売(順次発売)です。

こうしたグッズ類は外注されるのが普通ですが、何とモデルカーも含め、すべて社内デザイナーによる制作というのがいかにもいまのマツダらしいところ。少し前に「魂動デザイン」の自転車を作っていたことがありましたが、クルマのデザインにとどまらない取り組みはいまも継続しているようです。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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