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■世界で初めてガソリンエンジンの自動車「モトールヴァーゲン」を発明
●ダイムラー・ベンツ社を設立し、高級ブランドのメルセデス・ベンツにその名を残す
ドイツ人カール・ベンツは、世界で初めて4サイクルガソリンエンジンの自動車を発明し、ダイムラー・ベンツ社の基礎を築き上げた人物です。
「自動車の生みの親」と呼ばれるカール・ベンツについて、解説していきます。
●カール・ベンツのヒストリー
・1844年:ドイツ南西部のカールスルーエで誕生。機関車運転士の父親は、2歳の時事故で死去
・1860年:15歳でカールスルーエ大学機械工学科に入学し、機械工学や内燃機関を研究
・1864年:大学卒業、その後さまざまな機械工場で技術者としてキャリアを積む。
・1871年:27歳で友人と機械工作所を設立、主として2サイクルエンジンを開発
点火装置やキャブレター、クラッチ、ラジエーターなどを開発して、多くの特許を取得
・1883年:新たに産業機械を製作する会社(Benz&Cie)を設立し、据置型のガスエンジンなどを生産
・1885年:三輪自動車「ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン」を製作
4サイクルガソリンエンジンを搭載した世界初の自動車であり、翌年1886年に特許を取得
・1888年:改良を加えたモトールヴァーゲンの販売を開始
・1893年:2人乗りの4輪車の「ヴィクトリア」、翌年には「ヴェロ」を発売。その後も、貨物自動車やバスなどを開発
・1926年:ダイムラー社と合併し、ダイムラー・ベンツ社と改称
自動車のブランド名を「メルセデス・ベンツ」に統一、カール・ベンツは取締役に就任
・1929年:84歳で死去
●功績
1871年に機械工作所を創業した当初は、2サイクルエンジンの開発で実績を上げました。その後、オットーの4サイクルエンジンの特許が無効になると、4サイクルエンジンの開発に注力しました。
開発した4サイクルエンジンは、954ccの単気筒で最高出力0.89PSでした。
当時の自動車用エンジンの課題は、確実な燃料供給と点火でした。燃料の供給は、束ねた繊維を伝う毛細管現象を利用したものでした。また、点火は従来の熱管式でなく、バッテリと変圧器を組み合わせて高圧電流を発生させるシステムでした。これにより、高回転高出力を実現しました。
このエンジンを搭載した世界初の自動車が「モトールヴァーゲン」で、最高速度は20km/h程度でした。
車両は鋼管と木製で構成し、鋼鉄製のスポーク車輪とソリッドゴムタイヤでした。操舵はラック・アンド・ピニオン、手動式の後輪路面ブレーキ、動力の伝達はベルト式でした。
●エピソード
・ベルタ・ベンツはカール・ベンツの妻であり、有能なパートナーでした。
1888年に発売した世界初の三輪自動車モトールヴァーゲンで長距離走行を行い、広宣活動だけでなく、走行中の問題点のフィードバックを行い、販売促進と改良に大いに貢献しました。
・カール・ベンツが世界で初めて「ガソリンを動力にする自動車」の特許を取った1886年の同時期に、ベンツと全く面識がなかったゴットリープ・ダイムラーも同様のガソリン自動車を開発し、販売を始めました。
しかし特許を先に取得したベンツが、歴史上の「自動車の生みの親」という栄光を得ています。
・ダイムラー社はベンツ社のライバルでしたが、第一次世界大戦後の不況の影響もあり、皮肉にも両者は合併することになり、ダイムラー・ベンツ社となりました。
カール・ベンツは、自分自身は叩き上げの現場人で、どんな嵐にも負けずに這い上がった人間と評しています。世界の発明者に共通するのは、単なる机上の研究でなく、何よりも現場を大切にすることです。
残念ながら、1998年にダイムラー・ベンツ社の社名からベンツの名は消えましたが、今もメルセデス・ベンツという名で高級車のブランドとして不動の地位を確立しています。
(Mr.ソラン)