■1カ月の開発期間で実現。製造は最長でも3日
先日、フェイスシールドのフレーム製造を発表したマツダが、今度はCX-8を用いた新型コロナウイルス感染症軽症患者等向け搬送車両を製作し、広島県に提供することを発表しました。
このクルマはCX-8をベースに、新型コロナウィルスに感染しているものの症状が軽い患者や、感染が疑われる人を搬送するためのもの。マツダでは開発陣を保健所などに派遣し、現場で困っていることを反映するという、まさに求められるものを製造する手法で開発を行いました。
それまでの医療現場では、あり合わせの透明フィルムなどを使って前後席の分離を行っていたましたが、しっかりした分離ができないこと、前後席で空気の入れ替わりが生じたりする可能性があること、隔壁により前後席での会話がしづらいこと、後方視界が遮られることなどが問題とされていました。
そこでマツダでは前後をしっかりと分離できるようにFRPの隔壁を設置、その隔壁には大型の窓を取り付けることで後方視界を確保することにしました。
車載の空調に加えて、追加架装の後方排気システム(リヤベンチレーション)を採用することで前席を陽圧、後席を陰圧とすることで後席から前席への空気の流入を抑制しています。
すべてのフロアマットをラバー(ゴム素材)にすることで、除菌や清掃のしやすくしているほか、シートにビニールカバーを装備し感染者搬送後に交換することで、消毒などの作業の負担を軽減しています。
オプションとして前席と後席の人がが隔壁(パーティション)越しでもストレスなくスムーズに会話できる通話システムや、前席と後席の気圧差を確認できる差圧計なども用意されてます。
マツダはこのモデルの開発をわずか1カ月で終わらせています。製造には最長で3日ということですが、この製造日数も短縮が可能になるのではと試算しています。
価格は公開されていませんが、車両本体価格に加えて架装費がかかるとのことですが、この架装費も社会貢献ということで最低限に抑えているとのこと。さらに1台につき、10万円を広島県の新型コロナウィルス対策関連の寄付口座に寄付することになっています。
2020年6月5日より広島県に対して提供を開始、当面9台の提供が予定されていますが、今後も要望があれば対応していくとのことです。
(文/諸星陽一)