Audi SportによるRSモデルの開発と、RSを鍛えるニュルブルクリンク北コース

■すべてヨーロッパで生産されているRSモデル

2016年に日本にも導入されたスポーツブランドの「Audi Sport(アウディ スポーツ)」。開発を手掛けるドイツ本国の「Audi Sport GmbH」は「Audi Quattro(発表当初はqは大文字)」発売と同時期の1980年に設立され、数多くのモデルを展開しています。

Audi Sport
Audi SportによるRSモデル

アウディは「Audi SportによるAudi R8/RSモデル、その誕生の舞台裏」と題してニュルブルクリンク北コースでのテストや最新モデルの開発について明らかにしています。

アウディ RS 3 セダン スポーツバック
アウディ RS 3 セダン/スポーツバックの外観

アウディのカタログモデルの生産拠点は、ドイツ本国のほかベルギーやスペイン、ハンガリー、インド、中国などにあります。

一方、RSモデルは、ヨーロッパ4カ所の拠点で生産されていて、アウディ RS 3 スポーツバック、RS 3 セダン、RS 4 アバント、RS 5 クーペ、RS 5 スポーツはドイツのインゴルシュタット工場からラインオフされています。

RS 6 アバントとRS 7 スポーツバックは、同じくドイツのネッカーズルムで生産されています。

ネッカーズルム工場近郊のベーリンガーホフ工場は、Audi Sport GmbHの本拠地で、アウディ R8 クーペ/スパイダー、そしてR8のレーシングカーであるR8 LMS GT2、GT3、GT4がほぼ手作業により同じラインで生産されています。近い将来には、EVスポーツカーの「アウディ e-tron GT」の生産も開始される予定。

アウディ RS Q8
アウディ RS Q8のエクステリア

さらに、ハンガリーのジュール工場では、TT RS クーペ/ロードスター、RS Q3、RS Q3 Sportbackを生産。RS Q8は、スロバキアのブラチスラバ工場でラインオフされています。

すべてのRSモデルには、標準バージョンと共通の生産工程システムが採用され、プレスショップではアルミニウムやスチールの専用シートメタルコンポーネントが製造され(その多くはアルミニウム)、ボディショップで組み立てられています。

アウディスポーツ
ニュルブルクリンク24時間レース(2018)

■ニュルブルクリンク北コースを7分42秒253で駆けたAudi RS Q8

「Audi Sport」がそのスポーツ性能を鍛え上げるステージは、ドイツが誇る全長20.832kmのノルドシュライフェ(ニュルブルクリンク北コース)で、世界でもっとも過酷なサーキットとして知られています。アウディだけでなく世界中の自動車メーカーがテストすることで知られているほか、一般走行用のレンタカーもあります。

過酷なのは、アンジュレーションの連続、ジャンプスポット、超高速S字コーナーなどのプフランツガルテンではクルマが宙に舞い上がります。また、コースの80%以上がアクセル全開区間であることも特徴。

このサーキットで8,000kmを走行すると、通常のクルマの生涯の走行距離に匹敵するそうです。常に高い負荷がかかるノルドシュライフェは、あらゆるスポーツカーの指標となるテストコースとしてよく知られていて、ニュルブルクリンクのテストに合格すれば、世界のどこに行っても通用するクルマに仕上がることを意味します。

「Audi Sport GmbH」は、ニュルブルクリンク北コースを世界最高の開発およびテストコースであると考えているそうです。

アウディスポーツ
フランク スティップラー(写真右)

「Audi Sport」のテストを担当するフランク スティップラーはニュルブルクリンクのあるアイフェルに住む45歳。ニュルブルクリンク北コースのエキスパートで、アウディは彼を世界でもっともこのコースを熟知するレーシングドライバーと評しています。

2012年のスパ・フランコルシャン24時間レースやニュルブルクリンク24時間レース(2012年と2019年)での総合勝利などをはじめ、「Audi R8 LMS GT3」が2009年にレースデビューして以来、ワークスチームの一員でもあります。

エンジニアリングとしての知見も豊富で、カスタマースポーツ レーシングカー、市販のスポーティモデルの開発でも、スティップラーなしでは考えられない存在だそう。

もちろん、Audiのハイパフォーマンスモデル、RSやR8の開発でも同様。とくにR8は、2019年にビッグマイナーチェンジを受け、クーペとスパイダーに加えて、後輪駆動のR8 V10 RWDへと進化を果たしています。

アウディスポーツ
アウディRS Q8のフロントマスク

さらに2019年秋には「Audi RS Q8」を駆り、ノルドシュライフェのラップタイム更新にチャレンジしています。そのタイムは、7分42秒253でSUVカテゴリーのラップタイムを一気に12秒も更新したそう。

新記録樹立は開発作業の主目的ではないものの、アウディが誇るもっともスポーティな“Q”モデルの、力強いダイナミズムが証明されたと位置づけています。

Audi Sport GmbHマネージングディレクターのオリバー ホフマン氏は

「すべてRSモデルは、ここで少なくとも8,000kmのテストを実施しています。ノルドシュライフェでは、もっとも過酷な条件の中、各パーツの耐久性をはじめ、サスペンションのセットアップを徹底的につめていきます。RS Q8はスプリング、ショックアブソーバー、ESPのセットアップ、ロールスタビリティ、スポーツディファレンシャルの特性の確認が主なテスト項目でした」

とコメントしています。

アウディスポーツ
「アウディ e-tron GTコンセプト」

Audi Sportは、現時点で合計12のRSモデルラインナップ(アウディ RS 3 スポーツバック/セダン、RS 4 アバント、RS 5 クーペ/スポーツ、RS 6 アバント、RS 7 スポーツバック、TT RS クーペ/ロードスター、RS Q3、RS Q3 スポーツ、RS Q8)がリリースされています(日本未導入含む)。

また、アウディ RS 6 アバント、RS 7 スポーツバック、RS Q8には、48Vハイブリッドシステムが採用されるほか、V8 TFSIエンジンには、パーシャル域で特定のシリンダーの作動を休止するシリンダーオンデマンド(COD)システムが導入されています。

スポーツ性能だけでなく、電動化時代の今後のRSモデルにも期待が高まります。

(塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
続きを見る
閉じる