高齢の家族がいる人におすすめ。 車高が高くても乗り降りが楽な「電動回転シート」付きミニバン・SUV

■車外の低い位置までシートが自動で移動

少子高齢化が進む中、問題となっているのが高齢者の移動手段。特に最近は、普段車いすまでは使っていなくても、足腰が弱ったことでバスや電車などの公共交通機関での移動が大変だという高齢者も増えています。

同居しているご両親などにそういった高齢者がいる家庭にとって、悩みのひとつがクルマの乗り降り。

家族が4人以上いる場合は、クルマの選択肢としてミニバンやSUVなどを選ぶことも多いですが、それらの車両は車高が比較的高いため、足腰が弱った高齢者にはシートに座ることすらひと苦労だったりします。

そこでおすすめしたいのが、助手席や後部席が「回転するタイプ」の福祉車両。福祉車両というと「障がい者向け」といったイメージがありますが、回転シートタイプは、高齢者の方の乗り降りを楽にすることも考慮して開発されています。

福祉車両
トヨタ・ヴォクシー サイドリフトアップチルトシート装着車

回転シートタイプは、昨今セダンやコンパクトカー、ミニバンなど様々なモデルに採用されていますが、ミニバンやSUVの場合はリモコンで簡単に動かすことができる電動シート式が主流。

高齢者でも乗りやすい位置まで自動で回転しながら車外にせり出し、乗った後も自動で車内に収納される方式が多く、とても便利です。

●ミニバンには助手席式と2列目シート式がある

たとえば、トヨタの7人乗り/8人乗りミニバンで、兄弟車のノアとヴォクシーの場合。

同社ではウェルキャブという福祉車両のブランドに、助手席が自動で回転しながら車外にスライドダウンする「助手席リフトアップシート車」を設定。電動回転シートには折りたたみ式フットレストなども装備されているため、足腰が弱い高齢者の乗り降りも非常に楽になっています。

福祉車両
トヨタ・ノア 助手席リフトアップシート装着車

また、ノアやヴォクシーには、2列目シートの助手席側が電動で外にせり出る「サイドリフトアップチルトシート車」もあります。助手席回転タイプに比べ、シートがあまり車外に出ないため、隣にクルマが停車している場所でも乗り降りがしやすく、また雨の日でもシートが濡れにくいのが特徴です。

福祉車両
トヨタ・ノア サイドリフトアップチルトシート装着車

ミニバンでは、日産・セレナの8人乗り仕様車にも「助手席スライドアップシート」を設定。同社のライフケアビークルという福祉車両ブランドにラインアップされています。

福祉車両
日産・セレナ 助手席スライドアップシート

こちらも、操作はワイヤレスリモコンを使って簡単にできます。シートは、ひざを曲げる角度がきつくないため、足を曲げることが辛い高齢者でも快適な着座姿勢が取れるのが特徴。同じくフットレスト付きです。

●SUVにも助手席回転シート付き

一方、最近はSUVタイプでも同様の回転シートが採用されているモデルがあります。たとえば、マツダのCX-5や日産のエクストレイル。

福祉車両
マツダ・CX-5 リフトアップシート車

また、スバルでもレガシィアウトバック、レヴォーグ、XVなどに、ウイングシートというオプションを設定。

福祉車両
スバル・XV ウイングシート装着車

いずれも助手席が電動で回転して車外に出て、乗り降りを楽にする装備です。これらはリモコンでの操作が可能。シートが自動で車外に出るだけでなく、自動で車内に戻る仕様となっているのも同様です。

●スロープ式より安い

福祉車両には、クルマの後部にスロープで車いすを載せるタイプもありますが、回転シートタイプなら比較的リーズナブルです。

両タイプを設定するトヨタのヴォクシーでは、車いすが載せられるスロープが付いた「車いす仕様車」は、314万3000円〜318万4000円。

福祉車両
トヨタ・ヴォクシーウェルキャブ車いす仕様車

一方、「助手席リフトアップシート車」は288万円〜308万8000円。「サイドリフトアップチルトシート車」は294万4000円〜312万4000円。車いす仕様車と比べ、価格設定は安くなっています。

福祉車両
トヨタ・ヴォクシー助手席リフトアップシート装着車

また、福祉車両は、税制上の優遇措置もあります。

1:車いすと車いすの方を載せられる自動車
2:体の不自由な方が運転できる自動車

といった、いずれかの要件を満たした装置がついていると、車両購入時に消費税が非課税になります。加えて、毎年支払う自動車税が減免されるほか、購入資金の貸与など各種の助成制度も利用できます。

福祉車両
福祉車両は、購入時の消費税が非課税になるなど優遇措置がある

これらは、いわゆるスロープ式だけでなくメーカーが「福祉車両」として販売している回転シートタイプも同様。また、装置を使わなくなった場合に、スロープ式に比べ普通の車両としても乗り続けやすいといったメリットもあります。

ご家族に高齢の方がいらっしゃる方は、ぜひこういったクルマも検討してみて下さい。

(文:平塚直樹/写真:トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、スバル)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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