クルマを乗らない期間、保険の休止ってできる?【保険/車検のミニ知識】

●自動車保険の等級はクルマが無くても10年保存できる。中断証明書を忘れずに

複数台持っていたクルマの保有台数を減らしたり、クルマを所有していたが引っ越しなどによりクルマが必要なくなった時、自動車保険の契約はどうしますか?

単純に解約してしまうと、せっかく育てた自動車保険の等級がクルマと一緒に無くなってしまいます。クルマは無くとも自動車保険の等級は保持することができます。

その方法が中断証明書の発行です。今回はクルマの保険手続きの中で忘れがちな、中断証明書の発行について、その方法やメリットをご紹介していきます。

・自動車保険の契約数はクルマの数だけ存在する

過去に一度に所有していたクルマの数で最も多い台数は何台ありますか。自動車保険の契約本数は、その台数と同じになります。自動車保険の契約は人の数ではなく、クルマの台数に応じて増えていき締結されるもので、それぞれのクルマごとに等級が与えられています。

自動車保険
自動車保険の契約本数は、同時に保有していたクルマの台数と同じです。クルマを減らすタイミングで余った保険は、適切に保管する必要があります。

自動車保険の保険料をお得にするテクニックとして、クルマを増やしたり減らしたりするタイミングで、そのクルマにかかっている自動車保険の等級を入れ替えることが可能になり、効率的に割引率の高い保険を使って優位に働く契約を生かすというものがあります。仮にクルマの台数を減らすとなった時には、余ってしまった保険契約は解約ということになるでしょう。

しかし、余ってしまって使わなくなったとはいえ、等級を育てた保険を捨ててしまうのはもったいないですね。また、今すぐに使わなくても後々クルマの台数を増やす時が来るかもしれません。そんなときに、一つでも二つでも等級の進んだ保険契約を残しておければ、新規で加入するよりも安く自動車保険に加入することができるのです。

・余ってしまった保険契約では、解約と同時に必ず中断証明書を発行すべし

自動車保険では保険契約を解約しても自分が持っていた等級を維持して、何年後かに所有する次のクルマのために残しておくことができます。一般的に保険契約は解約してしまうと、契約内容も保険料も次に契約するときには同じ契約にはなりません。

生命保険や医療保険などは若い年齢で加入すると保険料が安く、一度解約して何年後かに入りなおすと年月を経過した分年齢が高くなり、保険料は上がってしまいます。

自動車保険では解約から10年間に限定されますが、進めた等級をそのまま持ち続けることが可能です。解約した自動車保険契約が、どこまで進んでいたのかを対外的に証明する方法があり、それが中断証明書という書類で行われます。これは、自動車保険を解約する際に保険会社に依頼し、発行してもらう必要があります。

中断証明書を発行するには3つの書類が必要となります。保険会社からもらう「専用の発行依頼書」、今まで自分が使っていた保険証券である「解約する自動車保険の証券(コピーでも可)」、そのクルマがもう手元にないことを証明する書類の「名義の変わった車検証」「売買契約書」「登録事項証明書など」です。

自動車保険を解約する際に同時に受け付ける保険会社が多いので、自動車保険の解約の際には必ず中断証明書を発行しましょう。親切な保険会社では中断証明書の発行について、解約時に案内してくれることも多いです。

中断証明書発行依頼書
自動車保険の解約の際には、解約申込書とセットで、中断証明書発行依頼書を出すという意識を持っておきましょう。

・中断証明書の発行を忘れてしまっても一定期間ならあとから申請できる

中断証明書の発行を解約時に忘れていたり、そもそも中断証明書の存在を知らずに解約をしてしまった場合でも、解約をした日もしくは満期日で自然に終了した場合は、その満期日から13か月以内であれば中断証明書の発行手続きを行うことができます。

まだ申請を行える時期であれば、忘れずに発行を依頼しましょう。

中断証明書
中断証明書には、「等級」「消化していない事故の内容」「有効期限」などが記載されています。

この中断証明書ですが、等級が7等級以上でないと発行できません。この理由としては、新規に自動車保険に加入すると6等級からスタートするので、それ以上低い等級では等級を維持するよりも新しく自動車保険に入りなおしたほうが保険料が安くなるためです。

あえて低い等級を長い間持ち続けようとする方は少ないと思いますが、7等級以下では中断証明書発行申請は受け付けられませんのでご注意ください。

また、中断証明書を発行してから長い年月が経ち、発行したことは覚えているのに肝心の証明書が見つからない場合には、以前に加入していた保険会社に中断証明発行の確認を取りましょう。中断証明書の発行をしていることが確認できれば再発行することは可能です。

当時の保険契約者名や住所、クルマのナンバーなどで過去の発行歴を照会します。仮に、解約した保険と新しく契約する保険が同じ保険会社の契約でしたら、中断証明書の原本を紛失していても、10年以内の再契約であれば維持していた等級での再開が可能です。

・まとめ

新型コロナウイルスによる外出自粛要請が広がり、遠方にクルマで移動するという機会が減る中で、一度クルマを手放そうと考えるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

自動車保険の等級は1年に1つずつしか進まないもので、長い期間育ててきた等級をクルマを手放したタイミングで失ってしまうのは、あまりにも大きな痛手です。

きちんと中断証明を行い、次のカーライフに備えて準備しておくことが大切です。

(文:佐々木 亘)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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