640馬力のハイパワー4WDは意外なほど乗りやすい 【ランボルギーニ・ウラカンEVO試乗】

■イグニッションスイッチオンとともにうなりを上げるエンジン

スーパーカーブランドのなかでもランボルギーニは、フェラーリと並んでとくにその名を知られているブランドと言えるでしょう。

ランボルギーニはミウラから始まったトップエンドモデルのV12系ミッドシップと並んで、ベビーランボと呼ばれるV8、V10系がその時代ごとに存在しています。

ベビーランボは間断なく続いているV12系とは異なり時代ごとにブランクがあります。今回試乗したウラカンはガヤルドの後継に当たるモデルで2014年からスタートしています。

ウラカン前7/3
ウエッジシェイプが光るウラカンのエクステリア

試乗車はウラカンの最新、最進化版のEVOと言われるモデルで、5.2リットルのV10エンジンを搭載。最高出力は640馬力・最大トルクは600Nmにもなります。

この強大なパワーは4つのタイヤに振り分けられるフルタイム4WDで駆動されます。ウラカンのエンジン始動は、センターコンソールにある赤いカバーを持ち上げ、イグニッションスイッチを押すというもの。こうした儀式的手順を踏ませるところもなんともにくい演出と言えます。

ウラカン リヤ7/3
ミッドシップマシンらしいリヤスタイル
ウラカン 真横
ガラス面積はかなり少ない

アクセルペダルに足が触れていなくても、エンジンが始動した瞬間、そのもてるパワーを誇示するかのように一度「グワン」とうなり声を上げて回転が上昇します。この咆哮とも言えるエキゾーストノートは早朝の住宅街ではちょっと困った設定かも知れません。

パドルシフトを使ってギヤを1速に入れ、アクセルをグッと踏み込めば怒濤の発進加速を味わうことができます。4輪に振り分けられたトルクは、じつに安定した状態で駆動力を路面に伝えてくれます。圧倒的な加速感と絶対的速度さえ受け入れることができれば、運転は難しくはありません。

ウラカン正面
ランボルギーニらしい直線が効いたデザイン
ウラカン真後ろ
ナンバープレートの横に排気管を装備

スーパーカーの運転には高度な運転テクニックが必要だと言われたのは遠い昔のことで、現代のスーパーカーはじつにイージーです。

ウラカンには一般道用モードの「ストラーダ」、ワインディングなどを楽しむ「スポーツ」、サーキット向けの「コルサ」の3モードがありますが、「ストラーダ」を選びアクセル操作をゆっくり行えばじつに普通に走れてしまうのです。

初期のランボルギーニ2ペダルMTは、ギクシャクしていて使いにくかったのですが、現代ではそうした心配は皆無です。限られた時間での試乗で、コーナリングパフォーマンスなどを試すまでには至りませんでしたが、安定感は高く素直な動きを垣間見せてくれました。

ウラカンインパネ
メカニカルなインパネ
ウラカンシート
ホールド感に優れたシート

ここまで乗りやすいのはランボルギーニがフォルクスワーゲングループに属し、このウラカンはアウディR8と深い関係を持ちながら開発されたからと言っても過言ではありません。

乱暴な言い方をしてしまえば、ウラカンとR8は中身は同じで外装や味付けが違うという関係なのです。R8の持つ安定的な性能を元に、ランボルギーニが求めるイタリアンテイストを盛り込んだモデル、それがウラカンだといえます。

ウラカンエンジン
力強いデザインのV10エンジン
ウラカン ボンネット下
フロントのボンネット下にはそこそこの容量のラゲッジルームを備える
ウラカンメーター
液晶メーターながらアナログの良さを引き出すデザイン

(文・写真/諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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