69年も続く国産SUVの王者! トヨタ「ランドクルーザー」の歴史を振り返る

■1951年の初代から世界で1千万台以上を販売した「陸の王者」

クルマ好きはもちろん、そうでない人も一度は名前を聞いたことがある(であろう)国産車の代表格のひとつが、トヨタ・ランドクルーザー。

誕生から69年を経て、いまなお世界中で売れ続けている国産最強のSUVについて、ここではその歴史を解き明かしてみましょう。

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2015年にマイナーチェンジを受けた現行の「200系」ランドクルーザー

●3つのモデル系譜を持つランクル

近年人気が高いSUVの中でも、ひと際存在感を放つのが「ランクル」の愛称でおなじみのトヨタ・ランドクルーザーです。

1951年に登場した初代からの累計販売台数が2019年には1千万台を突破。いまでは世界で約170国もの地域で販売、年間販売台数は37.9万台(2018年実績)という、まさに国産SUVの王者と呼ぶにふさわしいクルマといえます。

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世界の様々な道を走り抜ける高いオフロード性能が人気のモデル

ランドクルーザーの歴史を紐解く前に、シリーズのモデル系譜を以下に紹介しましょう。

●ヘビーデューティ系統
トヨタ ジープBJ型
ランドクルーザー20系/40系/70系

●ステーションワゴン系統
ランドクルーザー50系/60系/80系/100系/200系

●ライトデューティ系統
ランドクルーザー70系ワゴン/70系プラド/90系プラド/120系プラド/150系プラド

上記のように、ランドクルーザーには、大きく分けて3つの系統があります。また、後述しますが、ほかにもレクサスブランドから高級仕様も発売されています。

これらの元祖が1951年に誕生したヘビーデューティ系のジープBJ型です。

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ランドクルーザーの初代、1951年の「トヨタ ジープBJ型」

このモデルは、もともと当時のアメリカ占領軍と警察予備隊(自衛隊の前身)向けに開発された車両です。小型トラックSB型用のシャシーを四輪駆動用に改め、3400cc・6気筒のB型ガソリン・エンジンを搭載しました。

当時のクルマとしては高い走行性能を示しましたが、残念ながら正式採用されたのは、三菱自動車が製作した「三菱・ジープ(北米ウィリス・ジープのライセンス生産車)」。これを契機に、ジープBJ型は民生用に転換し、1953年から量産が開始されました。

当初は「トヨタ ジープBJ」の名前で販売されていましたが、「ジープ」はアメリカのウィリス オーバーランド社が商標権を持っていたため、1954年6月に車名を「ランドクルーザー」に変更。その卓越した走行性能で、後にその名を世界に轟かせる「LAND CRUISER(ランドクルークルーザー)の名前はこの時に付けられたのです。

初代の成功を受け、より民間向けに開発されたのが1955年11月に発売された2代目「20系」です。エンジンは初代から引き継いだ3.4L・6気筒(B型)と、初代末期に消防仕様車に搭載した3.9L・直列6気筒(F型)の2機種を用意。1956年の途中からF型に一本化されています。

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1955年発売の2代目ランドクルーザー「20系」

軍用車として作られた初代に比べ、かなり乗用車に近づいたフォルムが与えられ、これが大成功。ボディにはソフトトップ、ピックアップ、2ドアバン、4ドアバン、消防車などが設定されました。

また、この2代目から、北米をはじめ海外への本格的な輸出も開始され、トヨタの世界進出にも大きく貢献しました。

●世界的に大ヒットとなった「ヨンマル」

20系の後継として1960年に登場した「40系」は、24年間ものロングセラーになったモデルです。当時の世界的な「クロスカントリー車」人気も後押しして、その信頼性の高さから多くの国々で大ヒット。「40(ヨンマル、forty)」の愛称で親しまれました。

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1960年発売の「40系」

ボディには、2代目と同様にソフトトップ、2ドアバン、4ドアバン、ピックアップ、消防車を設定。1967年には、4ドアバンの代わりに、専用ボデーのステーションワゴン「FJ55(50系)」を新設し、後のステーションワゴン系の元祖となります。

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1967年に発売され、後のステーションワゴン系統の元となった「FJ55」型

加えて、1973年には3.6L・6気筒、1974年には3.0L・4気筒の各ディーゼルエンジン車も追加されています。

1980年には、海外市場を強く意識したデザインで外観を一新した「60系」が登場します。海外向けはステーションワゴン、日本国内向けはバン(商用車)カテゴリーで販売されました。

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1980年に発売された「60系」

ガソリンエンジンは排気量を4.2Lに増やして性能を向上した2F型を採用。加えて、新たに3.4L・ディーゼルエンジンもラインアップに加わりました。さらに、1982年には3980cc・6気筒ディーゼルが追加されたほか、後期モデルにはターボやEFIなどのハイパワーエンジン搭載モデルも登場しました。

一方、ヘビーデューティ系統では、1984年に60系と併売で、40系の後継となる「70系」が登場。スタイルは40系のイメージを継承、ボディには従来の幌タイプやバンタイプに加えてFRPトップ車も設定しています。

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ヘビーデューティなスタイルの「70系」は1984年に発売

また、1985年には、70系のショートボディをベースとしたワゴンタイプの「ランドクルーザー・ワゴン」も登場。後のプラドへと続くライトデューティ系統の元祖となります。

ヘビーデューティ
1985年には後のランドクルーザー プラドの元祖となる70系の「ランドクルーザー・ワゴン」が登場

なお、この70系は、国内では2004年に販売が終了されましたが、海外専用車としてその後も生産を継続し、30年にわたって作られたロングセラーモデル。

2014年には、その生誕30周年記念モデルが、期間限定ながら国内でも販売され話題となりました。

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2014年には、70系の復刻版が国内でも販売され、多くのファンの注目を集めた

●1980年代から高級SUV路線へ

1980年代後半から国内では、基本的にステーションワゴン系統とライトデューティ系統の二本柱になります。

ステーションワゴン系統では、1989年に60系の後継として「80系」が登場。ランドクルーザーが、現在のような高級SUVとなった源流ともいえるモデルです。

ワゴンモデルには4.0L・直列6気筒ガソリンエンジン、バンモデルには新規開発の4.1L・直列6気筒ターボ・ディーゼルエンジンを搭載。1992年にはガソリンエンジンを変更、4.5L・直列6気筒を搭載しました。

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高級SUV路線の走りとなった「80系」

また、1996年には、主に北米などの専売モデルとして、80系をベースとした「レクサス ・LX450」が登場。現行の「LX570」やプラドのレクサス版「GX」シリーズへと続く、ランドクルーザーがベースのレクサスブランド車の初代モデルです。

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1996年にレクサスブランドで発売された「LX450」

その後、ランドクルーザーは1998年に80系の後継モデル「100系」へ進化、2007年には現行モデル「200系」が発売され、現在に至ります。

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1998年に登場した「100系」ランドクルーザー

一方、ライトデューティ系統は1990年にランドクルーザー・ワゴンの後継となる「ランドクルーザー プラド(70系)」が登場。プラドは、その後も1996年に発売された「90系」、2002年に「120系」、2009年に現行モデルで4代目の「150系」と進化を遂げました。

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1990年発売の「70系」ランドクルーザー プラド

●脈々と続く4WD性能の高さが人気の秘密

現在のランドクルーザーは、80系以降、快適性も重視したハイエンドSUVとして進化しています。

特に現行の200系では、上級グレードに上質なナッパーレザーのシートやステアリングヒーター、最新の通信サービスでリアルタイムのナビ情報などが取得できるT-コネクト(オプション)、トレイ内にスマートフォンを置くだけで充電可能な機能などを装備。

また、歩行者や車両との衝突回避を支援するプリクラッシュセーフティなど、最新の安全装備を搭載しています。

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200系ランドクルーザーのラグジュアリーなインテリア

ですが、それだけでなく、はやり卓越した走行性能を合わせ持っているのが、今でも世界中で人気を得ている秘密です。

オンロードでの安定した走りはもちろん、いざというときはオフロードでもその威力をいかんなく発揮する。中近東の砂漠や北米の広大な荒野、中南米の荒れた山道など、どんな道路状況でも走派できる秀逸な4WD性能。

時代は変わり、技術がいかに進歩しようとも、初代から脈々と続くそのコンセプトを受け継いでいるのが、70年近く世界で愛され続けている大きな理由なのです。

(文:平塚直樹/写真:トヨタ自動車)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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