カングーにそっくり!と思ったら、想像以上に大きさも中身も違ったフランス生まれのMPV【シトロエン・ベルランゴ試乗記】

■ルノー・カングーと走りのテイストは異なる!?

シトロエンのMPV「ベルランゴ」は、1回目は予約開始からわずか5時間半で完売になり、2回目の予約注文も即埋まってしまいました。2020年の第3四半期には、カタログモデルの発売も予定されていて、2回のチャンスで購入できずに心待ちにしている方も多いはず。

シトロエン ベルランゴ
シトロエン・ベルランゴ「デビュー・エディション」のエクステリア

同じフランス生まれのMPVとして、ルノー カングーと比較されることが多いベルランゴですが、目の前にするとひと回り大きく感じます。

実際に全長4280×全幅1830×全高1810mmというサイズのカングーに対して、ベルランゴは全長4405×全幅1855×全高1840mmと、より長くて背も高くなっています。また、車両重量は1590kgで、カングーの1450kg(ゼン/EDC)よりも140kg重くなっています。

なお、ベルランゴの兄弟車であるプジョー・リフターは今年の夏に日本上陸の予定となっています。

■ディーゼルらしいトルク感と8ATの仕事ぶりが良好

ベルランゴに搭載されるエンジンは、1.5Lディーゼルターボ。トランスミッションは、アイシン・エイ・ダブリュとの共同開発による電子制御8速ATの「EAT8」。最高出力130PS/3750rpm、最大トルク300Nm/1750rpmというスペック。

ディーゼルエンジンらしく、中・低速域のトルク感があり、高速域のパンチ力もなかなか。8ATの変速マナーは、超スムーズではないものの、欲しい加速を引き出す際も瞬時にギヤを落としてそつなく仕事をしてくれます。

なお、特徴的なダイヤル式シフトや電動パーキングブレーキの操作性も良好で、運転席まわりで慣れが必要なのは、後述するアダプティブクルーズコントロールのレバーくらいでしょうか。

シトロエン ベルランゴ
シトロエン・ベルランゴのリヤビュー

もちろん、飛ばして走るようなキャラではないので、それほどの速さは必要ありませんが、実用エンジンとして不足のない動力性能を確保。

4人家族で荷物を満載してキャンプなどに出かける際も頼りになる存在で、また高速道路での巡航も難なくこなすのは、バカンスの国生まれだと実感できます。試乗車には、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシストなども備わっていて、ロングドライブも容易にこなしてくれます。

シトロエン ベルランゴ
試乗車のタイヤは、ミシュラン「エナジー セイバー +(プラス)」で、サイズは205/60R16

一方、ワインディングなどでのコーナリングは、その見た目どおりゆったりとしていて、俊敏に向きを変えるような回頭性ではありません。

しかし、丁寧に荷重移動を意識しながら運転するのが心地よく、高負荷のコーナリング、急ブレーキをかけないかぎり、意外と粘っこい足まわりなのも好感が持てます。ロール剛性は思ったよりも高いのが「粘り」に感じられるのかもしれません。

一方で、低速域ではコツコツとした乗り味を示し、荒れた路面だと上下に揺すぶられる感じも顔を出します。

シトロエン ベルランゴ
ベルランゴのフロントシート

運転席に座っている限りシートの減衰性の高さも含めて不快さはありません。空荷と荷物を積んだ際の振る舞いが違うのは当然で、荷物を積んだときリヤの落ち着き具合からしても積載時のセッティングに重きをおいているのかもしれません。

シトロエン ベルランゴ
シトロエン・ベルランゴのリヤシート

また、広大なウインドスクリーンを備えるベルランゴの遮音性は、高速道路で流れに乗る程度であれば、比較的平和という印象。それ以上飛ばすと、風切り音やロードノイズも高まりますが、乗用車として使える快適性は十分に担保されています。

シトロエン ベルランゴ
シフトはダイヤル式で、操作性は良好

カングーよりも実際にひと回りくらい大きく(長くて背が高い)、140kg重いこともあって、見た目よりも軽快に走るカングー(とくにMT車)とは少しキャラも異なりますが、フランスのMPVらしい心地良さ、仕上がりの高さは魅力的。

なお、デビューエディションの価格は325万円でした。カタログモデルに複数グレードが用意されるのかなど、バリエーションや価格設定はまだ明らかにされていませんが、今後購入を検討している方の目安にはなるでしょう。

(文/写真 塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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