目次
■道路運送車両法の保安基準で自動車の設計/製造の技術要件を、道路交通法で交通ルールを規定
●保安基準不適合のメーカー責任の不具合はリコール発動、道路交通法を守らなければ交通違反
自動車に関する法律は、「自動車交通の安全確保」と「公害防止」、「交通事故被害者の救済等」を目的に制定されています。それぞれの目的に応じて、いくつかの法律が制定されていますが、なかでも道路運送車両法と道路交通法がそれらの中核となっています。
知っておくべき自動車に関する法律について、解説していきます。
●道路運送車両法とは
クルマに関連する法律はいくつかありますが、もっとも重要なのは道路運送車両法で1951年に制定されました。
道路運送車両法は、自動車や原動機付き自転車、軽車両などの自動車運送車両について、以下の内容を規定しています。
・所有権の公証制度
・安全性を確保するための保安基準
・保安基準を維持するための定期点検整備など自主的整備の規定
・車検方法や車検証の有効期間などに関する事項
・軽自動車検査協会の設置および管理、運営に関する事項
・自動車の整備事業に関する規定
●道路運送車両法の保安基準とは
保安基準は、道路運送車両法で定められた技術基準で、安全確保と公害防止などの観点から、自動車の設計製造のための各種の要件を規定しています。
保安基準の要件は、クルマの構造、装置、乗員定数/最大積載量に分類されています。
・第40条)保安基準に規定されている構造
車両の長さと幅および高さ、最低地上高、車両総重量、車輪にかかる荷重、最小回転半径など
・第41条)保安基準に規定されている装置
原動機および動力伝達装置、車輪および車軸、操縦装置、制動装置、エアバッグ、燃料装置および電気装置、灯火装置、マフラーなど騒音防止装置、排ガス低減のためのばい煙防止装置など
・第42条)乗員定員または最大積載量
保安基準に適合しないと、自動車メーカーはクルマの製造、販売ができません。ユーザーが継続して使用するためには、保安基準に適合して車検を通さなければいけません。
また、保安基準に適合できないような改造や整備不良で走行すると、違法で検挙されます。
●道路交通法
道路交通法は、クルマや自転車に乗る人も歩行者も、道路上を安全かつ円滑に走行、歩行できるようにするための法律です。道路での事故やトラブルを防止して、安全でスムーズな交通状態を実現するのが目的です。
道路交通法には、次の規則が規定されています。
・歩行者の通行方法
・車両および路面電車の交通方法
・運転者および雇用者などの義務
・道路の使用
・自動車および原動機付自転車の運転免許
・講習
・反則金制度
●リコールとは
リコールは、工業製品全般の不具合、事故を未然に防止する目的で1969年から始まった制度です。道路運送車両法の環境・安全に関する保安基準に適合してない、あるいは適合しなくなる可能性があり、その原因が設計または製造過程にある場合(製造者責任)に、その旨を国交省に届け出て自動車メーカーが責任をもって無償で回収、修理する制度です。
国産車だけでも毎年200件以上がリコールを行っています。リコールするかどうかは、次の3つの要件を基準に判断されます。
・保安基準不適合
・設計または製造過程での不具合が原因
・多発性
●PL法
不具合、欠陥による事故を未然に防ぐのがリコール制度であり、発生した事故に対してメーカーに損害賠償責任を求めるのがPL(product liability)法です。
損害賠償を得られるためには、次の3つの条件を明確にしなければいけません。
・クルマに欠陥がある
・欠陥によって生命や身体、財産などに損害を受けた
・損害の原因がクルマの欠陥である
実際には、3番目の欠陥と損害の因果関係を証明するのが難しく、PL法を成立させるのは非常に難易度が高いです。
クルマは保安基準に適合していなければ、公道を走行できません。またドライバーは、道路交通法の走行規則を守らなければ、交通違反として罰金などで処罰されます。
本章では、クルマに関わる法律について、詳細に解説していきます。
(Mr.ソラン)
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