■安心して移動する手段として、ひそかに「マイカー」が再評価されている?
COVID-19(新型コロナウイルス)の収束が見えない状況が続いています。人から人への感染を防ぐためにに密閉・密集・密接の「3密」を避けようといっていましたが、さらに一歩進んで「他人との接触を8割減らす」ことによって二次感染を防いで、新型コロナウイルスの流行を制御しようというフェイズになっています。
手段と目的が入れ替わっているキライもありますが、外出しないことが大事なのではなく、接触機会を減らすことが目的です。
ですから、健康維持のために散歩などの軽い運動をすることは否定されていませんし、買い物や通院なども認められているのです(もちろん、接触機会を減らすための最低限にする努力は必要です)。
そうした状況の中、マイカーに対するニーズが高まっているという話が聞こえてきます。接触機会を減らしながら移動するためにはマイカーは有効だからです。そのため、すぐに乗れる中古車販売は忙しくしているという話も聞こえてきます。
このタイミングで中古車を買うという行為の是非は別として、これまで公共交通機関やカーシェアリングを利用すればいいと嘯いていた人たちも、自分や家族しか使わない移動手段であるマイカーの価値を再発見しているのでしょう。シェアリングエコノミーが叫ばれてきましたが、新型コロナウイルスの流行によりマイカーニーズが高まっています。
これは一過性のことかもしれません。しかし、新型コロナウイルスの危機を乗り切れば未知のウイルスは二度と現れない…とはいえません。これまでモビリティにおけるパーソナルスペースは、かなりタイトな状態が認められてきましたが、それが許容できないと感じる人々がマイカーに回帰していくことが予想されます。
奇しくも、2020年4月から保安基準の改正によって量産車において自動運転テクノロジーの実装が認められるようになりました。まだまだ完全自動運転には時間がかかるでしょうが、自動運転テクノロジーが進化していけば、より安心にパーソナルスペースを確保した移動が可能になります。未来のクルマには、そうした安心・安全なモビリティとしての機能がより強く求められることでしょう。
新型コロナウイルスによって生産ラインが休止したりと自動車産業は厳しい状況に見えますが、クルマ社会のミライは明るいといえるかもしれません。
現状で経済活動が止まってしまっていることを不安に思う気持ちはあるでしょう。しかし、目先の経済活動を優先して接触機会を増やしてしまうと、かえって収束までの時間がかかってしまい、さらに経済は疲弊します。可能な限り、早く収束するようにすべての人が接触機会を減らして、収束を早めることが、明るい未来を引き寄せるには必要なのです。
(自動車コラムニスト・山本晋也)