異臭の発生とは?ガソリン(軽油)臭と排ガス臭は危険のサイン!【自動車用語辞典:トラブル編】

■最悪の事態は、ガソリン漏れによる車両火災、排ガス漏れによる有害ガス中毒

●代表的な異臭は、ゴムや樹脂が焦げる臭い、ガソリン(軽油)臭い、鼻をつくような排ガス臭

クルマから発生する異臭は、異音と同様何らかの不具合や故障の前兆です。異臭によって、どこでどういう問題が発生しているか予測できれば、重大な故障やそれに起因する事故を防ぐことができます。

クルマの異臭が、どこからどのような不具合で発生しているのか、解説していきます。

●クルマから発生する異臭

通常クルマの車室内では、シートなど内装の布やプラスチック、レザーなどの臭い、車外では排気ガスの臭いがします。

クルマの異臭とは、例えば「焦げ臭い」や「ガソリン(軽油)臭い」、「鼻をつくような排ガス臭」などで、通常の臭いとは明らかに異なります。これらは、部品や機能に何らかの不具合が発生している前兆であり、放置すると重大な故障や車両火災、乗員のガス中毒を引き起こします。

異臭の発生源は、主としてエンジンと排気系、足回りですが、以下に具体的な事例について紹介します。

●エンジンからの異臭

・冷却水漏れによる甘い匂い

冷却系の配管、ホース類の接合部やガスケットの不良、ひび割れなどによってエンジン冷却水が漏れている場合に甘い匂いがします。冷却水には、凍結や腐食防止のためにエチレングリコールを含んだクーラントを使っているためです。

放置すると冷却水不足でオーバーヒートを起こしエンジンは壊れるので、早急な修理が必要です。

・ベルト類のゴムが焦げる臭い

ゴム製のタイミングベルトやオルタネーターベルト、ファンベルトなどが劣化や不具合で滑り始めると摩擦熱によってゴムが焦げる臭いがします。

ベルトの滑りの原因を調べた上で、ベルト交換が必要です。

・ガソリン臭(ディーゼルなら軽油臭)

燃料系配管の接合不良やガスケット不良によって、ガソリンが漏れているときの臭いです。引火すると、車両火災になるので非常に危険です。

すぐにクルマを停止して、クルマから離れてからサービスや整備業者などに対応を依頼してください。

●排気系からの異臭

・排ガスからのガソリン臭

何らかの原因でエンジンの燃焼が不調になると、未燃のガソリンHCが大量に排気に排出されガソリン臭がします。同時に人体に有害な無臭のCOも排出されます。

不完全燃焼の排ガスが車室内に侵入すると、CO中毒を起こし非常に危険です。早急に、エンジン不調を解決する必要があります。

・排ガスからガソリン臭やアンモニア臭、卵が腐ったような多種な臭い

触媒が何らかの原因で高温になり溶解すると、浄化してない排ガスが排出されます。大量のCOやHC、NOxが排出されるので、未燃HC(ガソリン)臭やアンモニア臭などが排出されます。

触媒が機能しなくなると、有害ガスが大量放出されるので保安基準に不適合です。

排出ガス成分
排出ガス成分

●足回りからの異臭

・タイヤからゴムの焦げる臭い

真夏の高温の路面でタイヤが摩擦熱で焦げた場合に、ゴムが焦げる臭いがします。タイヤには十分な耐熱性があるので、タイヤの損傷や空気圧不足など特別なタイヤ不良がある場合に起こります。

・ブレーキパッドから金属が焼けるような臭い

ブレーキパッドが高温になって、金属が擦れたような臭いが発生します。サイドブレーキを引いたまま走行すると、同様の臭いが発生します。

ブレーキパッドとローターを点検する必要があります。

ブレーキの構造
ブレーキの構造

一般ユーザーがクルマの異臭を感じて、どこが不調か、不具合かを特定するのは難しいと思います。

異臭の中で特に注意すべきは、ガソリン臭と排ガス臭です。ガソリン漏れは、引火すると車両火災につながる恐れがあり、また排ガス漏れは乗員のCO中毒を引き起こし、人命にかかわる重大事故になる可能性があります。

異臭を感じたら、すぐにサービスや整備業者に見てもらうのが安全です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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