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■赤外線カメラを使った画像解析(顔認識)によって、居眠りやわき見運転を検知
●居眠りは瞬き(瞼)の挙動から、わき見は顔や眼球の挙動から検知するのが主流
レーダーなど各種センシング技術を駆使した運転支援技術や自動運転技術の採用が急速に進んでいます。これらと並行して開発が進められているのが、運転中のドライバーの意識状態(レベル)を検知、監視するモニタリング技術です。
居眠りやわき見運転などを検知するドライバーモニタリング技術について、解説していきます。
●ドライバーモニタリングの必要性
ドライバーの意識状態、すなわちドライバーが運転に集中している状態かどうかを推定するモニタリング技術が注目され、実用化され始めました。その狙いは、2つあります。
・ドライバー自身の不注意による事故の防止
危険察知の遅れや判断ミスなど、事故直前のドライバーの状態が不適切であったことに起因する事故は多いです。ドライバーが適切に運転できる状態かを常に監視して、不適切な状態であれば、ドライバーへ注意を促して事故を防止します。
・自動運転(レベル2)中にドライバーが運転に集中しているか監視
現時点の自動運転の主流である「自動運転レベル2」では、運転環境の変化や何らかの問題によって自動運転から自力運転へ切り替える急な要請が起こります。そのような場合に備えて、ドライバーは自力運転に即座に戻れる状態であることが求められ、そのためにドライバー状態の監視が必要です。
●モニタリング手法
ドライバー状態のモニタリング手法としては、視線や顔の向き、姿勢を検知するカメラシステム、心拍を検知するハンドルセンサー、脈拍を検知するシートセンサなどがあります。
一般的には、トヨタやスバルなどがすでに実用化している赤外線カメラを使った顔認識によるモニタリング手法が主流です。ドライバーを赤外線カメラで撮影して、居眠りやわき見運転を検知する手法です。
赤外線カメラは、ステアリングコラムやダッシュボードに装着した例もありますが、視野確保のためにはルームミラーに赤外照明とともに装着するのが、もっとも精度が高く一般的です。
●画像処理と解析法
カメラによるモニタリングでは、ドライバーの顔画像をリアルタイムに処理して意識レベルを推定します。意識レベル、眠気の推定は顔画像の眼の瞬きから推定し、わき見は顔の向きなどの情報から検出します。
・瞬きの検出による意識レベルの推定
瞬きの検出は、眼領域を抽出した画像から、黒眼を中心とした上下瞼の動きを検出します。開眼時は上下瞼の間隔は大きく、瞬きを始めると開度は徐々に小さくなって閉眼します。
この瞬き時に発生する下向きの部分を瞬き区間とし、その幅を閉眼時間として算出します。
瞬き区間と閉眼時期から、意識レベルの低下や眠気、居眠り状態を推定します。
・わき見検知の検出
運転中のドライバーの視線を正しく検出するためには、顔の方向と目の方向を分離して検出する必要があります。
顔方向とその角度は、鼻の重心点と両眼の重心点間の距離によって、眼球の方向は眼頭と瞳孔の重心点との相対距離より算出します。
現在各社が進めている「自動運転レベル2」では、あくまでも運転についてはドライバーに責任があるため、ドライバーの状態を監視するモニタリング技術は不可欠です。
また、車室空間の快適性向上のためにもドライバーの状態を検出することは重要です。ドライバーの体調や集中力などを先読みして、空調などを制御することが期待できます。
(Mr.ソラン)