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■手作りなのでとにかく高い、台数を減らすことが開発費の削減につながる
●量産間近の試作車の公道試験では、秘匿のためにボディをマスキング
クルマは市場に投入する前に、さまざまな機能や性能、耐久信頼性の確認のため試作車を製作して試験します。開発初期の試作車の目的は機能や性能、中盤は信頼性や耐久性、後半はクルマ全体の品質の確認に重点が置かれます。
試作車の種類や役割について、解説していきます。
●試作車の役割
試作車は、大別して研究開発用の試作車と量産確認用の試作車に分けられます。
それぞれの試作車は、さらに数段階の試作車に分けられ、研究開発用であれば新技術の機能確認用や車両性能用、燃費用など機能ごとにそれぞれ試作車を製作します。
量産確認用であれば、量産仕様の図面、設備で製作する車両なので、目標性能の達成やクルマ全体の品質の確認などクルマの最終確認を行います。
試作車は量産車とは異なり、一台一台製作するのでコストは高く、特に開発初期の試作車は量産車の10倍程度のコストがかかる場合があります。したがって、メーカーはCAEを使ったデジタル開発やMBD(モデルベース開発)などを推進して、試作車台数を減らすことに注力しています。
●研究開発用の試作車
研究開発の段階では、走行性能用や燃費試験用、排ガス試験用、衝突試験用など機能ごとに専用の試作車が製作されます。試験結果は、設計にフィードバックされて改良を繰り返します。
この段階では、新作のボディは出来上がっていないので、新型エンジンを開発する場合は同等レベルの旧型ボディに搭載して、走行性能や燃費性能などの改良を行います。
開発確認車によって開発目標の達成が確認できれば、次の量産確認フェーズに移行します。
●量産確認用の試作車
量産確認段階では、量産仕様の図面と設備で製作した試作車によって、機能や性能、信頼性などを含めた品質目標のすべてが達成できているかを確認します。
走行性能やドライビングフィール、燃費、排ガス性能、安全性などを厳しい走行試験によって確認し、問題あれば設計にフィードバックして改良を繰り返します。
また、仕向け地特有の環境条件や走行条件を考慮して、現地での走行試験も行います。
●試作車が公道を走行するためには
試作車による走行試験は、初期はテストコース中心に実施しますが、本格的な走行試験となると公道を使った実地走行が必要です。
公道を走行するためには、試作車が「保安基準」に適合していることを確認後、運輸支局に「車両改造」を申請して認可を受けます。
改造部品が保安基準に適合している、エンジンを換えた場合は排ガス規制へ適合しているなどが、試作車に求められます。
量産間近の試作車は、新型のボディも出来上がっているので公道では秘匿が必要です。走行するときには、カモフラージュのためにボディラインが分かりづらいようにマスキングしたり、場合によってはボディ表面に模様付けしたりします。
時々、「○○の次期車をスクープ!」といって、情報誌にカモフラージュしたクルマが掲載されることがあります。メーカーが、宣伝目的であえてリークする場合もあるようですが。
●プロトタイプ車とは
試作車に近い「プロトタイプ車」という表現があり、原型や試作品といった意味で使われます。
試作車と同じ意味で使われる場合もありますが、あえて違いを表現すれば、プロトタイプ車とは量産車と同じボディ、スタイルの試作車、量産間近の試作車のことを指します。
新エンジンなど多くの新しい技術が採用された新型車の開発では、確認試験のために100台以上の試作車を製作することもあります。
最近は、開発費の削減や開発期間の短縮のため、CAEを使ったデジタル開発やMBD(モデルベース開発)などの活用によって試作車台数は大幅に削減されています。
(Mr.ソラン)