名車NAロードスターの極上車は今や250万円!上玉を手に入れる最後のチャンスか!?【中古スポーツカー・バイヤーズガイド】

●中古車になって相場が急落したNAロードスター

息の長いモデルでしたので、中古車市場では初期型と後期型で大きな差がありました。また過走行だったりスポーツモデルらしく修復歴があったりする個体が市場に多く出回りました。さらにATモデルが追加された結果、観光地などでレンタカーとして使われたものもあります。

1998年に2代目(NB)へ切り替わると、これらの多くが中古車市場に流れました。その結果、NAロードスターの相場は急落したのです。2000年代になると50万円以下で程度の良い個体が選べるようになり、2008年のリーマンショックにより下落が決定的になります。国内の中古スポーツカーたちは軒並み相場を下げ、NAロードスターはヒト桁万円の中古車が続出することになりました。

●NA人気が復活し、NBと中古車相場が逆転

値段が付かないクルマになってしまったNAロードスターに転機が訪れます。スポーツカー冬の時代だからこそなのでしょう、リトラクタブルヘッドライトのモデルに注目が集まるようになったのです。2010年代になって徐々に中古車相場が上がり始めました。

NAロードスター
リトラクタブルヘッドライトも人気の理由です。

筆者は過去に数回、自動車雑誌の仕事でNAロードスターの相場を調べたことがあります。2015年時点では、全国に流通していたNAロードスターの平均相場は30万円台でした。それが2018年になると、70万円台にハネ上がります。いずれも最安値は10万円台でしたので粗悪な個体は安いものの、生産されてから20年以上になった頃から良質な中古車が見直されたのです。リトラであることも原因で、2代目のNB型の相場が上がることはありませんでした。NAとNBで中古車相場が逆転したのです。

NAロードスター
NAロードスターの人気はどこまで上がるのでしょう。

●現在のNAロードスターの平均相場は140万円台

そして現在、NAロードスターの相場はジリジリと上がり続けています。今回は千葉県のオープンカー専門店、テックピット千葉寺店さんにお邪魔しました。出迎えてくれたのは吉野正弘さんです。

テックピット千葉寺店の外観。
テックピット千葉寺店の外観。
テックピット千葉寺店の吉野正弘さん。
テックピット千葉寺店の吉野正弘さん。

吉野さんに相場が上がった要因を聞きますと、マツダが始めたレストアサービスが相場を牽引している部分があるといいます。

「2018年から始まったマツダさんのレストアサービスですが、あのサービスを受けるためには、巷では250万円は必要で、フルコースになると480万円ほどにもなると言われてます。確かにメーカーさんの仕事ですし、完成したクルマを見た人はまるで新車になっていたというほどのクオリティです。でも、そこまでの金額は出せない人が多いことも事実です。そこで、もっと安い金額で良質な中古車を買おうと思う人が増えたのです」

確かに今でも20万円ほどから売り物は見つかりますが、安値で売られているものにはワケがあります。一般的に買おうと思えるものは80万円以上というのが現実です。現在流通しているNAロードスターの最多価格帯は60万円から70万円台です。また最高値だと250万円台になっています。平均相場は140万円台になりました。もはやNAロードスターは安い中古車というモデルではないのです。

NAロードスター
程度により150万円や240万円と言う個体も珍しくありません。

●NAロードスターの見極め方

実際にNAロードスターを買おうと中古車を探すと、金額に幅があるので選ぶ基準をどこに置くかが難しいところです。「飾っておくより乗って楽しむ方が多いクルマですので、1台1台でコンディションは大きく変わります。さら初期の1.6Lと後期の1.8Lがありますが、どちらも人気があり相場は変わりません(吉野さん)」とのことですから、見た目や好みの仕様で選ぶと良いようです。

また前述したレストアサービスは良い影響も与えています。「今でも走行に関わる交換部品に困ることはありません。レストアサービスと同時に部品供給も再生産されていますので、維持する上で困ることはないでしょう」と吉野さん。30年も前のクルマなのに古さを気にしないでいいようです。

「ただ、1.6LモデルですとエアコンにR12ガスを使っています。故障するとR12ガスを探すのが困難ですから、レトロフィットなどで新しい134ガスが使えるように改善すると良いでしょう(吉野さん)」など、全く困らないわけではないようです。また内外装パーツは今でも供給されないものがありますので、その点は注意が必要です。

●NAロードスターは買い時なのでしょうか?

上がり続けたNAロードスターの中古車相場は今後、どのように動くのでしょう。これは吉野さんからハッキリした回答をいただけませんでした。しかし、「確実に上がり続けています。この2年ほどでも目に見えて上がっています」とのことですから、今後相場が下がることはなさそうです。

さらに「最近はアルミホイールを換える程度で乗られるスタイルが多いです。フルノーマルに戻す方やフルノーマル車を探される方も多くなりました」との言葉は、NAロードスターが明らかに旧車として認められている証拠です。旧車の定義は難しいところですが、単に古いモデルではなく過去の名車と捉えれば良いでしょうか。だとすると、今後相場が上がることはあっても下がることはないでしょう。

NAロードスター
激しく改造された個体は減りました。

「走行距離が短くて修復歴のない良好な個体はどんどん減っています。ただ、過去にあった売り物にならないような個体は淘汰されたと思われます。今後は良い個体だけが残るのではないでしょうか」と言う吉野さんの言葉をお聞きすると、程度の良いNAロードスターを見つけるなら今だとも考えられます。

この記事の著者

増田満 近影

増田満

複数の自動車雑誌編集部を転々とした末、ノスタルジックヒーロー編集部で落ち着き旧車の世界にどっぷり浸かる。青春時代を過ごした1980年代への郷愁から80年代車専門誌も立ち上げ、ノスヒロは編集長まで務めたものの会社に馴染めず独立。
国産旧型車や古いバイクなどの情報を、雑誌やインターネットを通じて発信している。仕事だけでなく趣味でも古い車とバイクに触れる毎日で、車庫に籠り部品を磨いたり組み直していることに至福を感じている。
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