超過速度15キロ未満の取り締まりが約8倍に!新型オービスによる「ゾーン30」取り締まりが原因か!?

新型オービス

■超過速度が15キロ未満の取り締まりだけが43件から340件へと大幅増の謎!

2019年の夏頃、読者氏から情報をいただいた。警察庁のデータの2019年上半期分に、小さいけれどオドロキの異変が起きている。新型オービスによるものだろうと。
言われて私も見てみた。なるほど、確かにっ!

表立っては2013年から、警察庁は「新たな速度違反自動取締装置」の導入へ向けて動きだした。装置的にも運用的にもまさに「新たな」オービスであり、私は新型オービスと呼んでいる。
ネットでは「移動式オービス」「移動オービス」と呼ばれている。
しかし新型オービスには可搬式と固定式があり、当然ながら固定式は移動しない。また、移動オービス(※)と呼ばれるものがかつてあった。よって私は「移動式(移動)オービス」という語は使わない。
※ 参考記事「ワンボックス車に積む移動オービスの取り締まりは、2017年を最後に「終了」していた!

さて、「小さいけれどもオドロキの異変」について。
2019年の1年分のデータが、2020年2月13日に発表された。以下だ。

交通関係法令違反の検挙状況
「令和元年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」より「交通関係法令違反の検挙状況」。

取り締まりの総計は2018年の約775万件から約732万件へと減っている。この現象傾向は何年も続いている。
そんな中、歩行者妨害は約18万件から約23万件へ、一時不停止は約129万件から約133万件へと増えている。警察庁は近年、「交差点違反」の取り締まりに重点を置いているのだ。

以下は、スピード取り締まりのデータのアップだ。

スピード違反の超過速度別取り締まり件数
「計」が「1,137,255」となっている列が2019年分、「1,237,730」となっている列が2018年分だ。

全体に漸減しているが、超過速度が15キロ未満の取り締まりだけが43件から340件へと約8倍も増えている。上半期から見られた「小さいけれどもオドロキの異変」とはこれなのだ!

超過15キロ未満の取り締まり件数は毎年2桁だった。
この10年間をふり返ると、2010年=47件、2011年=37件、2012年=40件、2013年=15件、2014年=18件、2015年=23件、2016年=30件、2017年=41件だ。

なぜこんなに少ないのか。ずばり、スピード違反は超過15キロ以上を取り締まるのが警察庁の方針と考えられる。個々の警察官の裁量に任せていたら、超過15キロ未満だけが毎年2桁、それも50件割れなどということには絶対ならないはずだ。

しかしゼロ件ではない。ほんの少し取り締まっている。これは何なのか。
ある読者氏は言うのだった。
「原付一種(排気量50cc未満)と原付二種(50cc以上125cc以下)を間違えたんじゃないでしょうか」
たとえば制限40キロの道路で、55キロ(超過15キロ)以上の違反車を取り締まっていたとしよう。いわゆる原付バイク(原付一種)は、標識による制限速度が何キロでも法定速度は30キロ。50キロで走れば超過20キロの違反になる。
で、こんなことが起こったんじゃないか。
「超過20キロの原付バイクを停止させた。が、よく見たら原付二種だった。一種と二種の違いは、ナンバープレートの色を確認しないと分からないことがある。二種なら超過10キロだ。どうする? 見逃すか? ええい、せっかく停止させたのだから超過10キロで取り締まってしまえ」
いわば間抜けで強引なそういうケースが、全国で毎年2桁あるんじゃないかと読者氏は推理するのだ。なるほど、非常に説得力がある。

●新型オービスによるゾーン30での取り締まりが要因か?

ところが2019年、どかんと340件に増えた! 間抜けで強引なケースが突然約8倍に増えるとは考えにくい。いったい何が起こったのか。
思い当たるのは新型オービスだ。新型オービスは、生活道路・通学路での取り締まりを売りにしている。
そうした道路はだいたい「ゾーン30」といって制限30キロだ。従来のオービスは赤切符の違反(一般道路では超過30キロ以上)を取り締まる。だが、生活道路等の交通安全を売りにしてそれは不適当だ。超過30キロ未満も取り締まらねばならない。速度45キロを少し下回る違反も取り締まらねば。
そこで警察庁が「生活道路等では超過15キロ未満も取り締まってよし!」と全国の警察に通知したのだろう、私はそう見る。

新型オービス
警察庁のWebサイトより。可搬式のうち左側がSensys Gatso Groupのトラッキングレーダー式。その恐るべき高性能ぶりがさいたま地裁の裁判で明らかになった。右側は東京航空計器のスキャンレーザー式。信頼性は不明だ。

新型オービス、特に可搬式の購入が、少しずつではあるが進んでいる。今年、超過15キロ未満の取り締まりは、どかんと増えるか。超過15キロ以上20キロ未満の取り締まりは約34万件だ。せめてその1割、3万件程度に増えるか。

いや、そうはいかないはずだ。ネットでは、警察官がチームでやるネズミ捕りより「移動式(移動)オービス」の取り締まりのほうが簡単であるかに言われるが、逆だ。
オービスは違反現場では測定と撮影をおこなうだけ。後日、写真に映ったナンバーから判明した車両の持ち主に対し「違反者は出頭せよ」との郵便を出し、出頭を得て違反切符を切る。ずるずる出頭しない違反者もいて、警察は非常に手間がかかる。

放置駐車違反の取り締まりは、ナンバーから判明した車両の持ち主に「放置違反金」を払わせる形になっている。
スピード違反でも同様に、車両の持ち主に「速度違反金」を払わせる、そういう制度を誕生させるまで、新型も従来型もオービスの取り締まりがどっと増えることはないだろう。
「新型オービスにより通学路等の事故が減りました。しかし現在の制度では違反の処理が大変で、警察官は大きな負担を強いられています。新たな制度が必要です」
とアピールするために、頑張って少し増やすことはあるかもしれないが。

(今井亮一)

今井亮一【いまい・りょういち】
交通違反・取り締まりを取材、研究し続けて約40年、行政文書の開示請求に熱中して約20年。裁判傍聴マニアになって17年目。『なんでこれが交通違反なの!?』(草思社)など著書多数。雑誌やテレビ等々での肩書きは「交通ジャーナリスト」。2020年の目標は東京航空計器の新型オービス(レーザー式)の裁判を傍聴すること!

今井亮一
今井亮一さん

【関連記事】
ワンボックス車に積む移動オービスの取り締まりは、2017年を最後に「終了」していた!
https://clicccar.com/2019/10/30/925962/

【関連リンク】
今井亮一の交通違反バカ一代!
http://ko-tu-ihan.cocolog-nifty.com/

『交通取り締まり』の最新記事
覆面パトカー
N国党・立花党首のスピード違反で話題の「追尾式取り締まり」、そのやり方を警察官が法廷で証言!
警告看板
オービスの手前に必ず警告看板がある理由とは!?最新の可搬式オービスで警告看板はどうなる?
正体判明!最新のレーザー式速度測定機LSM-200はオービスではなくネズミ捕り用だった!!
各部の名称
新型コロナの影響が飲酒運転取り締まりにも!使用を指示されたアルコール感知器の値段は税込1万8375円
新型オービス
新型オービスの将来を占う超重要裁判!45キロ超過のスピード違反取り締まり、その測定値は正しかったのか!?
この記事もよく読まれています

あなたにおすすめの記事