●ワゴンをひく男性とGoogleマップ
このひとはなにをやっているのでしょう? もう最初に動画そのものを見てもらっちゃいましょう。
このひとがなにをして、その結果なにが起こったのか、おわかりになりましたでしょうか?
まず、99台のスマートフォンをワゴンに載せて、道の真ん中近くを歩いています。
多少時間差があるようですが、いくつものアングルからその様子を映しています。すると、右上にGoogleマップの画面が表示されました。よく見るとわかりますが、ベルリンの中心部です。どうしてこの場所を選んだのかはわかりませんが、ひょっとすると歩行者天国になる場所なのかな? クルマが通ってないですもんね。
で、その地図に注目してください。このアン・デア・シリング橋でなにが起きるでしょうか? ちなみにベルリンは右側通行ですからね。
そう! 渋滞が起きたのです。
カーナビやカーナビアプリに少々詳しいひとならわかったのではないでしょうか。このひとは、99台の中古スマートフォンをワゴンに引いて歩くことで、Googleマップ上に“渋滞表示”を作り出したのです。
それでは解説しましょう。Googleマップにはナビ機能があります。そして、渋滞情報を画面に表示させることもできるようになっています。では、Googleはどうやって渋滞情報を取得しているのか? VICSからではありません。
私が使っているのはiPhoneですが、Google マップの『設定』メニューの中には『位置情報収集』という項目があり、こう書かれています。
『交通状況などのGoogleのサービス改善に協力する:オンにすると、Googleの位置情報サービスが匿名の一情報データを収集し、Googleに送信します。(後略)』。
つまり、位置情報の共有を許可すると、スマートフォンは位置情報をGoogleに送るんですね。あまり細かいことはわかりませんが、おそらくGoogleでは走行中のクルマの位置情報を取得して、なんらかのアルゴリズムによって渋滞を検出し、Googleマップの地図上に表示するのでしょう。
でも、位置データだけではクルマなのか徒歩なのかわかりませんよね? たぶんですけど、この動画主は、99台のスマートフォンでGoogleマップの自動車のナビ機能を使っていたんじゃないかな? それでGoogleのほうでは渋滞だと認識してしまったのでしょう。
まぁ、実際はこのひとが歩く前にもGoogleマップ上のこの道路はオレンジ表示になったりしていたし、そんなにキレイに幻の渋滞表示が出ちゃった感じではないですけどね。じっさい、現実世界でGoogleマップを使っているときに、地図上で渋滞表示されていても通過してみるとスムーズだった、なんてことはよくありますしね。
この動画主、べつの場所で幻の渋滞表示実験を行っています。こんどはGoogleベルリンのすぐ前です。こちらも見事に幻の渋滞表示が出ています。しかし、こんな渋滞表示が出てたら、ドライバーは迂回したくなっちゃいますよね。なんか名探偵コナンのトリックで使われたりしそう。
なお、この動画主はベルリンを拠点に活動しているSIMON WECKERTというアーティストです。
いっぽうでいくつか気になる点が。このひとは99台のスマートフォンを使っていたけど、もっと少なくてもいけるんじゃないかな? という点がひとつ。現実の1箇所の渋滞情報を検出するのに、Googleがそんなに何十台ものスマホから情報を得ているとは思えないんですよね。
それから、このひとは道の真ん中を歩いていたけど、Googleマップの精度から考えれば、歩道でも大丈夫なんじゃないかな、という点です。そのほうが安全だし迷惑にもならない。あんがい、数人でGoogleマップの自動車のナビ機能を使いながら歩道を歩いたら、それだけで渋滞表示が出ちゃうのかもしれません。
ちょっと話は変わりますが、この春から首都圏ではVICSも民間プローブの情報を活用した交通情報の提供の実証実験を行うそうです。こちらが取得するのはたぶん車載器のプローブ情報だけで、スマートフォンからは位置情報を取得しないと思うので、こういうイタズラはできないでしょうけどね。
(まめ蔵)
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