ホンダ・N-WGNが生産再開。ようやく本気でおすすめできるようになった【週刊クルマのミライ】

■EPBの不具合による生産停止から5か月、ついにN-WGNの生産が再開

2019年にホンダがフルモデルチェンジしたN-WGN。軽自動車は同社のN-BOXなどスライドドアのスーパーハイトワゴンが主流で、全高1600mm台のハイトワゴンはオワコンと言われていましたが、ハイトワゴンの逆襲といえるほど好印象の力作に仕上がっていました。

渋滞対応で停止まで可能としたACC(追従クルーズコントロール)をはじめ、先進運転支援システム「ホンダセンシング」を全車に採用しているという力の入れようもあって、軽自動車という枠をこえ、コンパクトカーとして考えても非常に高い評価を得た一台となっていました。

実際、街乗りでのキビキビ感は半端なく、ステアリング操作にこれだけリニアに反応するのであればどこに持って行っても不満がないはずだ! と思えるほど。とはいえ、実際にサーキットに持ち込むとスプリングレートが柔らかく、ノーズダイブやロールが大きく感じてしまうのですが……。

逆にいうと、それくらい街乗りスペシャルとして乗りやすい走り味にセットアップされているのがN-WGNの特徴です。

ホンダN-WGN 標準 カスタム
N-WGNはカスタム仕様(右)と標準という2つのスタイルを用意する

渋滞対応ACC機能を全車に標準装備するということは、停止保持のためにEPB(電動パーキングブレーキ)も備えることになります。信号待ちなどの停車時にブレーキペダルから足を離しておけるオートホールド機能が用意されるのは、その副産物であり、クラスを超えた機能といえます。

しかし、EPBの全車標準装備は思わぬトラブルを招いてしまいました。初期生産モデルの一部にEPBのエラーが出てしまいパーキングブレーキが利かなくなるという症状が発生したのです。その原因究明のために、ホンダはこれだけ力を入れて開発してきたN-WGNの生産を止めるという判断をしました。それが2019年8月のことでした。

その後、原因究明と対策につとめ、ようやく2019年12月にEPBに関するリコールを発表。「電動パーキングブレーキアクチュエータ」と「スプリングパッケージ」の対策品を用意することでEPBのトラブルを直すことができるようになったのです。そして、ついに2020年1月20日、N-WGNの生産が再開されました。

これだけ長期にわたり、売れ筋となるクルマを売ることができなかったのは痛手でしょうが、わかっていて危険な商品を売ってしまうというのは自動車メーカーとしてはあり得ないことです。ユーザーの安全に直結する品質を最優先にするというのは当たり前ですが、デビュー直後の生産停止というのは英断だったともいえます。

ともかく、ホンダN-WGNを安心して購入できるようになりました。

ホンダN-WGNパーキングブレーキ
全車に電動パーキングブレーキを採用したN-WGN。その不具合を改善、生産が再開された

しばらくはバックオーダーの解消が優先されるでしょうから納期はかかるかもしれません。正直言って、EPBの問題で生産が止まっていて、再開の目途が立たないという時期には、いいクルマだとわかっていても、おすすめすることは難しいのも事実でした。欲しくても買えないわけですし、EPBというN-WGNの魅力的な機能を支えるデバイスに爆弾を抱えている状況では不安が先に立ちます。

デビュー直後のトラブルがイメージダウンにつながることは否めません。だからといって街乗りスペシャルな走りが味わえるN-WGNを無視してしまうというのはもったいないことです。スタイリングや大きなテールゲートによる使い勝手の良さでは個性を発揮するN-WGNですが、街乗り領域での走りではむしろ尖ったところのない、全域で満点に近いと感じる不満のない走りが魅力です。

生産再開の報が届いたことで、ようやく堂々とN-WGNをおすすめできます。リコール作業を受けた試乗車も戻ってくることでしょう。ぜひともホンダの販売店などに足を運んで、街乗りカーの新基準といえる走りを体感してみてほしいと思うばかりです。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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