■自然な操舵感と圧倒的なコーナリングスピード
フォルクスワーゲン・ゴルフといえば8代目が発表され、日本でも2020年後半か2021年前半には登場するのでは? という予測が飛び交っています。いずれにしても1年後くらいにはお目見えしそうです。
そんな中、現行7代目ゴルフの特別仕様車「ゴルフ GTI TCR」に試乗する機会がありました。2020年1月上旬時点でまだ公式ホームページに掲載されているため、600台限定のうち在庫はまだありそう。車両本体価格は509万8000円です。
「DNU」型の2.0Lの直列4気筒ガソリンターボは、290ps/5400-6500rpm・380Nm/1950-5300rpmというアウトプットで、組み合わされるトランスミッションは、7速DSG。「GTI Performance」と同様に、7速化により実燃費向上も期待できそう。
■GTIファミリーでも別格の存在感
試乗車のタイヤは、ピレリ「P ZERO 」でサイズは235/35R19。電子制御油圧式フロントディファレンシャルロックや大径ブレーキディスク(前後輪共ベンチレーテッドディスク)を装備するほか、リヤビューを引き締めるのは、アクラポヴィッチ製チタンエキゾーストです。
GTI史上最強の心臓部である290PS/380Nmのアウトプットは、1420kgの車両重量を軽々と加速させ、アダプティブシャシーコントロールの「DCC」で「スポーツ」モードにすれば、登りの急勾配でもバックレストに背中が押しつけられるような加速が可能です。
「スポーツ」モードでは、ど派手なブリッピングやエキゾーストノートも炸裂し、はっきりと硬い足まわりと電子制御油圧式フロントディファレンシャルロックによる旋回性能高さも味わえます。
なお、アクラポヴィッチ製チタンエキゾーストは、「エコ」「ノーマル」モードであれば比較的ジェントルなので、街中では比較的おとなしく乗ることもできます。「スポーツ」にすれば、一転、レーシーなサウンドを響かせてくれます。
ただし、上記したようにダンピングが効いた乗り味はなかなかハードです。
ワインディングロードでは、コーナーのRを問わず意のままに向きを変え、水を得た魚のようなフットワークを披露。公道でも十分にスポーティな走りを堪能できます。しかも公道の常識的な速度内であれば、操舵感は比較的自然な印象で、アンダーステアもそれほど顔を出しません。
GTI史上最も速くて、しかも楽しい仕様なのは間違いありませんが、真価を発揮できるのはサーキットのみであるはずで、公道だけでなく、サーキット走行も見据えた方に乗って欲しいような気がします。
0-100km/h加速は5.6秒で、310psのゴルフRの4.6秒には0.5秒差が付けられています。それでもGTIファンにはたまらない存在であるはずの「ゴルフ GTI TCR」。
フロントグリルの赤いアクセントラインや赤を使ったお馴染みのタータンチェックをモチーフとしたGTIならではのアイデンティティが盛り込まれていて、ゴルフ7を飾る特別仕様車として圧倒的な存在感を放っています。
(文/写真 塚田勝弘)