FSD3S RX-7の中古は値上がり続ける!?専門店でロータリースポーツ選びの注意点を聞いた【中古スポーツカー・バイヤーズガイド】

●ガレージRが4-6型の中後期のみを仕入れる理由とは?

「今、市場に流通しているRX-7は大半が商品にならないくらい傷んでいます。これは古いFC3SだけでなくFDでもそうなのです」というのです。外観が良くて仕入れたものの、商品にできないような粗悪車が数多く流通しているのが現実です。これは年式の古さばかりでなく、ピュアスポーツカーというRX-7の性格上、仕方ない部分もあります。走りに振ったチューニングを徹底した結果、普通に乗れないクルマになってしまった、ハードサスペンションで走り続けたため、ボディが悲鳴をあげるなど、問題のある個体が多いのも事実です」

このことを踏まえ、ガレージRさんでは「FDで言えば1型から3型までは在庫しません。商品にするのは4型から6型までの中後期に絞っています」とのことです。今回お話を聞いたのは、ガレージR本店の車谷優樹店長です。ロータリーエンジン搭載車に絞ってお話を聞いたところ、興味深いことを教えてくれました。

車谷優樹店長
ガレージR本店の車谷優樹店長にお話を聞きました。同じグループ会社であるキングバイヤーさんで店長を務めていたこともあり、ロータリーだけでなく国産スポーツに精通されています。

「今、RX-7に乗ろうとするのは圧倒的に若い人なんです。確かに子供が大きくなって余裕の生まれた50代60代という方もいますが、8割から9割のお客様が20代の若い方です」
若い人がRX-7を買いに来るなんて思いもしませんでした。彼らはオジサンたちとは違う目線で中古車を選んでいるようです。

「ロータリーエンジンに憧れる気持ちが強いマニアックな方が大半です。若いからといってチューニングやカスタムに興味はないようです。当店で購入された方の大半が展示されている状態のまま納車され、数年して買い取る時も納車時のままというクルマばかりです」と、スポーツカーの雰囲気を味わうことが主流になったようです。

●FD3Sの相場は100万円台後半から700万円程度と幅が広い

とはいえ、現在FDをはじめとするRX-7の中古車相場は上がる一方に思えます。二桁で流通する個体はほぼなく、一般的に100万円台後半が底辺になっています。上は300万円台後半から600万円、700万円といったものまで現れるようになりました。やはり5万キロ未満の低走行距離で車庫保管されていた1オーナー車などでは、とんてもない価格になります。そこまではいらないから、普通に乗れるFDが欲しいという場合でも、「350万円ほど見てもらえれば選ぶことができます」と車谷店長も言います。

また、興味深いのは、現在の中古車市場に前期型のFDはほぼ流通していないということです。なぜそうなったかと言えば「前期型はアメリカでの25年縛りがなくなる年式なので、ぶっちぎりで相場が高いのです。最終モデルと変わらない相場になっていますので、リスクの高い低年式より高年式を仕入れます」とのことです。

R32スカイラインGT-Rがアメリカで大ブームになったことと同じ現象がRX-7でも見られます。80スープラもそうでしたが、RX-7はアメリカで新車販売されていたのに、日本の中古車に人気が集中しています。これは日本で走っている「右ハンドル」であることに意味があるのです。そのため海外のバイヤーが日本にアメリカでの相場で買い付けに来ます。自然と日本の中古車相場も上がってしまうのです。

●海外の日本スポーツカーブームのピークは過ぎた!?

「海外から買い付けに来るバイヤーが程度の良いFDを輸出します。すると国内にある個体がどんどん減り、結果的に相場が上がり続けます。これでは負のスパイラルですよね」と車谷店長も現状を嘆いています。とはいえ「弊社では輸出をしません。国内のお客様が欲しいと思えるクルマを残さないと、自分たちも商売にならなくなってしまいます」と将来を見据えているそうです。また専門店らしく、一度販売したクルマが下取りなどで戻ってくるケースも多いそうです。

悲しい現実と言えますが、少しは明るい未来も見えてきたようです。「例えば日本で300万円とか500万円で買い付けたRX-7をアメリカなどに輸出すると、関税などがプラスされて現地での販売価格は1000万円を超えてしまいます。そんなクルマを買うのは普通の人ではなく富裕層ですよね。だからいずれ飽きるんです。すでにR32GT-Rの相場は戻り始めました。といっても5年前の水準まで戻ることはないのですが、すでにピークは過ぎたと考えています」というのです。海外で人気トップにあるR32スカイラインGT-Rの相場が戻り始めたということは、それ以外の車種なら尚更相場が下がると考えられます。

また、ロータリーエンジンを搭載しているということも海外での人気に影を落とします。GT-Rやスープラに搭載されているのは、通常のレシプロエンジンです。レシプロであれば修理やチューニングのノウハウを持つショップや工場が海外にもたくさんあります。ところがロータリーエンジンを量産したのはマツダだけですから、修理やチューニングに長けている業者が海外には多くありません。こんな点から、GT-RやスープラほどRX-7の人気が高まらないのだと言えるのです。

●FC3Sはもはやコレクターズアイテム化

では、FDより古いFC3Sになるとどうでしょう。「すでに市場に出回る数が少なすぎて相場がなくなってしまいました」と、さすがに年式の古さを反映したことになっています。現在販売されているFCに関しては、個体それぞれで価格が大きく異なります。良いものにはとんでもない価格が付き、それ以外は普通の人が購入するレベルではないものばかりです。「販売する業者の言い値になっている部分が強いです。例えばハコスカみたいな扱いですね」と、もはや旧車の部類として業者・ユーザーともに認識されているのです。

サバンナRX-7
さすがに初代は流通数が激減しましたが、2代目サバンナRX-7(FC)ならまだ見つかります。とはいえ相場はなくショップや程度により価格が決まる旧車の扱いです。

●RX-8はロータリー入門としてお買い得と太鼓判!

FCが旧車の範疇であれば、FDの後に発売された最後のロータリー搭載車、RX-8はどうでしょう。「FDと比べたら壊れないし乗りやすいのでオススメです。ターボではないから遅いと思われがちですが、サーキットでもない限り十分に楽しいし速いクルマです」と太鼓判なのです。確かにターボがない自然吸気エンジンですので、トラブルになる確率はグッと下がります。またFCやFDで見られる電装部品の弱さもRX-8では解消されています。誰にでもオススメできる車種なのですが、さすがに初期モデルでは15年もの年数が経っています。できるなら高年式を選びたいところです。

では、RX-8の中古車相場はどうでしょう。前期モデルであれば100万円以下、それこそ50万円前後で買える個体が多々あります。後期モデルで良いものは200万円近くになってしまいますが、「速いクルマではないですが、ボディがしっかりしているので飛ばせるんです。同じ速度域という前提でFDだと怖いと感じるところをRX-8は安心して走れます。それにリヤシートもありますから荷物を積めます。乗り心地も良いのでFDに乗る前にロータリー入門としてRX-8を選ぶのもアリです」ということです。確かに同世代のスポーツカーとして見れば、RX-8は程度と相場が釣り合った、お買い得なクルマと言えます。スポーツカー最安と車谷店長も太鼓判を押してくれました。

RX-8
相場が上がり、おいそれと買えなくなったRX-7。ロータリー車に入門するのでしたら、相場が底値とも言えるRX-8を狙うのもアリです。

●程度の良い後期型FD3Sを選べるのは今が最後!?

一般的にレシプロより寿命が短いとされるロータリーエンジンですが、実際に壊れやすいのでしょうか。選び方を含めて尋ねてみると「正直、予測はできません。ですから予算と見た目で判断すればいいと思います」との回答でした。アペックスシールの耐久性など不安要素は正直なところありますが、いつどこでトラブルになるかは未知数です。「弊社では販売するすべてのクルマでエンジンの圧縮圧力を測定していますので、ご安心いただけると思います」とのことです。

総じてRX-7は今後、程度の良い個体が減り続けると考えられます。年数が経てば後期型でもアメリカで登録が可能になり、輸出されてしまう可能性が高いからです。それとは反対に、アメリカでの人気に陰りが見られるようになった国産スポーツカーですので、相場が落ち着く可能性もあります。いつが買い時なのか判断するのは難しいようにも思えますが、今なら程度の良い後期型が豊富に選べます。今後も同じ状況が続くとは考えにくいので、ラストチャンスは今なのかもしれません。

この記事の著者

増田満 近影

増田満

複数の自動車雑誌編集部を転々とした末、ノスタルジックヒーロー編集部で落ち着き旧車の世界にどっぷり浸かる。青春時代を過ごした1980年代への郷愁から80年代車専門誌も立ち上げ、ノスヒロは編集長まで務めたものの会社に馴染めず独立。
国産旧型車や古いバイクなどの情報を、雑誌やインターネットを通じて発信している。仕事だけでなく趣味でも古い車とバイクに触れる毎日で、車庫に籠り部品を磨いたり組み直していることに至福を感じている。
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