●ほかのモデルとはちょっと異なる乗り心地が特徴のGLE
メルセデス・ベンツGLEはもともとはMクラスと呼ばれていたモデルです。
初代Mクラスはラダーフレームを持ったモデルで1997年に登場。メルセデス・ベンツとしては初めてアメリカの工場で製造されました。GLEと名前が変わったのは、3代目のシリーズ途中の2015年のこと。今回の試乗車は4代目にあたります。
先代に比べてホイールベースを80mm延長とかなり長くなりました。これは全車にサードシートを装着されたことが大きく影響しているといえるでしょう。新型のGLEもやはりアメリカがメインの市場で、製造もアメリカで行われています。
そのことも大きく影響している(アメリカがメイン市場であること)のでしょう。ほかのメルセデス・ベンツとはちょっと異なる、たおやかな乗り心地がGLEの大きな特徴となっています。アメリカの最高速度は速くても85マイル毎時(約136km/h)で、ほぼ日本と同じ。速度無制限のアウトバーンがあるドイツとはやはり違うセッティングを感じます。
今回の試乗は山梨県の山の中腹にあるホテルがベースで、周囲の道路幅はかなり狭めです。そうした状況で2020mmの全幅、全長4940mm、ホイールベース2995mmのクルマはさすがに大きい印象です。ただしアイポイントが高く、見切りのいいボンネットのおかげで慎重になりながらも乗りこなすことができました。
もともとステアリングレスポンスがどうこうとか、アンダーステアがどうこうとか、いうタイプのクルマではありません。このクルマのたおやかな乗り心地を生んでいる大きな理由のひとつは、サスペンションがエアサスであることでしょう。一昔前のエアサスに比べたら、ずっと金属バネに近いセッティングですが、やはりエアサスらしさは表に出てきます。
エンジンは3リットルのディーゼルターボです。低速からしっかりとトルクを発生させるタイプのエンジンで、ディーゼルらしくゆったりとした乗り味を味わえます。
ディーゼルなので巡航時のトルクの安定感はなにものにも代えがたいものですが、それ以上に気持ちいいのがアクセルをグッと踏んでいったときです。GLCのエンジンは今は少なくなった6気筒で、安定感と滑らか感をもってエンジン回転を上昇させて行き、そこにトルクがしっかりとシンクロするところが気持ちいいのです。
GLEはメルセデス・ベンツのラインアップのなかではかなり特殊なジャンルのクルマといえるでしょう。しかし、Gクラスとも、GLCとももちろんGLAとも大きく違う、唯一無二の存在には大きな価値があるともいえます。この乗り味は他ブランドにも、メルセデスブランドにもない存在です。
(文/写真・諸星陽一)