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■自転車保険の義務化増加により、個人賠償責任特約の補償が見直されている
日常生活の中で、他人の物を不注意で壊してまったり、相手に危害を加えて怪我をさせてしまい、多額の賠償金を支払わなければならなくなるケースは増えています。このような自分や家族が加害者になってしまい、相手の損害を補填しなければならない際に使用できるのが、自動車保険の個人賠償責任特約です。昨今では自転車保険の加入が義務化される地域が多く、個人賠償責任特約のニーズも高まっています。今回は、字面だけでも難しそうな個人賠償責任特約について、解説していきます。
●個人賠償責任特約とは
日常生活でのトラブルに対応してくれる個人賠償責任特約ですが、実際にどのような事例で使用できるものなのか紹介していきます。例えば、自転車で走行中に人にぶつかってしまい怪我を負わせてしまった、子供が外で遊んでいて他人の家の窓ガラスを割ってしまった、飼い犬が散歩中に他人に噛みついて怪我を負わせてしまった、買い物中にお店の商品を落として壊してしまった、マンションで水漏れを起こしてしまい下の階の部屋に水漏れの被害を負わせてしまったなど、使用できるシチュエーションは多岐にわたります。
故意に傷をつけたものではなく、不慮の事故として発生し、法律上の損害賠償責任が生じた場合には、個人賠償責任特約を使用して、示談交渉から請求金額の支払いまでを保険会社が行ってくれます。保険会社によって対応金額は上下しますが、多くの場合は国内での事故に関しては無制限、国外での事故については最高1億円が保証される金額の上限となっていることが多く、安心して補償対応してもらうことができるでしょう。
個人賠償責任特約が使用できない事例としては、仕事中に発生した事故や、個人間の闘争(いわゆるケンカ)、クルマや船や飛行機を使用している際の事故、同居の親族に対する損害を与えてしまった場合などがあります。
特に、小さい子供のいる家庭では、上記のような不慮の事故が起きやすい環境にあるので、個人賠償責任特約に加入しておく意味合いは大きいでしょう。
●掛け金は小さく、自転車保険にも対応
個人賠償責任特約を付帯する際の追加保険料は、年間で2000円程度、月払い換算すると毎月170円前後の掛け金となります。そこまで大きな掛け金にはならないので、万が一のために特約を付帯しておくことをお勧めします。
最近では、自転車での事故が増えており、相手に大けがさせたり、場合によっては死亡させてしまうような事故も発生しています。そのため、自転車を使用するユーザーに自転車保険への加入を義務化している地方自治体も多くなっています。
自転車保険加入を義務化している地方自治体の一例としては、宮城県仙台市、埼玉県、神奈川県相模原市、石川県金沢市、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、愛知県名古屋市、鹿児島県などがあり、この他の地方自治体でも近いうちに義務化を検討している地域は多くあります。この自転車保険の義務化は、自転車事故の際の被害者救済を目的としたもので、加入すべき保険は、相手への損害賠償を可能とする保険です。自転車事故の際に自分自身の怪我の治療費を払ってくれる自転車傷害保険とは別のものになるので注意しましょう。
自動車保険に付帯できる個人賠償責任特約では、自転車事故での相手方への補償がかのうになっており、義務化された自転車保険の要件を満たしています。自分自身が、自転車保険の加入義務化地域に入っているのかをしっかりと確認し、未加入であった場合に、自動車保険の契約があれば、すぐに個人賠償責任特約を付保しましょう。
●個人賠償責任特約の補償範囲拡大も
自転車保険の義務化により、個人賠償責任特約のニーズが高まったことを受け、各保険会社では個人賠償責任特約の補償範囲を拡大する動きが出てきています。2019年1月、東京海上日動火災保険株式会社では、従来まで補償対象外であった貸借物に対しての補償範囲を拡大しました。友人から借りたゴルフクラブや子供が友達から借りたゲーム機、ホテルなどの宿泊可能な施設や施設に付随する動産、実家を離れて一人暮らしをしている子供がアパートで引き起こした水漏れに対する階下への被害など、今までは補償範囲から外れていた案件に対しても補償をするように保険内容が改定されています。
●まとめ
損害保険の特約として設定されている個人賠償責任特約は、現代社会で生活していて起こりえる事故をしっかりと担保している優秀な特約です。掛け金も大きくなく、充実した補償となるため、付保するメリットは大きくあります。他の損害保険と二重掛けになってしまうと意味がありませんが、損害保険は自動車保険だけしかないという方は、この機会に特約の付保をされてはいかがでしょうか。
(文:佐々木 亘)