軽くて扱いやすくて速さも十二分! 公道OKの競技モデルでバイクライフが変わる【ホンダCRF250F・実走編】

■シートは高めでも足着きは良好

ホンダCRF250Fは、もともとオーストラリア製のコンペティションモデル。横浜のバイクショップ・アルファスリーにて、公道仕様が販売されています。今回は、その走行インプレッションをお届けします。

CRF250F
CRF250F乗車時のサイドビュー(両足着き)。

シート高は883mmとやや高めですが、細身のシートなので、身長164cmの私でも両足のつま先をラクに接地させることができます。車体の軽さもあって、フラット林道やモトクロスコースならシート高はまったく気になりませんが、ハードエンデューロや獣道アタックなど、足で漕いでバイクを進めるようなシチュエーションでは、小柄なライダーはちょっと不安を感じるかもしれません。

CRF250F
CRF250F乗車時のリアビュー(片足着き)。

●レスポンスがよく扱いやすいエンジン

CRF250F
軽量の空冷SOHCエンジンがキビキビした走りを生み出します。

セルスタータースイッチを押すと、エンジンはすぐに目覚め、どるどると太めのエキゾーストノートをあげ始めます。スタート前に軽くブリッピングしてみるだけで、ツキの良さがはっきりわかるエンジンです。

試乗は、ガレ気味のダートと草地の、2か所のクローズド・フィールドでおこないました。どちらの路面でも、トルクフルでクセのないエンジンがぐいぐいと力強くマシンをひっぱってくれます。

トップエンドの伸びはそれほどではないものの、リッチな中低速からパワフルな高速へのつながりがスムーズで、どんな回転域からでもスロットルグリップをカチッと全開にするだけでフルパワーを引き出すことができます。まったくディレイを感じさせないダイレクトな操作感のスロットルですが、エンジンの出力特性が穏やかなため、パワーに振り回されてライダーが怖い思いをするようなことはまずなさそうです。

●手の内におさまるハイパフォーマンス

CRF250F
どんな路面も思い切って走れる素直な操縦性と豊かなパワーが持ち味です。

ふだんのオフロードランでよく経験する40km/hまでのゼロスタート加速も試してみました。大きめにスロットルをあけて少し荒っぽいスタートをしても、不用意なフロントアップが起きる気配はなく、するするとスムーズに加速できます。また、しなやかな足のおかげで、ガレぎみの路面でスピードが乗っても直進安定性がしっかり保たれていて、ゆとりをもって加速できました。

コーナリングでは、フロントの食いつきの良さがもたらす突っ込みの安心感が印象に残りました。タイトターンからフルスロットルで脱出すると、さすがにリアが出るものの、限界挙動は穏やかでコントローラブルです。

大きなギャップやジャンプはテストする機会に恵まれませんでしたが、前後ともサスのキャパシティに十分なゆとりがあり、まったく不安を感じませんでした。

●上半身の軽さが光るクイックアクション

CRF250F
ダートでの切り返し操作も、リラックスして素早くこなせます。

CRF250Fの車両重量は120kg。同クラスの公道モデルと比べると、スペック的にも10~20kg軽いのですが、それ以上に効いているのが低重心です。たとえば右ターンから左ターンへの切り返しなどでは、バイクの下半分よりも上半分を大きく動かすことになるため、同じ車重であれば上半分の軽い車両のほうがより軽く感じます。
CRF250Fの軽い上半身は、すべてのアクションにキレを生み、思い切ったライディングを可能にしてくれます。一般的なライダーのオフロードランでは、持て余すほどのハイパワーよりも、軽快な操作性のほうが速さに直結するシーンも多いのではないかと感じました。

■ストリートランはやさしく丁寧に

CRF250F
オンロードではジェントルな走りが似合います。

さて、最後にロード走行はどうでしょうか。CRF250Fは生粋のオフロード用コンペティションモデルだけに、オンロードはあまり得意とはいえません。ワイドなパワーバンドを使って力強くオフロードを走れるエンジンも、スピードレンジの高いオンロードでは、各ギアの吹けきりが早いぶん、うっかり引っ張りすぎるとやや唐突にレブリミッターが作動してつんのめる感じになることも。

また、装着されたブロックパターンタイヤは公道用ではあるもののオフロード向きの特性で、ロードではやや滑りやすく不安定です。停止状態から大きくアクセルをあけて発進すると、リアタイヤがスピンしはじめることもあるほどなので、ロードでのハードコーナリングはお勧めできません。

CRF250Fは、あくまで「公道を走れるオフロード専用マシン」と考え、ストリートではタイヤにやさしい丁寧なライディングを心がけましょう。

●休日オフがメインなら、CRF250Fは賢い選択

CRF250F
思い通りに扱えるCRF250Fがオフロード・ライディングの世界をひろげてくれます。

コンペティションモデル由来のズバ抜けた軽さと速さ、そこに誰もが扱えるしなやかさを兼ね備えた優れたオフロード性能がCRF250F最大の魅力です。いっぽうで、荷物があまり積めなかったり、二人乗りができなかったり、高速走行がちょっと苦手だったりと、実用面ではストリートモデルにかなわない面があるのも事実。でも、バイクライフにオフロードが占める割合が高い人にとって、CRF250Fは間違いなくお薦めの選択です。

さらっと目立たないルックスなのに、よくみると稀少車だというのも、あまのじゃくなダートライダーには嬉しいポイントになりそうですね。

ホンダCRF250F
【主要諸元】
全長×全幅×全高:2108mm×798mm×1185mm
シート高:883mm
エンジン種類:空冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
総排気量:249cc
最高出力/最大トルク:22pp/2.28kgm
燃料タンク容量:6ℓ
タイヤ(前・後):80/100-21・100/100-18
ブレーキ:前後ディスク
車両価格:77万8000円
※アルファスリーにて取り扱い

(写真:高橋克也 文:村上菜つみ)

【関連リンク】
アルファスリー
https://www.alphathree.co.jp/

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この記事の著者

村上菜つみ 近影

村上菜つみ

福岡出身・東京在住のモデル&モータージャーナリスト。ツーリング雑誌での編集経験を経て独立し、二輪・四輪問わず幅広い分野で執筆中。「月刊モトチャンプ」連載中の「ぶらり二輪散歩」で使用したバイクのインプレッションを毎月6日(モトチャンプ発売日)に公開する他、乗り物関連の展示を紹介する「村上菜つみのミュージアム探訪」をシリーズ連載しています。
愛車はホンダ・モビリオスパイク&ホンダ・VTRです。
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