シェフラーの都市型モビリティは驚異の四輪操舵&四輪駆動を持つ【東京モーターショー2019】

■操舵できるインホイールモーター・ドライブトレインを四輪に配置。真横にも動くことができる

ドライブトレイン系を中心としたサプライヤー「シェフラー」が東京モーターショーに出したブースの主役は、同社が開発した都市型モビリティ「シェフラー・ムーバー」です。

これは、パワートレインを含むシャシーに、用途に応じたボディ(キャビン)を載せるという汎用型モビリティの提案で、ドイツでは連邦交通・デジタルインフラ省より「ドイツモビリティ賞」を与えられるなど高く評価されています。

その最新バージョンが東京モーターショーに展示されています。

シェフラー・ムーバーは四輪操舵・四輪駆動の電気自動車です。インホイールモーターとサスペンションとブレーキ、そしてステアリング機構を一体化した「シェフラー・インテリジェント・コーナーモジュール」が四輪に配されています。ステアリング機構は、インホイールモーターとサスペンションが一体化したユニットごと回転させるというものです。

最大舵角は90度を実現、つまり真横に動くことができるのです。また、四輪を前後でそれぞれハの字になるよう切って駆動するとその場で旋回することも可能。狭い場所でも便利に使えるモビリティの提案なのです。

水冷式インホイールモーターとサスペンションを回すわけですから、かなりの操舵力が必要といえますが、現在組み込まれている操舵用48Vモーターの最大トルクは1000Nmと余裕たっぷり。当然、バイワイヤの操舵系ですからレベル4以上の自動運転を想定するならばステアリングホイールは不要でしょうし、そうでなくともジョイスティックなどで操作するほうが似合いそうな未来的な一体型モジュールです。

なお、駆動モーターのスペックは定格出力13kW、最大出力25kW。トルクは250Nmで、60秒間に限定されるブースト機能を利用すると500Nmを発生可能。そのため600kgと車重を想定した場合の0-50km/h加速は3.3秒。最高速度は140km/hが可能と発表されています。ちなみに、今回展示されているシェフラー・ムーバーでは50km/hに抑えているそうです。

SCHAEFFLER MOVER
シェフラー「ムーバー」の駆動&操舵系「インテリジェント・コーナーモジュール」

未来のモビリティにおいてはラストワンマイルと呼ばれる近距離に移動手段をどのように確保するかが課題となりますが、シェフラー・ムーバーはそうしたニーズに応える力作。そして90度まで操舵でき、その状態で駆動できるインホイールモーターを使った「インテリジェント・コーナーモジュール」は、こうした小型モビリティにおいてスタンダードとなりそうなほど、高い利便性を感じさせます。

ただし展示で気になったのは、本来は黒く塗るべきであろう冷却系パイピングまで高圧配線をイメージさせるオレンジに塗られていたこと。パッと見て「高圧の配線がいっぱいある!」と誤解しないよう、モーターショーのブースでコーナーモジュールを見るときには、お気をつけください。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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