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●赤ちゃんと一緒にイベント参加や、災害時の避難がしにくい社会に提案する
子育て世代、特に乳幼児を育てているママにとって、外出をするのはハードルが高くなります。外出先に赤ちゃんのお世話をできる設備が整っているのか、利用しやすい環境になっているのかが、外出できるのかを決める大きなファクターになっています。
先日、首都圏から東日本を直撃した台風19号では、多くの地域に避難指示が出され、避難所へ行くことを余儀なくされた方も多くいらっしゃいます。このような災害による避難の際にも、子供がいるからと避難所ではなく、自家用車の中で過ごされる方も多かったのではないでしょうか。
今回、スズキとベビーグッズメーカーの「Conbi」がタッグを組んだコンセプトカー「エブリイどこでもベビールームwithコンビ」は、人が集まるイベント会場から、災害時まで幅広く使える、子育て世代のための、移動式ベビールームです。
赤ちゃんとママのための軽ワゴン
軽自動車の利点である機動性を最大限に活用し、場所を選ばず配車できるのが、このクルマの特長です。大型車両が入りにくい、小規模なイベントスペースや避難所などでも、素早く現地に入り、サービスを提供することができます。
エブリイをベース車両とすることで、高さと広さのある荷室スペースに、おむつ交換ベッドを2台配置し、バックハッチを全開にすることで、バックハッチが屋根になります。開口したハッチにロールシェードをつけることで、簡易的なプライバシー空間を作ることができ、周囲の目を気にすることなく、赤ちゃんのお世話をすることができます。
キャビンは授乳スペースとして利用ができ、窓には純正オプションをコラボ仕様にした、カーテンやガラスシェードを配置しており、こちらも外からの目を遮断することができています。
シート表皮には、商業施設のベビールームでも利用されており、防汚表皮として定評のあるConbi製品を採用することで、応急的ではないしっかりとしたベビールームにすることができました。
普段は普通のクルマとして、必要な時にベビールームに
目的別使用車の多くは、普段の生活では使用するのが難しく、特定の場所、シチュエーションを待って使用することになりますが、このエブリイは、乗用車としての機能を落とさずに、プラスアルファでベビールームの機能を持たせているため、普段は普通のクルマとして利用することができます。
そのため、官公庁や地方自治体、商業施設運営会社の公用車や社用車としての導入もしやすくなっていて、コンセプトモデルが実用化されたときに、導入検討がしやすいのも非常に良い点です。用途が限られ、普段使いできないと、コストをかけて導入しても、宝の持ち腐れとなってしまいますし、それほど多くの利用機会がないものに対して、大きなコストをかけられるほど、資金が潤沢でない地方自治体も多いです。このような団体に対して、「普段使いできる」という点は、コストパフォーマンスを向上させ、導入を前向きに検討できるポイントになります。
このようなプライバシー配慮をして、機能面を充実させたコンセプトモデルの多くは、その機能を十分にするために、クルマとしての利用価値を下げてしまい、実際に導入することが難しく、素晴らしいアイデアが絵に描いた餅になりがちですが、「エブリイどこでもベビールームwithコンビ」は、利用側、導入側どちらの目線にも立った、すぐに実用化してほしいコンセプトモデルとなっています。
様々な面からWAKUWAKUを
スズキの東京モーターショー2019のテーマでもあるWAKUWAKUを、クルマに乗ることによって体感できるものが多く展示されています。しかしエブリイのコンセプトモデルは、直接クルマからのワクワクを享受されるものではなく、ワクワクの生活を失わないためのクルマです。小さなクルマだからできる、小さなクルマの価値観を最大限に利用したクルマ作りは、これからのクルマの利用価値を大きく高める存在となっていくでしょう。
(文:佐々木 亘 写真:スズキ株式会社、佐々木亘)