目次
●スズライト、フロンテ、ラパン、ワゴンR RRなどのデザインを再現
いよいよ10月24日から始まった東京モーターショー2019。各メーカーが出品するコンセプトカーや市販予定車から注目車をピックアップ、担当デザイナーに速攻インタビューを敢行しました。
第1回目は「WAKU WAKU SWITCH for EVERYONE」をテーマにしたスズキ・ブースから、パーソナルコンパクトPHEV「WAKU SPO(ワクスポ)」に注目です!
■モチーフは何とスズライト!
── このクルマは3世代が共感できるクルマとして、クーペとワゴンボディを両立していますが、そこにレトロなイメージを持たせたのはなぜでしょう?
「今回、3世代の上の層としては60歳前後を想定しましたので、クーペといういかにもクルマらしい形態と、同時にある種の懐かしさも演出したいと考えました。モチーフとしてはかなり遡りまして、弊社のスズライトや初代のフロンテなどをイメージしています」
── それは懐かしい! で、まず目を引くのが非常に豊かで力強いショルダーラインですが、その意図はどこに?
「とりわけ、クーペスタイルとしてはできるだけロングノーズに見せたかったのと、同時にスポーティな表情も与えたかった。また、実は近年のスズキのコンセプトカーはシンプルでクリーンな表現を目指していまして、前後にシュッとしたショルダーラインを流すことでそれを実現させたこともあります」
── サイドボディ下部は、逆に内側に凹んでいるところがユニークです
「これも先の話に近いのですが、セダン全盛期のサイドボディによく見られたキャラクターラインを現代風に表現してみようと。また、豊かに張ったショルダー部に対し、このラインで下半身を引き締める効果もあるんです。さらに、それがスポーティさにもつながっていますね」
── クリアの樹脂カバーを使ったフロントは、何かモチーフがあったのですか?
「ここも歴代スズキ車のデザインを継承した部分で、たとえばワゴンスタイルではグリル内が横フィン形状になって、先のスズライトやフロンテ、あるいはラパンなどレトロなイメージを表現しています。一方で、クーペスタイルではランプが上下2段になり、ワゴンRの「RR」など、スズキのスポーティ車のイメージを再現しているんです」
■新旧デザインの融合を探る
── 面の広いホイールデザインも最近ではあまり見ない表現ですね
「これも先と同じで、クルマの黎明期にあったメッキのディッシュホイールをイメージしているんです。ただ、それだけでは単に旧い表現になってしまうので、ディッシュ部を深めに置いて立体感のある新しさを表現しています」
── ボディカラーの白、グリーンとワゴン部のブラウンという3色は何をイメージしたのですか?
「3世代での共感というコンセプトから、できるだけフレンドリーな表現にしたいと。そこで優しいグリーンと落ち着いたオフホワイトを配し、同時にある程度の質感も加えたいということで、前後にメッキパーツを走らせています。ワゴン部のブラウンは「幌」としてレザーをイメージしているんですね」
── 一方で、ホイールアーチはなかなか力強い表現としましたね
「スイフトスポーツなど、スズキのクルマにはワインディングを小気味よく走り抜けるイメージがあります。そこで、とくにクーペスタイルでは安定感や脚の強さを打ち出したいと考えた結果です」
── 最後に。レトロなイメージを出しつつ、同時に現代のクルマとして表現させる難しさはありましたか?
「はい。たとえばクーペスタイルでは勢いイマどきの新しい表現になりがちなところ、いかに新旧をバランスさせるかが難しかったです。今回は、試行としてフェンダーにバックカメラを付けたのですが、実はドアよりも視界が前方から広がることで安全性も高まるんですね。そうした技術面も含めた組み合わせもひとつの手段かもしれません」
── 新旧の融合は単に造形面のみではなく、もう少し視野を広げてみると面白い発想がありそうですね。本日はありがとうございました。
[語る人]
スズキ株式会社 四輪商品・原価企画本部
四輪デザイン部 四輪先行デザイン課
係長 小木曾貴文 氏
(インタビュー・すぎもと たかよし)
[スズキ WAKU SPO(参考出品車)]
全長×全幅×全高:3700mm×1650mm×1430mm
パワートレイン:PHEV