●日産ならではのシームレスで魅力的なユーザー体験の提供をめざす
日産自動車が掲げる「ニッサン インテリジェント モビリティ」は、HMI(Human Machine Interface)と呼ばれるユーザーの操作性、操作感の進化も大きな柱になっています。安心で使いやすいヒューマンマシンインターフェイスを掲げ、サービスとHMIを統合することで、日産ならではのシームレスで魅力的なユーザー体験を提供するのが狙い。
HMIは、シンプルなデザインと直感的な操作を両立させ、現在のハードスイッチや音声操作から、シームレスな統合ディスプレイ、セミミックスドリアリティ ディスプレイ、そして「invisible to Visible(I2V)」につながるロードマップを描いています。
今回、体験した「I2V」は、リアル(現実)とバーチャル(仮想)の世界を融合した3Dインターフェースを通じて見えないものを可視化するコネクテッドカー体験。すでにCESなどでも公開されています。
「I2V」は、人々がVR(仮想現実)によって思い思いの姿に変身したアバターとして活動する仮想世界のメタバースにつながります。メタバースを介して様々なスキルや知識を持った人々や遠隔地にいる知人や家族と現実世界のクルマとをマッチングし、AR(拡張現実)によって車室内に3Dアバターとして登場するという仕掛け。
これにより、メタバースの人々と現実世界の人とが実際に同乗しているかのような存在感を感じながら、新しいドライブ体験を共有することができるものです。
今回のデモは、すでにNTTドコモと日産自動車が走行実証実験を行ったもので、今回は停車しての体感。ARゴーグルとヘッドセットをつけて車内に座ると、車内ディスプレイから女性が出てきて、テープカットをしたり、追浜を紹介してくれたりします。
さらに、3Dのアバターも登場し、差し入れのドーナツを持ってきてくれたり(もちろんARなので食べられませんが)ドライブを盛り上げるというもの。
こうしたサービスは、初めての観光地などでガイドしてくれたり、ナビゲーションの設定をしてくれたりすると便利に思えますが、現時点ではまだ没入型のARゴーグルとヘッドセットが必要なのが少し煩わしくも感じます。将来的には、めがね程度の装備に小さくなったり、何もつけなくてもフロントスクリーンに表示されたりするとユーザーの利便性も高まるように感じられました。
「I2V」は、こうしたエンタテインメント系だけでなく、車内外のセンサーが収集した情報とクラウド上のデータを統合することで、クルマの周囲の状況を把握するだけではなく、クルマの前方の状況を予測したり、通常では見ることができない建物の裏側やカーブの先の状況をドライバーの視野に投影したりすることを可能として、安全性向上はもちろん、自動運転技術への応用も期待されます。
こうした安全に関わる、見えない物の可視化に加えて、必要な情報をどう伝えるか。日産ではクラウドと車内インフォテイメント、スマホ・アプリ、サードパーティーサービスも含めて魅力的なユーザーエクスペリエンスを提供するとしています。
(文/写真 塚田勝弘)