●新型フィットはグレードの呼び方も大きく見直しキャラクターくっきり
ホンダブースのプレスブリーフィングは、なんとスチャダラパーの楽曲からスタートしました。世界じゅうからVIPやプレスが集結するかしこまったこの場でBOSEとANIの脱力系リリックが聞けるとは驚きです。
そして内容はただノリのいいラップなだけでなく、ホンダの創業からの歴史を製品名を織り込みながらリズムに乗って紹介していくという、クライアントとがっぷり組んで練られた歌詞はさすベテランラッパーの職人技です。
ただ、それだけだとたんなる耳ざわりのいいタイアップ曲です。曲が進んでいくと「ホンダは人のために何を作るのだろうか」「100年後も1000年後もホンダはホンダでいられるのだろうか」といった、激動のこの時代に、企業としての生き残りをどうサバイブしていくのかのメッセージが歌われていて本気を感じました。
そんな危機感は、八郷隆弘社長のスピーチからも感じられました。「今回のモーターショーを通じて、未来を担う若い人たちをはじめ、幅広いお客様にもっとクルマやバイクに興味を持っていただきたい」と、クルマ離れ・バイク離れを何とかせき止めたいと必死の思いが伝わってきました。
八郷社長のトークに続いて、いよいよ新型フィットのアンベールです。
全世界で累計750万台と売れに売れたフィットの4代目です。記者たちからの歓声があがります。
歴代が紡いできたスタイリングの系譜はほんのわずかに感じられますが「新しい時代のコンパクトカーのスタンダードを作る」という意気込みどおり、フレッシュに生まれ変わりました。
ショートムービーのなかでは「ミリ単位で寸法を追い求める競争からは降りた」と開発責任者の田中健樹さんらは語っていました。
●新型フィットの注目は劇的に細くなったAピラー
新型フィットを知るキーワード「4つの心地よさ」も発表されました。
そのうちの「心地よい視界」を具現化しているのが、断面構造を見直すことで細くなったAピラーです。それは外側から見てもわかる細さです。
衝突安全の観点から太くなることはあってもその逆はありえなかった新型車のAピラー。マツダ3のようにできるだけ視界を邪魔しないよう形状を見直したクルマはありましたが、細さをアピールするのは新型フィットが初でしょう。
「乗り心地」では、新開発のシートの形状・機能に注目です。身体の保持に新機構が採用されているようで、その形状は「前後席の空間を分断しない」という、ファミリーカーらしい新しいアプローチです。
「乗り心地」は、これまでのi-DCDから、2モーターハイハイブリッド「e:HEV」への進化により増えたEV走行で、新たな境地を見せてくれるはずです。最後の「使い心地」は、これまでどおりのセンタータンク+チップアップできるリヤシートが継承されているようなので万全でしょう。
そして、グレード展開がより明確になりました。これまでの「G」や「RS」などのアルファベットの並びではなく、ライフスタイルを想起させるようなネーミングになりました。これにより「どんな人に買ってもらいたいか」が明確になりました。
その5つの個性はこちらです。
●BASIC(ベーシック)
その名のとおりの基本グレード。
●HOME(ホーム)
ナチュラル素材のシート、本革ステアリングなど素材感にこだわったグレード。
●NESS(ネス)
「フィットネス」の末尾を抜粋したネーミング。撥水素材を多用したスポーツ感をアピールするグレード。
●CROSSTAR(クロスター)
フリードにもあるSUVテイストのグレード。大径タイヤを履く。
●LUXE(リュクス)
プラチナ調やクロームメッキなどデコレーションされるグレード。
おとなしい見た目ながら随所に常識を疑った新しい提案を盛り込んでいる新型フィット。これは「大フィット」の予感ぷんぷんです。
発売は2020年2月が予定されています。細かな装備や乗り味などまだまだ知りたい情報はいっぱいなので、続報に期待です。
(畑澤清志)