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トヨタ・ヴィッツは、Bセグメントのコンパクトカーの代表選手として約20年間その名で親しまれてきましたが、2020年2月頃には4世代目が登場(予定)! それに先立って行われたプレス発表会において、ほぼ量産型のプロトタイプが公開されました。ヴィッツ の欧州名「ヤリス(YARiS)」の名に改称され、大きな期待を背負ってリリースされる新型の解説を、国際モータージャーナリスト、清水和夫さんが動画で特別解説します。
■プリウスから始まったTNGA、ヤリスから「GA-B」へと進化した!
●WRCヤリスに匹敵するGR仕様ターボAWDバージョンも出るハズ!?
「ヤリス」はセグメント的にはヴィッツの後継です。このクラスは日本のコンパクトカーの代表選手。従来、このクラスは値段や各地域により、いろいろなコンパクトカーを作らなければいけませんでした。
そこを今回、トヨタは思い切って切り分けをしました。ダイハツが仲間に入ってきたことで、ダイハツには新興国用のBセグメントのクルマ…おそらくタントのプラットフォームを使ってDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)で登場するでしょう。
トヨタのTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の考え方は、プリウスから始まりました。そこにはC-HRなども登場しましたね。そしてプリウスの1コ上、いわゆるCセグメントのひとつ上のクラスにカムリ…トヨタでは「Kプラットフォーム」と呼び、レクサスRX等に使われます。最近話題のRAV4もKプラットフォームですね。
プリウスのCプラットフォームとカムリなどのKプラットフォームがあって、FR系のレクサスとクラウンのプラットフォームが出て、でもまだBプラットフォームが出てこない。いつ出るのか!? とずっと言われてきました。
Bプラットフォームは、世界のいろいろな工場で作らなければいけないことと、ダイハツとの関係…おそらく整理しなければいけないことがたくさんあったのだと思いますが、ソコをトヨタは上手く整理し、先進国用のBセグメントのコンパクトカーを、しかもかなり洗練されたクルマに作ろうということで、ヴィッツとは違った名称「ヤリス(YARiS)」という名前を投入したのです。
ヤリスと言えばWRCで大活躍しているラリーカー。おそらくこのモデルはメルセデスのAMGのような、トヨタのGAZOOチームがGRモデルとして、この市販車バージョンをベースにターボ+AWD仕様が後々、リリースされるハズ。
●縦溝(タンブル)を生み出し燃焼速度を上げる、F1ゆずりのエンジン
ヤリスは一番最後のTNGA最後出し(GA-B)ですけど、Bセグメント1番のベースモデルになるだけに、値段や性能含め今までとは違ったものをしっかり作るため、基盤技術を揃えていかなければいけませんでした。
そうそう! 重量が従来比50kgも軽量化されました。元々このクラスは軽いですから、大きいクルマで言ったら100kgくらいの軽量に匹敵します。そこは設計と生産技術で上手くやったのでしょう。
ヤリスで特徴的なのは、ボディですね。プラットフォームがまったく新しくなりました。
もうひとつは、エンジン。高速燃焼という、縦渦の混合気の流れをガンガン作って、台風みたいにガ~ッと回して燃焼速度を上げる!という技術をやっていますが、これは80年代F1の技術で使われていたバルブシートに秘密があるのです。段差を無くすためにレーザーで溶射して作ります。この溶射の量産に成功したのが、技術のキーです。
この技術はすでに、レクサスのV6系から2.5L 4気筒、2.0L 4気筒で採用されています。このヤリスのエンジンは2.0L 4気筒を1気筒チョップして1.5L 3気筒にした高速燃焼タイプですね。アクセルに対する火の着きが良く、シュン!っていう感じにエンジンパワーが出るので、エンジン車でもハイブリッド車でも楽しいのです。
・CVTもシャキッと楽しく!
今までコンパクトカーでHV(ハイブリッド)というと燃費のために走りが犠牲になっていたようなところがありました。が、そこは基礎的なパワートレーンでしっかり燃費を稼ぎ、ドライバビリティをあげながらCVTも燃費のために…と、今まで制御をやってきましたけど、今回は「パンツのゴムが伸びたような!?」な~んて言われないようなCVTにしています。ですので相当、走りは楽しくなったんじゃないかな?と、最近のトヨタのクルマ作りから予想できると思います。
パワートレーンとボディをいっぺんに変えるというのは、そうそう出来ることではありません。そういうところからも、名前をヴィッツからヤリスに変えたんですね。
●将来的な燃費規制と新ユーロNCAPも対応
細かく見ると右折時のプリクラッシュ技術や歩行者認知など、細かい予防安全技術がたくさん出てきています。
もうひとつ、2020年、ヨーロッパの衝突安全…厳しい50%のオフセット衝突が入るんですけど、そういう意味でもボディストラクチャーは衝突安全上もかなり高いレベルの性能を持っています。
安全性とドライバビリティと環境性能、コストはまだ分かりませんが、ヨーロッパでは「ハイブリッド=トヨタ」なので、CO2=90gくらいですから、2022年くらいの燃費規制をクリアできると聞いています。
トヨタにとってはこのモデルはある意味、グローバルに活躍する非常に意欲的な戦略車だと思います。
もうひとつは、新興国用に作るダイハツが得意とする、DNGAプラットフォームで非常に安いコストで作れるクルマ作りとトヨタのヤリスとは切り分けして作る。その意味ではダイハツとトヨタの関係も明確になってきたな、という感じがしますね。
2019東京モーターショーには、ホンダの「次期型フィット」も公開される予定です。このフィットも2モーター・ハイブリッドとなるので、トヨタ・ヤリスとの「ガチ勝負!」が期待できます。2019TMSではヤリスとフィット、必見ですよ!!
(解説:清水 和夫/アシスト:永光 やすの)
【清水 和夫 プロフィール】
1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業
1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。
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国際モータージャーナリスト、清水和夫が主宰する自動車専門動画ウェブメディア。クルマの限界性能と安全性を徹底的に試すダイナミック・セイフティ・テスト(DST)を始め、国内外の新車インプレッション、注目度の高まる先進安全技術、自動運転など、クルマに関するあらゆるジャンルの動画をサイトアップしています。ぜひぜひ!チャンネル登録のうえご視聴ください。
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