室内の広さや荷室の使い勝手をチェック。「INFINITI」譲りの高いクオリティだが…【新型スカイライン試乗】

●高いクオリティを誇るが、ライバルには劣勢を否めないインテリア

見た目はほとんど同じクルマなのにトランクの使い勝手が大きく異なる、スカイラインのハイブリッドとV6ターボ。今回は室内の広さや荷室の使い勝手を定規で測り、比較をした結果をレポートします。

1. スカイラインのインテリアはどんな雰囲気?

マイナーチェンジでの変更点は、ステアリングホイール上の日産エンブレムと、シフトノブ上のインフィニティマークが取り除かれたところ程度。

今回のスカイラインのマイナーチェンジで、大きなトピックのひとつが「フロントフェイスの変更」ですが、インテリアに関しては、ステアリングホイールにあるエンブレムが日産のコーポレートマークに変更されたことと、シフトノブにあったインフィニティのロゴが消えた程度。その他の変更点は見当たりません。

コックピットやインパネ、フロントシート、メーター、デュアルモニター液晶、シフトノブ形状、ドアインナーなどは、マイナーチェンジ前のV37スカイラインと同じデザインです。

V6ターボタイプPには、パドルシフトがなく、シフトチェンジをしたい場合にはシフトノブを右に倒して操作する。
V37型スカイラインの特徴であるツインモニター。他メーカーの新型セダンと比べると、画面サイズがやや小さめ。
アルミ調の加飾など、インテリアのクオリティは高い。

スカイラインのインテリアは、日産の海外向けブランド「INFINITI」の高いクオリティを備えていますので、マテリアルや触感、操作音など、どれをとっても洗練されたデザインとなっています。

ただし、昨今の欧州車に導入され始めた、デジタルメーターのようなディスプレイは設定すらなく、かろうじてヘッドアップディスプレイがハイブリッドに標準装備となっている程度。最先端の高級車としてみると、ベンツやBMW、延いてはVWゴルフに対しても劣っているような印象を受けます。

必ずしもデジタルメーターが優れているとは言えませんが、最新トレンドについていけない先進技術車に魅力を感じるわけもありません。インテリアの早急なブラッシュアップは、次期型スカイラインで必ず行わなければ致命傷となりえます。

オーソドックスなタコメーターとスピードメーター。フル液晶モニターなどは備えていない。

ちなみに、プロパイロット2.0はハイブリッドモデルに標準装備となりました。それを受け、ステアリングホイールの右側には、青いプロパイロット2.0の起動スイッチが設置されています。なお、プロパイロットの起動は、青いスイッチを押したのち、CANCELボタンを下に押すことでSETされます。そして、周囲の交通条件が整えば、瞬時にプロパイロット2.0が入る仕組みです。

プロパイロットの起動は、ブルーのマークを一度押し、キャンセルボタンを下に押すことでセットとなる。

2.前席・後席シートの座り心地はどうか?

ハイブリッドもV6ターボも共通の前席シートは、無駄な加飾を排した、シンプルで標準的な形状をしたシートです。さらっとした手触りで、身体を優しくサポートしてくれます。座り心地はそれほどソフトではなく、ベンツやBMWの様に硬めのクッションの印象があります。シートのサイドサポートの張り出しはやや抑えてあり、乗り降りはしやすく感じます。

シートの収まりは良いが、他社車セダンと比べると、サイドサポートは控え目である。

なお、V6ターボのGT タイプSPグレード、そして400Rでは、メーカーオプションのスポーツパッケージを選択することで、サイドサポートが肩回りまで張り出した、本革スポーツシートとなります。

後席シートもハイブリッドもV6ターボも同じです。座面が比較的広く、背もたれもゆったりとした角度ですので、快適な居心地です。165センチ強の筆者が運転席シートでドラポジを合わせた場合、後席の膝前のスペースはこぶし一個半(約10センチ)、頭上スペースもコブシ1個半(約100ミリ)が空きます。

また、後席シートの座面が、フロントシートよりも一段高い位置にセットされているため、後席シートからの見晴らしが非常に優れています。セダンの後席でこれほどに前方の見えやすいクルマは少なかったように思います。

気になったのが、後席シートに座り込む際のサイドシルの段差です。足元の段差が大きく、乗り込む際に足を大きく持ち上げないとなりません。BMW3シリーズもこのサイドシル段差が高く、足の弱った方などには、乗り降りに支障をきたすと思います。後席の乗降性はあと少し改善してほしかったなと思います。

後列からの前方視界がよい。前席よりも一段高い所から見下ろす印象がある。

3.荷室の違いは?

ハイブリッドとV6ターボの最も大きな違いが荷室の広さです。比較すると一目瞭然。ハイブリッドは奥行きと幅が狭く、トランクスペースが小さいです。トランクのスペースを定規で測ったところ、ハイブリッドは横幅120センチ、奥行き70センチ、V6ターボは140センチ、100センチ。

トランクの間口の広さはハイブリッドもV6ターボも変わらない。
ハイブリッドは駆動用バッテリーを搭載する影響で、トランクの奥行きが短い。

ハイブリッドは、ハイブリッドシステム用のバッテリーがトランクと後席との間に入っていることに加え、トランクの横幅方向にも、張り出しが大きいためです。またV6ターボの方には、メーカーオプションで6:4分割のリア可倒式シート(税抜4万円)が用意されていますが、当然ハイブリッドにはありません。

V6ターボはハイブリッドよりも、トランクの横幅が広い。
トランクの奥行きはV6ターボの方が深い。しかも、V6ターボはメーカーオプションでトランクスルーも選択できる。

もちろん、セダンという使い勝手を求めすぎないボディタイプですので、大きくて長い荷物を積むことは稀でしょうが、スカイラインを買った後で後悔しないよう、事前にその広さは確認することをお薦めします。

まとめ

スカイラインのインテリアは高いクオリティを誇ってはいますが、今回のマイナーチェンジでほぼ変更がなかったのは、残念な部分です。同価格帯であるライバルのBMWやベンツなど、最先端をいくセダンに対し、負けていると言わざるを得ません。現時点、大きなギャップがあることは課題だと思います。

次回は、改良型スカイラインの魅力「走り」について、具体的に「良い点、気になる点」に分けてレポートします。

(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)

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この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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