●コンパクトカーとの棲み分けが難しくなりそうな、軽自動車の枠を超える仕上がり
ホンダはNの頭文字を使ってワゴン&バン系軽自動車のラインアップを展開しています。そのなかでも最新となるのがハイトワゴンのN-WGNです。N-WGNは2019年8月にフルモデルチェンジされ、2代目となりました。
N-WGNには2種のエンジンが用意されます。1つは58馬力/65Nmの自然吸気、もう一つは64馬力/104Nmのターボです。
自然吸気でも普段使いでは何の問題もない性能を持っていますが、唯一ちょっと足りないと感じたのが、首都高速に流入する際の上り勾配でした。ターボになるとその上り勾配も難なくこなしてしまいますから、もうエンジンの性能的には十分以上であるといえるレベルです。
軽自動車に乗っていて「残念だな」と感じるのはその質感の低さですが、N-WGNにはそうした質感の低さは感じません。
アクセルを踏んでいったときのエンジンのうなり音、段差を乗り越えたときのボディのきしみ音、振動などなどあらゆる部分でもはや従来の軽自動車のレベルではありません。こうなるとコンパクトカーとの差がほとんどないイメージになってきます。
そして驚くべきはホンダセンシングと呼ばれるADAS(先進運転システム)の性能の高さです。
先行車との車間距離を保ちながら定常走行ができるアダプティブクルーズコントロールや、車線維持を可能にするLKASなどの完成度がかなり高いのです。首都高速から東京湾アクアラインを走ってきましたが、渋滞時から高速巡航時までしっかりと作動します。
こうした装備については新しければ新しいほど正確に作動するのは当たり前のことですが、その進化の速さは車格を容易にひっくり返してしまうのです。
ホンダでいえば、フィットがそのコンパクトカーにあたります。モデル末期とはいえ、フィットを買いにディーラーを訪れた人がN-WGNを買ってしまわないかと心配になるほどの出来のよさがN-WGNにはありました。
軽自動車の性能がどんどん向上してしまうと、今度は軽自動車という枠組みそのものを考え直そうという流れもでて来る可能性があります。そこのバランス取りが難しい時期にきていることはたしかでしょう。
(文/写真・諸星陽一)