2013年モデルをベースに国内サーキット向けにセッティングした「ただ者じゃない」モデル【日産・GT-R クラブマンレーススペック試乗】

●乗るには資金だけでなく、スキルも求められる激アツ仕様

2013年型GT-Rをベースに、ニスモがチューニングした「クラブマンレーススペック(CRS)」。以前試乗したモデルはニュルブルクリンク仕様でかなりサスが動くセッティングでしたが、GT-R CRSは日本のサーキットに合わせたものとなっていました。

GT-R MY13 CRS前7/3
追加エアロパーツなどにより迫力のスタイリングになっているGT-R CRS

足まわりはオーリンズ製のニスモオリジナル仕様で4ウェイタイプを基本に、キャンバー角を変更できるフロントアッパーリンクセットを組み合わせています。このアッパーリンクによって-1.50度から-2.20度に変更。

また、スタビライザーは前後キットで、リヤは3段調整が可能なものとなっています。取り付け穴が3段階になっていて、ノーマル比140%、165%、185%の選択が可能、試乗車は185%にセットされていました。フロントはノーマル比110%の固定です。

ホイールは2017年型のGT-Rニスモ純正タイヤ、タイヤは基準車(ニスモではないGT-R)のものが装着されていました。

GT-R MY13 CRSボンネット外側
NACAダクトが目立つボンネット外側
GT-R MY13 CRSボンネット内側
ボンネットの内側は開口部に向かってダクトが配置される

エンジンはオーバーホールをしたうえで、S1仕様のチューニングが施されたものです。内容は2011年のターボとGT3用カムシャフトを組み合わせたもので、コントロール系のECM(エンジンコントロールモジュール)とTCM(トランスミッションコントロールモジュール)は専用品となります。

マフラーはチタン製でノーマル比8kg軽量化されたもの。キャタライザーもスポーツタイプに変更されています。

GT-R MY13 CRSエンジン
S1仕様のエンジンは赤の結晶塗装が施される

エアロパーツはエンジンフード、リヤスポイラー、リヤディフューザーフィンセットがドライカーボン製、フロントアンダースポイラー、フロントフェンダーセット、サイドスカートセット、リヤアンダースポイラーセットがFRP製となります。

GT-R MY13 CRSフロントバンパー
フロントバンパーまわりはカナード形状をしていて、ダウンフォースを稼ぐもの。今後、フロント開口部を増やし、冷却性能を向上する予定

日本のサーキット路面に合わせたモデルということで、足まわりはかなり硬めのセッティングです。以前試乗したモデルはニュルブルクリンク仕様だったので、サスペションがしっかりストロークするものでしたが、今回はガチガチのサーキット仕様です。とはいえ、試乗用に用意されたコースはショートコースなのでGT-R CRSの性能を引き出せる全開走行というワケにはいきませんでした。

しかし、ちょっと乗らせてもらった感覚で言えば「ただ者じゃない」という感じです。まさにサーキットスペックで、ひたすら強い加速、ひたすらグリップする足まわりで、ひたすら速く走る仕様となっています。

GT-R MY13 CRS フロントフェンダー
フロントフェンダー上部はスポイラー形状が与えられ、ダウンフォースを確保。ボンネット後端部もリップが立てられダウンフォースを向上している
GT-R MY13 CRS リヤスポイラー
リヤウイングにスポイラーを追加し、整流とダウンフォースを確保
GT-R MY13 CRSサイドスカート
サイドスカートは段付き加工があり、ここでダウンフォースを発生させている
GT-R MY13 CRSリヤディフューザー
リヤディフューザーは整流をおもにねらったもの

ニスモアンバサダーの柳田真孝選手によれば「この仕様はフロントがぐいぐいインに入っていって、とても乗りやすくなっているセッティングです。とにかくタイヤが路面をどんどん追従する。接地感がしっかりしているので安心感も高いんです。昨年試乗してもらったニュルセッティングに比べると硬めの足回りですが、街中で使えないセッティングではないのです。コーナリング中のギャップも上手にこなしてくれるので、安心できます」と乗り味を語ってくれた。

柳田真孝選手
ニスモアンバサダーの柳田真孝選手。正確なドライビングはもちろん、その人柄のよさに惹かれる人が多数

とはいえ、乗るには資金だけでなく、スキルも求められる激アツ仕様であることは間違いないです。

GT-R MY13 CRS 走り
全日本選手権が行われるレベルのサーキットで走らせてみたい本格的なモデルに仕上がっていたGT-R MY13 CRS

(文・諸星陽一/写真・長野達郎)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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