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■エアバッグはシートベルトとの組み合わせが前提
●シートベルトには拘束力を高める工夫も
パッシブセイフティ(衝突安全)技術の代表であるエアバッグは、シートベルトとの組み合わせを前提にして衝突時に乗員を保護するために開発されました。
シートベルトとエアバッグのシステムと制御について、解説していきます。
●シートベルト
当初は2点式シートベルトでしたが、現在ほとんどのクルマは1959年にボルボが初めて採用した3点式を採用し、エアバッグと組み合わせて乗員を保護します。
3点式シートベルトは、左右腰部と片側肩部を固定し、通常時はベルトの緩みを持たせ、非常時には体が前方へ飛ばされないように適度にロックするELR(Emergency Locking Retractor:緊急ロック式巻き取り装置)が組み込まれています。
さらに、エアバッグと連動して衝突時にベルトを巻き取り、初期拘束の効果を高めるプリテンショナーと、大きな荷重が胸や鎖骨にかかった時にベルトを緩めるロードリミッター機構も一般的に装備されています。
●エアバッグ
衝突時にはシートベルトで乗員の姿勢を適正に保ちつつ、瞬時にエアバッグを膨らませて乗員の安全を確保します。衝撃を吸収すると、衝突後のハンドルやブレーキ操作と視界確保のために、すぐに収縮します。
エアバッグは、運転席のステアリング内に装備され、続いて助手席のインパネ内、さらにサイドエアバッグ用に座席内、カーテンエアバッグ用にルーフライニング内と、より安全性の向上を目指してさまざまな場所に設置する傾向にあります。
プリウスでは、6個のエアバッグが標準装備されています。
●エアバッグシステムの構成
エアバッグシステムは、エアバッグECUと前突、側突用のサテライト(衝撃検知)センサー、エアバッグモジュールなどで構成されます。サテライトセンサーは、応答性を高めるためにクラッシャブルゾーンに配置して、衝突時の加速度をECUに送信します。
その他、展開が必要と判断した時にエアバッグモジュールに点火電流を流す点火装置、システムの故障診断機能、さらに万一バッテリが外れても点火電流を確保するためのコンデンサによるバックアップ機能を持っています。
●エアバッグの動作原理と制御
衝突時、車両前方に装着されたサテライトセンサーとECU内の加速度センサーが衝撃を検出(0.003秒後)します。応答が速いサテライトセンサーは、局所的な衝撃でも反応してしまうので、衝突の判定は加速度センサーの情報と合わせて総合的に判断します。
エアバッグの展開が必要と判断(0.015秒後)した場合には、点火装置で着火してインフレーター(ガス発生装置)を作動させ、大量のガスを発生させます。
発生したガスは、バッグの中に充満し圧力を上昇させてスアリングカバーを押し破り展開します。衝突を検知してから、運転席なら0.02~0.03秒、助手席なら0.03~0.04秒後に展開が完了します。
バッグにはベントホールという穴が開いており、バッグの内圧が上がりすぎるのを防いでいます。
●エアバッグの不具合が社会問題に
2010年前後から数年以上、自動車業界を揺るがす大問題となったタカタ製アエバッグの不具合が発生しました。
国内メーカーのほとんどが使用し世界シェア第3位のタカタ製エアバッグが、2008年頃から米国で展開時に異常破裂し、金属片が飛散することによって死亡事故まで引き起こす事故が発生しました。
原因は、インフレーターガス発生剤(硝酸アンモニウム)の品質(特に湿度の影響)管理が不十分であったためですが、原因が不明のまま2009年から国内のほとんどのメーカーが大量リコールをするという異常な事態に発展したため、大きな社会問題になりました。
エアバッグは、単独で機能して乗員の安全を守っているわけではありません。
シートベルトを着用していることが前提で、シートベルトの機能を100%発揮するためにエアバッグがフォローしているので、SRS(Supplemental Restraint Syatem:補助拘束装置)と呼ばれます。
(Mr.ソラン)