世界でイチバン「砂浜が似合うEV」。フォルクスワーゲン ID.バギーコンセプトが示す電動プラットフォームの可能性

■ゼロエミッションだから砂丘に似合う、21世紀のデューンバギー

2019年のジュネーブモーターショーにて世界初公開されたフォルクスワーゲン「ID.バギーコンセプト」をご存知でしょうか。「デューンバギー」を現代によみがえらせたといえるスタイリングは、コンセプトカーながら大いに注目を集めてきました。

 ID.バギーコンセプト
ID.バギーコンセプトとデューンバギー

日本ではラジコンカーに使われたことで広く知られている「デューンバギー」は一般名詞的に理解すれば、海辺の砂丘を走るバギーということになりますが、1960年代のアメリカ・カリフォルニアのカルチャーでいえばフォルクスワーゲン・ビートル(初代)のメカニズムを使ったレジャービークルとして誕生したモデルを指す言葉となっています。

まさに「デューンバギー」の本場である、アメリカ・カリフォルニア州ペブルビーチで開催されたコンクールデレガンスに「ID.バギーコンセプト」が凱旋、「デューンバギー」とのツーショットをはじめ、何枚ものプレスフォトが公開されています。

砂丘を疾走する姿をみれば、駆動輪がリヤであることは感じられますが、フォルクスワーゲンの電気自動車プラットフォーム「MEB」はリヤにモーターを搭載した後輪駆動なのです。

そう、この「ID.バギーコンセプト」はゼロから生まれたコンセプトカーではなく、量産EVプラットフォームをベースとしています。このEVプラットフォームには、こうした遊び心あふれるモデルを生み出すだけの柔軟性があるというわけです。もしかすると「デューンバギー」がサードパーティーによるオリジナルマシンだったように、新しいEVプラットフォームからもこうしたカスタムカーが生まれるのかもしれません。

 ID.バギーコンセプト
EVなので走行中はゼロエミッション

ちなみに、タイヤはBFグッドリッチのオールテレーンタイヤで、サイズは前255/55R18・後285/60R18。モーターの最高出力は米馬力で201HPと発表されていますから、砂を蹴散らすパワフルなパフォーマンスを見せるにも当然なのかもしれません。逆に、モーターならではの発進トルクや繊細な出力コントロールによって砂丘での走行には向いているという見方もできます。

 ID.バギーコンセプト
ID.バギーコンセプトのシンプルなコクピット

さらにEVということは少なくとも走行時にはゼロエミッションですから、砂浜を走っても環境負荷は最小限。またフルオープンのバギーでは排ガス臭がないことは乗員の爽やかな気分にもつながります。ちなみに、バッテリー総電力量は62kWhで、WLTPモードでの航続可能距離は約250km。最高速は時速99マイル(約158km)と発表されています。ちょっと物足りないような気もしますが、バギーの使われ方を考えると十分な性能といえるのではないでしょうか。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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