高齢化社会を見据えた使い勝手向上。ベースモデルと同時開発だから実現できた機能とは?【新型タント福祉車両】

●新型タントの福祉車両はベースモデルの利点を活かした使い勝手が魅力

ダイハツの新型タントでは本格的な高齢者社会を見据えて、標準車と福祉車の垣根をなくすことをコンセプトに車両開発をしています。その成果が随所に見られる福祉車両を取材しましたので報告します。

たとえば乗降に便利な「ミラクルオートステップ」。これは助手席側の大開口「ミラクルオープンドア」に合わせて、丈を長くした電動ステップです。

これによってフロント、リヤのいずれにも重心移動を最小限にとどめつつ乗降できるようになっています。

また、助手席ターンシート(ダイハツでは「ウェルカムターンシート」と呼びます)は回転角度とグリップの位置が肝になっています。

具体的にはあえて真横まで回転させずに、回転角度を抑制しています。これは90度曲げてしまうと、Bピラーレスのタントにおいては(後部スライドドアを開放した状態において特に)乗降時に掴む部分がなく、不安定になってしまうためです。

あえて回転角度は少なめにして、代わりにAピラーに追加したグリップを握りつつ降りるという設定としました。

「角度は控えめ」とはいっても、そこは元々が広いタント。回転した際の足元スペースは515mmと大きなスペースが確保されていることも付け加えておきますね。

ラゲッジ部にセットするパワークレーンは、スイッチ1つで車椅子を電動で上下できるもの。昇降能力は30kgと余裕があります。

通常、こうしたリフトを装着する場合には強度の観点から、車体フロア側から大きな柱を伸ばして吊り下げる形態になります。

しかしこれではシステム総重量が大きくなり、またかさばってしまうため収納スペースが小さくなることにもつながります。

新型タントでは福祉車両を標準車体と同時開発したため、こうした問題をクリアしたことが特徴。

具体的にはルーフ部分に十分な強度を持たせ、リフトを「ルーフからの吊り下げ」設置することに成功しているのです。だから見た目にもすっきり、収容能力も大きく確保できているのでした。

(写真・動画・文/ウナ丼)

この記事の著者

ウナ丼 近影

ウナ丼

動画取材&編集、ライターをしています。車歴はシティ・ターボIIに始まり初代パンダ、ビートやキャトルに2CVなど。全部すげえ中古で大変な目に遭いました。現在はBMWの1シリーズ(F20)。
知人からは無難と言われますが当人は「乗って楽しいのに壊れないなんて!」と感嘆の日々。『STRUT/エンスーCARガイド』という名前の書籍出版社代表もしています。最近の刊行はサンバーやジムニー、S660関連など。
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