トヨタ自動車が提供する「バーチャルな移動」で活躍するヒューマノイドロボット「T-HR3」とは?【 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会】

2019年7月18日にトヨタ自動車がプレス向けに公開したロボットの中には、すでに公開済みのヒューマノイドロボット「T-HR3」も含まれていました。

ヒューマノイドロボット「T-HR3」とマスター操縦システム
マスター操縦システムを通じてヒューマノイドロボット「T-HR3」が同じ動きをできる

こちらは、トヨタが務めているオリンピックおよびパラリンピックのワールドワイドパートナーとして、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)において、従来の車両供給の枠を超えたモビリティソリューション(移動)の提供の一環といえるもの。

トヨタは、東京2020組織委員会が政府・東京都・大会パートナー、ロボット有識者と一緒に取り組んでいる「東京2020ロボットプロジェクト」にも参画。トヨタは、みんなの「移動したい」という想いを支えるべく、様々な場所で活躍するロボットを通じて東京2020大会の成功に貢献するとしています。

「T-HR3」は、身長154cm、総重量75kgのヒューマノイドロボットで、全身に32の関節、手足に計10指を備えています。プレス公開時は安全のため吊されていましたが、自立しゆっくり歩行も可能だそう。将来は、人とロボットが同じ空間で生活できるのを目指しています。

人と安全に共存するのが目標のひとつで、東京2020大会では、遠隔地にいるお客さんが「T-HR3」とマスコットロボットを介してアスリートなどと交流が可能になるのを目指しています。

ヒューマノイドロボット「T-HR3」、マスコットロボット
東京2020大会では、ヒューマノイドロボット「T-HR3」などと連携したマスコットロボットがお客さん、アスリートと触れるシーンがあるかも

具体的には、マスコットロボットをコントローラとして「T-HR3」を操作し、動きや力を相互に伝達。映像や音声に加えて、アスリートなどとのハイタッチや会話などを通じ、まるで目の前で交流しているかのような臨場感あふれる体験を実現できるようになるそう。

マスター操縦システムとヒューマノイドロボット「T-HR3」
マスター操縦システムとヒューマノイドロボット「T-HR3」の連携が可能
ヒューマノイドロボット「T-HR3」
ピースやじゃんけんもできる

さらに、椅子に座って人間が操作するマスター操縦システムもあります(写真左側)。こちらにもロボットの技術がもちろん使われていて、関節をトルクサーボ技術よって柔軟に制御することで、周囲との接触によって受ける力をやわらかく受け流すことが可能だそう。

写真のように、やわらかいボールなどもコントロールできます。操縦する人とロボットがトルク(力)を共有し、自分の分身のような操作を目指しているそうです。

マスター操縦システム マスター操縦システムとヒューマノイドロボット「T-HR3」

マスコットロボットの「ミライトワ/ソメイティ」は、全身に20の関節があり、鼻にあるカメラを使って人の方を向き、決められた動きだけでなく、観客やアスリートとコミュニケーションが取れるように開発していきたいとしています。さらに、東京2020大会に向けて1年を切った中で、機運を盛り上げるためマスコットロボットにも活躍してもらいたいとしています。

マスコットロボット
マスコットロボットの鼻にカメラが仕込まれている

マスコットロボットは、多くの子どもから応募があって決まったデザインであり、それをロボット化することは困難だったそうし、まだ開発途中で苦労も続いているそうですが、本番までに安定したロボットに仕上げたいとしています。

東京2020大会では、マスター操縦システム、ヒューマノイドロボットの「T-HR3」、マスコットロボットの「ミライトワ/ソメイティ」と連動させること、さらには遠隔地のお客さんに操縦装置を使ってもらい、アスリートと会話をしてもらったり、トルク(力)を使ったコミュニケーションをしてもらったりすることも検討しているとのこと。これは、トヨタが考える「移動」のうち、バーチャルな移動としています。

目指している連携は、「T-HR3」が、ロボットとして動くだけでなく、コントローラとしても使えるという点を目指しています。マスター操縦システムを使って連動する「T-HR3」と同じように、「T-HR3」とマスコットロボットが連携。力を入れて、関節に動かすことで、マスコットロボットを通じて触れた人が力を感じられるそうです。

マスコットロボットであれば「T-HR3」よりもさらに親しみやすく、子どもから大人まで触れられるようになるのでは、という想いからトヨタから組織委員会に提案中。まだ、どういったシーンや場所で使われるかは組織委員会の方で検討している段階だそうです。

(文/塚田勝弘 写真/塚田勝弘、長野達郎)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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